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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第155回   あの世は二次元
「会長は、あの世に真っ直ぐ帰って行ったかな〜?」
「行ったんじゃないですか。」
「あっちこっちに行かないといいんだけどな〜。」
「出入り口は高野山だけですから。」
「そうじゃないんだよ。日本には三カ所あるんだよ。」
「え〜〜、そうなんですか?」
「高野山と、比叡山(ひえいざん)と恐山(おそれざん)なんだよ。」
「そうなんですか。」
隊長は心配そうな顔をしていた。副隊長は話題を変えた。
「地球人は、あの世は、三次元の世界にあると思っているんですかね〜?」
「どうも、そうみたいだな。」
「まさか、二次元の世界だなんて、思ってもみないんでしょうね?」
「そんなことは思ってるもんか。我々もびっくりしたくらいだから。まさか、二次元だったとはな〜。」
「わたしも、聞いてびっくりしました。」
「二次元の世界って、どういうんだよ?」
「どういうんでしょうねえ?」
「言葉としてはあっても、この三次元の世界には厚さの無い平面ってのは存在しないからな〜。」
「我々オロロン星の天才科学者が言うには、ビッグバーン以前の世界だそうです。」
「ビッグバーン以前の世界?」
「二次元が大爆発して、三次元になったそうです。時間と一緒に。」
「ほ〜〜〜〜!?」
「どうして、爆発したんだよ?」
「それは、まだ分かってないそうです。」
「なんでも、ブラックホールは二次元への出入口だそうです。」
「ほ〜〜〜〜〜!?だったら、うかつには、ブラックホールには近づけねえな。」
「はい。」
「それは、科学かね?宗教かね?」
「科学です。」
「そうだな〜、だから、二次元に行ける乗り物が出来たんだよな。」
「そうです。」
「我々、オロロン星人の科学は大したもんだ!」
「まったくです!」
彼らは、竜田川沿いの整備された国道百六十八号線、別名清滝街道(きよたきかいどう)を大台ケ原に向けて走っていた。
「この道も走りやすくて綺麗になったな〜。」
「そうですな〜。」
「地球人は、道路工事だけは上手いな〜。」
「そうですな〜。」
「この道は、なんでも、奈良時代に行基(ぎょうき)によって開かれた道なんだってよ。」
「なんですか、そのぎょうきというのは?」
「奈良の大仏に係わった僧だよ。」
「ああ、そうなんですか。」
「お前は学が無いな〜。そんなことじゃあ、地球人に馬鹿にされるぞ。」
「最近の地球人は、あんまりそういうことを知らないのでは?」
「まあ、そうだな。知る必要もないしな。」
彼らのマイクロバスは止まった。
「隊長、渋滞です。」
「渋滞?今日は平日だぞ。」
「事故かも知れません。」
「事故か〜〜。」
「飛びましょうか?」
「馬鹿、そんなことしたら、地球人にバレるじゃないか。まあ、地球人らしく大人しく待とう!」
「はい!」
「隊長、高野山で買った葛餅(くずもち)でも食べますか?」
「お〜〜、葛餅か、いいね〜〜!」
「温っかい地球人の緑茶もあります。」
「オロロンティーはないのかね?」
「あります、あります!」
副隊長は、葛餅を先に出した。
「ラム酒入りの、ゆず葛餅です。」
「お〜〜、いいね〜。」
それからオロロンティーを携帯ポットから紙のカップに注いだ。
「はい、どうぞ!」
「うん!やっぱりオロロン星の味だな〜。オロロン、オロロンと来るな〜。」
「じゃあ、わたしも。」
副隊長も飲んだ。一口飲むと、前の二人と後ろの二人にも勧めた。
「君たちも飲みたまえ!」それから残りの葛餅を渡した。「葛餅も食べたまえ!」
みんなは、オロロン星の味に心を和ませていた。
「隊長!この味、やっぱりオロロン星の味はいいですね〜。」
「オロロン星を思い出すな〜。ピンク色の太陽、爽やかな紫色の空、森の妖怪たち!」
「隊長、これひょっとすると、地球人にも売れるんじゃないですか?」
「うん、そうだなあ〜。」
「きっと売れますよ。」
「じゃあ、一発売ってみるか!」
「はい、売ってみましょう!」
「オロロン星の、三百キロのウサギを思い出すな〜。ステーキを食べたいな〜。」
「わたしは、川で泳いでる子豚ですね。」
「子豚か〜、今頃は泳いで水面を跳ねてる魚を食べているんだろうな〜。」
隊長は歌いだした。

 ウサギ美味し かの山〜 子豚釣りし かの川〜 ♪

歌は途中で終わった、みんなは拍手した。
「ところで、二次元の世界には時間はあるのかな〜?」
「あるんじゃないですか。あの世で会長も生きているんですから。」
「あの世で生きている?」
「生きているから、この世に遊びに来たんじゃないですか?」
「そういうことだなあ。じゃあ、死んで生きているんだ?」
「そういうことになりますね。」
「不思議な世界だな〜〜。じゃあ、ビッグバーン以前にも、時間はあったということか?」
「そういうことになりますね。」
「地球人の仮説には、そういうのはないな。」
「オロロン星人の偉大な科学者の仮説です。低脳の地球人なんかの仮説なんかとはレベルが違いすぎますよ〜。」
「そうだな、猿の仮説なんかとは、レベルが違うよな〜。」
「レベルが違いすぎますよ〜。話しになりません。」
「そうだ、そうだ!はっはは〜〜〜!」
みんなは二人に拍手した。
「ところで隊長。」
「なんだ?」
「次の作品をタイトルは?」
「オロロン星に送る小説のことか?」
「はい。」
「今回のは、オロロン小説大賞的作品だぞ〜〜!」
「それは楽しみです。どのような?」
「タイトルだけ教える。我輩は…」
「また、我輩は、ですか?」
「当ててみろ!」
「そうですね〜〜、我輩は…猫踏んじゃった!」
「ははは〜〜、面白いな〜、おまえ!」
「当たりですか?」
「それにしようかな…」
「当たりですか?」
「違う!惜しかったな〜。我輩は…」
「何ですか?」
「寝込んでる!」
「わ〜〜〜、面白い!」
みんなは二人に拍手した。救急車が、まるで拍手をするようにサイレンを鳴らしながら追い越して行った。雨が降っていた。



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