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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第153回   カミナリネオン塔
龍次が雲の流れを見ていると、気象担当のナナがやってきた。みんなからは、セブンと呼ばれていた。
「龍次さん、インターネットの高野山のピンポイントお天気情報では、四時までは小雨とありました。どうしましょう?」
「小雨とは知ってたけどな〜、こんなに降るとはな〜、ちょっと想定外だったな〜。それ以降は?」
「曇りです。」
「午前中にゴミ入れのゴミも集めたことだし、中止にするか!」
高野山町の清掃部の部長がやってきた。
「や〜〜、皆さん、ご苦労様です。」
部長は、龍次に挨拶した。「保土ヶ谷さん、ご苦労様です!」
「ああ、ちょうど良かった。掃除も草刈りもできないし、今日は、これで引き上げようと思ってたところなんですけど、よろしいですか?」
「あ〜、この雨じゃあ無理ですね。いいですよ。」
「便所掃除だけして帰ります。」
「おねがいします。」
便所は、十一箇所あった。主に女性が担当していた。
「あっ、保土ヶ谷さん!」
「何でしょうか?」
「今度、大型ゴミの回収も御願いしたいんですけど、いいですか?」
「いいですよ。じゃあ、来週からということで、後で担当者が説明に伺いますので、よろしく。」
「分かりました。」
トンボが飛んでいた。部長が呟いた。
「あっ、アキアカネだ!めずらしいなあ〜。」
「めずらしいんですか?」
「以前は、よく高野山にもいたんですけどねえ。最近はめっきり。」
「どうしてなんですか?」
「夏になると、涼しい山頂へと移動し、秋になると平地におりて行くんですけど、たぶん温暖化のせいで、高野山よりも高い山に行ってるんでしょうね〜。」
「そういうことですか。」
「もう九月なのに、こんなところにいるなんて、変ですねえ。」
「地球温暖化の影響ですか〜?」
「なんだか、保土ヶ谷さんの言う通りになってきましたねえ。」
「残念ですが、そうなってきましたねえ。」
部長は、なぜか悲しい目をしていた。
「トンボも減っているんですけど、町の人口も減ってるんですよ〜。」
「現在、どのくらいなんですか?」
「五千人を切りました。」
「そ〜うなんですか。」
「弘法大師と武将の供養等と、ゴマ豆腐だけではねえ〜。他に、名物と言えば、カミナリくらいのものですからねえ〜。カミナリじゃあ、人は逃げて行きますよね〜。」
アキラが近くにいて、二人の話しを聞いていた。
「カミナリをネオンにしたらどうかな〜?」
「カミナリをネオン?」
「カミナリネオン塔というのを作って、カミナリの電気で七色に光らせるんですよ。」
「ほ〜〜〜、なるほど。面白いアイデアだなあ。」
「できたら、みんな見に来るんじゃない?」
「そうですねえ。面白そうだから、テクノロジー研究所に言っておきましょう。」
部長は「どうもありがとう!」と言って去って行った。
ショーケンがアキラに言った。
「おまえ、急に変なこと思いつくねえ?」
「へへへ、才能かな?」
龍次は、無線機で全員に仕事中止を伝えた。雨は強くなっていた。


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