龍次が雲の流れを見ていると、気象担当のナナがやってきた。みんなからは、セブンと呼ばれていた。 「龍次さん、インターネットの高野山のピンポイントお天気情報では、四時までは小雨とありました。どうしましょう?」 「小雨とは知ってたけどな〜、こんなに降るとはな〜、ちょっと想定外だったな〜。それ以降は?」 「曇りです。」 「午前中にゴミ入れのゴミも集めたことだし、中止にするか!」 高野山町の清掃部の部長がやってきた。 「や〜〜、皆さん、ご苦労様です。」 部長は、龍次に挨拶した。「保土ヶ谷さん、ご苦労様です!」 「ああ、ちょうど良かった。掃除も草刈りもできないし、今日は、これで引き上げようと思ってたところなんですけど、よろしいですか?」 「あ〜、この雨じゃあ無理ですね。いいですよ。」 「便所掃除だけして帰ります。」 「おねがいします。」 便所は、十一箇所あった。主に女性が担当していた。 「あっ、保土ヶ谷さん!」 「何でしょうか?」 「今度、大型ゴミの回収も御願いしたいんですけど、いいですか?」 「いいですよ。じゃあ、来週からということで、後で担当者が説明に伺いますので、よろしく。」 「分かりました。」 トンボが飛んでいた。部長が呟いた。 「あっ、アキアカネだ!めずらしいなあ〜。」 「めずらしいんですか?」 「以前は、よく高野山にもいたんですけどねえ。最近はめっきり。」 「どうしてなんですか?」 「夏になると、涼しい山頂へと移動し、秋になると平地におりて行くんですけど、たぶん温暖化のせいで、高野山よりも高い山に行ってるんでしょうね〜。」 「そういうことですか。」 「もう九月なのに、こんなところにいるなんて、変ですねえ。」 「地球温暖化の影響ですか〜?」 「なんだか、保土ヶ谷さんの言う通りになってきましたねえ。」 「残念ですが、そうなってきましたねえ。」 部長は、なぜか悲しい目をしていた。 「トンボも減っているんですけど、町の人口も減ってるんですよ〜。」 「現在、どのくらいなんですか?」 「五千人を切りました。」 「そ〜うなんですか。」 「弘法大師と武将の供養等と、ゴマ豆腐だけではねえ〜。他に、名物と言えば、カミナリくらいのものですからねえ〜。カミナリじゃあ、人は逃げて行きますよね〜。」 アキラが近くにいて、二人の話しを聞いていた。 「カミナリをネオンにしたらどうかな〜?」 「カミナリをネオン?」 「カミナリネオン塔というのを作って、カミナリの電気で七色に光らせるんですよ。」 「ほ〜〜〜、なるほど。面白いアイデアだなあ。」 「できたら、みんな見に来るんじゃない?」 「そうですねえ。面白そうだから、テクノロジー研究所に言っておきましょう。」 部長は「どうもありがとう!」と言って去って行った。 ショーケンがアキラに言った。 「おまえ、急に変なこと思いつくねえ?」 「へへへ、才能かな?」 龍次は、無線機で全員に仕事中止を伝えた。雨は強くなっていた。
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