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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第152回   ロボットアーム電動車椅子
高野山テクノロジー研究所の所長が乗ってるロボットアーム電動車椅子は、熊さんたちの前で止まった。所長は大きく手を上げた。
「やあ、みなさん!」
熊さんが答えた。
「長谷川さん、どうしたの?こんな雨の中を?」
「電動車椅子のテストをしてたら、急に雨が降ってきてね。でも、ちょうど良かったです、傘を差すテストもできて。」所長は、傘を差しているロボットアームの腕を指差した。
「器用に差してるな〜。」
「なかなかいいでしょう〜。」
「なんか、いいよ。」
ポンポコリンも褒めた。
「とってもいいわ〜〜。よくできてるわ〜。」
「どうもありがとう。」
正男は、マイペースでニワトリを見ていた。紋次郎は仲間を見るように、ロボットアームを見ていた。紋次郎がやってきた。
「これは、電子頭脳で動いているんですか?」
「半分ね。」
「半分?」
「命令すると動くんだよ。」
「ああ、そうなんですか。」
「がっかりした?」
「ちょっとだけ、がっかりしました。」
所長は、熊さんに尋ねた。
「鳥小屋を作ってたの?」
「そう。」
「人間村には、脚の悪い人なんていないよね?」
ポンポコリンが返事した。
「何か?」
「わたしじゃあ、実験にならないんですよ。やっぱり脚の不自由な人でないと。」
「そういうことか。あ〜〜、いるよ!」
「えっ、いるの?」
「忍くんが、左足を捻挫して歩けないの。彼で良かったら。」
「彼は、今何もしてないの?」
「仕事も出来ないから休んでる。」
「じゃあ、一週間でいいから、テストを頼んでいいかなあ〜。」
「いいと思うけど、本人の承諾と、保土ヶ谷さんにも許可を頂かないと。」
「じゃあ、お願いしたいので、宜しく伝えておいて。お金も払うよ、少ないけどね。」
「彼なら、集会所にいるわよ。今行ってみる?」
「えっ、そうなの。じゃあ、今行くよ。」
「わたしも行くわ。ちょうど帰るとこだったの。ちょっと待って、正男くんを呼んでくるから。」
ポンポコリンは、正男のダンボールを取って、手を引いて戻って来た。
「さあ、行きましょう!」
「バイバイ、熊さ〜〜ん!バイバイ、紋ちゃ〜〜ん!」
二人は、熊さんに挨拶すると、集会所に向かった。まだ雨は降っていた。
「なあに、これ?傘さしてる?」
「いいでしょう〜。」
集会所に着くと、三人は中に入って言った。忍がテーブルの上にノートパソコンを置いて、何やらマウスを動かしていた。
「何してるの、忍くん?」
忍は振り向いた。
「うん。ちょっと、人間村のホームページを見てたんだよ。掲示板に変な書き込みがないかと思って。」
「あった?」
「なかったよ。」
「あの〜、忍くんに、おねがいがあるんだけど…」
「何?」
所長が前に出てきた。
「忍さん。電動車椅子のテストをやってくれませんか?」
「電動車椅子のテスト?」
「腕の付いてるやつなんだけど、見たことあります?」
「えっ、どんなの?」
「今、持ってくるから待ってて!」
忍は呼び止めた。
「入口には段差があるよ!」
所長は振り向いた。
「あっ、それはちょうどいいや。」
出て行った。すぐに、電動車椅子に乗って戻って来た。段差のところで止まり、両サイドの機械の腕で車体を持ち上げて前に移動させた。忍は驚いた。
「お〜〜〜、すげえ〜〜!」
正男は、きょとんとして見ていた。所長は、にこにこしながら、忍に近づき止まった。
「これです。」
「これ!?」
所長は降りた。忍は、ロボットアームを触った。
「すっごい、パワーだな〜。」
「どうですか?」
「今、乗っていいの?」
「乗ってください。」
忍は乗った。
「うん、なかなか座り心地もいいね〜。」
「右の手摺りのレバーでコントロールします。」
「ゲーム機と同じレバーだねえ。」
「そうです。」
「ボタンを押すと、どうなるの?まさか、機銃とか?」
「警笛です。」
忍は押してみた。ブーと鳴った。正男はびっくりした。
「腕は、どうやって動かすの?」
「段差頼む!って言えば、動作します。」
「ああ、そう。」
「傘は?」
「傘頼むって言えば、動作します。他に五種類ほど出来ます。左の手摺りに書いてあります。」
「ああ、これね!」
「はい。」
「これを、全部テストすればいいの?」
「はい。」
「やってみますよ。俺も助かるし。」
「そうですか、じゃあ、お願いします。アルバイト料も払いますよ、安いですけど。」
「いいよ、いいよ、そんなの!こっちが、お金を出して、お願いしたいくらいなんだから!」
ポンポコリンが横から口出した。
「お金なんていいんですよ。保土ヶ谷さんに怒られます。」
「ほんとに、いいの?」
「いいんですよ。今までも、助け合ってきたんじゃないですか。」
「そう。でも一応、保土ヶ谷さんにも言っておいてね。」
「返事は決まってますけど、分かりました。」
忍は、楽しそうだった。
「これ、いいな〜〜。」
「テストは、一週間くらいでいいですよ。」
「な〜〜んだ、たった一週間?足が良くなるまでじゃあ、駄目なの?」
「やってくれるんだったら、嬉しいですけど。」
「やるやる!」
「じゃあ、お願いします。」
所長は頭を下げた。
「所長〜〜、頭なんか下げないでよ〜!」


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