高野山テクノロジー研究所の所長が乗ってるロボットアーム電動車椅子は、熊さんたちの前で止まった。所長は大きく手を上げた。 「やあ、みなさん!」 熊さんが答えた。 「長谷川さん、どうしたの?こんな雨の中を?」 「電動車椅子のテストをしてたら、急に雨が降ってきてね。でも、ちょうど良かったです、傘を差すテストもできて。」所長は、傘を差しているロボットアームの腕を指差した。 「器用に差してるな〜。」 「なかなかいいでしょう〜。」 「なんか、いいよ。」 ポンポコリンも褒めた。 「とってもいいわ〜〜。よくできてるわ〜。」 「どうもありがとう。」 正男は、マイペースでニワトリを見ていた。紋次郎は仲間を見るように、ロボットアームを見ていた。紋次郎がやってきた。 「これは、電子頭脳で動いているんですか?」 「半分ね。」 「半分?」 「命令すると動くんだよ。」 「ああ、そうなんですか。」 「がっかりした?」 「ちょっとだけ、がっかりしました。」 所長は、熊さんに尋ねた。 「鳥小屋を作ってたの?」 「そう。」 「人間村には、脚の悪い人なんていないよね?」 ポンポコリンが返事した。 「何か?」 「わたしじゃあ、実験にならないんですよ。やっぱり脚の不自由な人でないと。」 「そういうことか。あ〜〜、いるよ!」 「えっ、いるの?」 「忍くんが、左足を捻挫して歩けないの。彼で良かったら。」 「彼は、今何もしてないの?」 「仕事も出来ないから休んでる。」 「じゃあ、一週間でいいから、テストを頼んでいいかなあ〜。」 「いいと思うけど、本人の承諾と、保土ヶ谷さんにも許可を頂かないと。」 「じゃあ、お願いしたいので、宜しく伝えておいて。お金も払うよ、少ないけどね。」 「彼なら、集会所にいるわよ。今行ってみる?」 「えっ、そうなの。じゃあ、今行くよ。」 「わたしも行くわ。ちょうど帰るとこだったの。ちょっと待って、正男くんを呼んでくるから。」 ポンポコリンは、正男のダンボールを取って、手を引いて戻って来た。 「さあ、行きましょう!」 「バイバイ、熊さ〜〜ん!バイバイ、紋ちゃ〜〜ん!」 二人は、熊さんに挨拶すると、集会所に向かった。まだ雨は降っていた。 「なあに、これ?傘さしてる?」 「いいでしょう〜。」 集会所に着くと、三人は中に入って言った。忍がテーブルの上にノートパソコンを置いて、何やらマウスを動かしていた。 「何してるの、忍くん?」 忍は振り向いた。 「うん。ちょっと、人間村のホームページを見てたんだよ。掲示板に変な書き込みがないかと思って。」 「あった?」 「なかったよ。」 「あの〜、忍くんに、おねがいがあるんだけど…」 「何?」 所長が前に出てきた。 「忍さん。電動車椅子のテストをやってくれませんか?」 「電動車椅子のテスト?」 「腕の付いてるやつなんだけど、見たことあります?」 「えっ、どんなの?」 「今、持ってくるから待ってて!」 忍は呼び止めた。 「入口には段差があるよ!」 所長は振り向いた。 「あっ、それはちょうどいいや。」 出て行った。すぐに、電動車椅子に乗って戻って来た。段差のところで止まり、両サイドの機械の腕で車体を持ち上げて前に移動させた。忍は驚いた。 「お〜〜〜、すげえ〜〜!」 正男は、きょとんとして見ていた。所長は、にこにこしながら、忍に近づき止まった。 「これです。」 「これ!?」 所長は降りた。忍は、ロボットアームを触った。 「すっごい、パワーだな〜。」 「どうですか?」 「今、乗っていいの?」 「乗ってください。」 忍は乗った。 「うん、なかなか座り心地もいいね〜。」 「右の手摺りのレバーでコントロールします。」 「ゲーム機と同じレバーだねえ。」 「そうです。」 「ボタンを押すと、どうなるの?まさか、機銃とか?」 「警笛です。」 忍は押してみた。ブーと鳴った。正男はびっくりした。 「腕は、どうやって動かすの?」 「段差頼む!って言えば、動作します。」 「ああ、そう。」 「傘は?」 「傘頼むって言えば、動作します。他に五種類ほど出来ます。左の手摺りに書いてあります。」 「ああ、これね!」 「はい。」 「これを、全部テストすればいいの?」 「はい。」 「やってみますよ。俺も助かるし。」 「そうですか、じゃあ、お願いします。アルバイト料も払いますよ、安いですけど。」 「いいよ、いいよ、そんなの!こっちが、お金を出して、お願いしたいくらいなんだから!」 ポンポコリンが横から口出した。 「お金なんていいんですよ。保土ヶ谷さんに怒られます。」 「ほんとに、いいの?」 「いいんですよ。今までも、助け合ってきたんじゃないですか。」 「そう。でも一応、保土ヶ谷さんにも言っておいてね。」 「返事は決まってますけど、分かりました。」 忍は、楽しそうだった。 「これ、いいな〜〜。」 「テストは、一週間くらいでいいですよ。」 「な〜〜んだ、たった一週間?足が良くなるまでじゃあ、駄目なの?」 「やってくれるんだったら、嬉しいですけど。」 「やるやる!」 「じゃあ、お願いします。」 所長は頭を下げた。 「所長〜〜、頭なんか下げないでよ〜!」
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