「昨日の龍の玉がユーフォーだとしたら、ログハウスの前を通った後、天軸山に登り空に舞い上がって、あの世に行ったことになりますね。」 「そういうことになります。」 「名刺の方を乗せて。」 「はい。」 「どうして、天軸山なんでしょう?」 「それは多分、あの世の窓があるからだと思います。」 「あの世の窓?」 「霊界に通じる窓です。」 「え〜〜!?天軸山にあるんですか?」 「高野山は、日本三大霊場の一つなんですよ。」 「なんですか、それ?」 「霊界に通じている特殊な場所なんです。」 「え〜〜〜っ?高野山の他には、どこが?」 「比叡山(ひえいざん)と恐山(おそれざん)です。」 「恐山なら知ってます。テレビで見たことがあります。霊界と交信する人が出てきて、霊界の人が憑依して話すんです。」 「イタコですね。」 「いたこ?」 「霊の代弁をする人です。」 「じゃあやっぱり、昨夜の球体は、あの世に行ったんですね。」 「そうですね。」 「でも、なぜユーフォーなのかしら?」 「それは、ちょっと分かりません。」 「もし、昨日の連中が宇宙人だとしたら、何か関係があるんじゃないでしょうか?」 「わたしも、そう思ってるんです。」 「あの連中、いったいどこから来たんでしょう?」 「…ひょっとしたら、大台ケ原かも知れません。」 「え〜〜!?」 「もし彼らが、本物の宇宙人だったらです。そして、空海の追い出した鬼が、宇宙人だったら。」 「え〜〜!?」 「実は、空海の追い出した鬼は、昨日の宇宙人の先祖だった…」 「つまり、昨日の連中は大台ケ原の鬼ってことですか?」 「はい。」 「そして、大台ケ原の鬼は宇宙人だったと!」 「はい。」 「空海が追い出した鬼は、宇宙人だったと!」 「はい。」 姉さんは、ぞくぞくしてきた。 「以前、アニーさんは、大台ケ原の妖怪の話しをしていましたねえ。サイコ・キラーの妖怪の。」 「ええ、何か?」 「何という妖怪でしたっけ?」 「一本たたらです。」 「確か、気を狂わす妖怪でしたよね?」 「そうです。一本たたらの話しを聞くと気が狂ってしまうという妖怪です。サイコ・キラーです。」 「その妖怪って、宇宙人の妖怪ではないんでしょうか?」 「宇宙人の妖怪?」 「はい。地球人を近寄らせないための。」 「なるほど。それは、ありえますね。」 「大台ケ原って、今でも秘境なんですか?」 「昔は秘境でしたけど、今は道もできて自動車で行けます。かないひどい道ですが。」 「じゃあ、だいぶ観光地化されてるんですね?」 「はい。でも一部だけです。ほとんどは秘境です。教会もあるんですよ。」 「え〜〜!?」 「今度、行って見ましょう!関係してるものは、全て仕事なんです。」 「はい!行って見ましょう!」 「葛城さんの、サイドワインダーで!」 「はい。運転なら任せてください。ラリーにも出たことがあるんです。」 「あ〜〜、そうなの!」 姉さんは、左手の親指を立てて微笑んで返した。 「サイコ・キラーの妖怪や宇宙人が出てくるかも知れませんよ、大丈夫ですか?」 「大丈夫です。わたしには、いつでも、亡くなった父がついていますから!」 「葛城さんの、お父様って、いつ亡くなられたんですか?」 「わたしが二十歳のときに、香港で親友の鶴丸隼太という人と、人を助けようとしてギャングと戦って、銃で撃たれて死んだんです。親友の方と一緒に。」 「そうだったんですか!その親友の方も紅流の方だったんですか?」 「違います。風魔忍術の先生でした。」 「風魔忍術って、風魔小太郎のですか?」 「はい。」 アニーは、姉さんの顔を驚いた様子で真剣に見ていた。姉さんは、にこっと笑って見せた。 「サイコ・キラーの妖怪が出たら、トーキング・ヘッズのサイコ・キラーを聞かせましょう。そしたら、我を忘れて、きっと踊りだしますよ。」 雨が降っていた。秋の植物たちが、忍者のようにひっそりと隠れるように風に揺れていた。ススキの花が隠れるように咲いていた。その下で、白く小さい竜脳菊(りゅうのうぎく)の花が、素朴で可憐でありながら、したたかなに強く咲いていた。近くで、彼岸花、別名幽霊花が揺れていた。
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