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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第150回   日本三大霊場
「下界の連中、俺たちを馬鹿にしやがって、あいつら死んだら絶対に地獄に行くぞ。」
「そうだな〜、あいつら人間じゃねえよ。嘘と騙しの汚い人間だよ。絶対に地獄に行く!」
「もう下界は地球温暖化で地獄だよ。」
「そうだな。」
「そうだ、そうだ。ざまあみろ!」
一人の男が、一枚のチラシを開いて見せた。
「昨日、パチンコ屋の宣伝のヘリが飛んでたろう。」
「ああ、飛んでた。」
「いまさっき、チラシを拾ったんだよ。」
「ああ、そう。ちょっと見せてくれ。」
手渡した。
「霊界パチンコ?」
「なんだい、そりゃあ?」
「どこにあるんだよ、そんなの?」
「九度山(くどやま)。」
「九度山と言えば、真田の屋敷があったとこだろう。」
「そうだよ。」
「忍術パチンコってのは分かるけどな、霊界パチンコかよ?」
「幽霊でも出るのか?」
「その通り、墓穴に入ったら幽霊が出るって書いてあるよ。」
「墓穴に入ったら?」
「なんだい、そりゃあ?」
「穴に、天国穴、地獄穴、墓穴ってのがあるんだって!」
「へ〜〜〜〜え!」
「面白そうだなあ〜、よく考えたな〜。」
「商売人だなあ〜〜。」
「満月の夜には、狼男が出て大サービスって書いてあるぞ!」
「ほんとうに出るのかよ?」
「そう書いてある。」
「大したもんだ。」
「何のサービスするんだよ?」
「さ〜〜〜あ?」
「肝心なことは書いてないんだなあ〜。」
「来てみないと分からない!って書いてあるぞ。」
「面白そうだなあ〜、ちょっと行ってみるか?」
「言ってみるかって、お金はあるのかよ?」
「あっ、そっか!」
「狼男か〜〜、今日は満月か?」
「さ〜〜〜あ?」
「もし満月だったら、ほんとうに気持ち悪いな〜。」
「満月は、だいたい二十九日に一回来るんだよ。」
「ほ〜〜、学があるね〜。」
「そう?」
「大したもんだ!」
「狼男ってのは外国の話しだろう。日本だったら、かぐや姫だよ。」
「かぐや姫が出てくるの?それだったらいいな〜。」
「出てきはしないよ。十五夜の満月の夜に、月から来たお迎えの天人と一緒に. 月に帰って行くんだよ。」
「な〜〜んだ、つまんない!」
「かぐや姫の幽霊でもいいから、出てきたらいいな〜。」
「おまえ、変なこと言うなよ〜。ほんとに出てくるぞ!」
「ほんとに出てくる?いいじゃな〜い!」
「気持ち悪いこと言うなって!高野山は、霊界とつながってるから、ほんとうに変なのが出てくるぞ。」
「へ〜〜、高野山は霊界とつながってるの?」
「そうだよ。」
「恐山みたいだな〜。」
「高野山は、日本三大霊場なんだよ。」
「なんだい、そりゃあ?」
「高野山(こうやさん)・比叡山(ひえいざん)・恐山(おそれざん)を、日本三大霊場と言うんだよ。」
「へ〜〜、詳しいねえ。」
「俺、生まれが青森だから。」
「恐山って、死んだ人間を呼び寄せて語らせるところだろ。テレビで見たことあるよ。」
「それを、イタコって言うんだよ。」
「いたこ?」
「蛸かよ?」
「タコじゃねえよ。霊媒師のことだよ。霊を降ろしてくれる人のことだよ。」
「霊を降ろす?降ろしてどうするの?」
「霊にしゃべらせるんだよ。」
「霊に喋らせる?」
「そうだよ。それを、イタコの口寄せって言うんだよ。」
「へ〜〜〜え、そんなことができるのかよ!?」
「ああ、できるらしい。」
「ほんとかね〜?」
雨は、まだ降っていた。



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