ポンポコリンは冷蔵庫の前に立っていた。冷蔵庫は観音開きになっていた。 「正男くん、ちょっと来て。」 「は〜い」 正男は、言われた通りに従った。 「右と左、どっちが開けやすい?」 正男は、冷蔵庫を開けた。 「みぎ!」 「じゃあ、五十嵐さんは、右側を使ってください。」 冷蔵庫の中は、真ん中から左右に分かれていた。 礼子が「はい。」と返事した。 「じゃあ、ちょおと変わったの作ろうかな!」 正男は、ポンポコリンを、にこにこしながら見た。 「変わったのって、なあに?」 「ライスお好み焼き!」 「らいすおこのみやき?」 母親も知らなかった。 「ライスお好み焼き?」 「ライスの入った、お好み焼きです。」 ロボットの紋次郎には関係ない世界だった。紋次郎が尋ねた。 「わたしは、もう帰ってもいいですか?」 「あっ、紋ちゃん。いいよ。何か用があるの?」 「わたしも、引っ越しますので。」 「ああ、そっか。今まで、集会所暮らしだったからねえ。ご苦労様でした。」 紋次郎は手を上げ、「さようなら!」と言った。正男が、「ばいば〜〜い!」と言い、礼子が、「どうもありがとう。」と言った。 紋次郎は、何だか楽しそうに出て行った。 ポンポコリンは料理を開始した。 玉葱を出すと、適当な厚さで薄切りにした。鍋に水を入れて、たまねぎを入れて火をかけた。顆粒のコンソメスープを入れた。沸騰してきたので、弱火にした。 「スープは、これで良しっと!」 キャベツを出すと、細かく千切り。それから、豚肉を出すと、食べやすい大きさに切った。それから、大きなボウルに適量の水を入れ、小麦粉を入れ、卵を三個割って入れ、だしの素・塩・こしょう、水を加えて混ぜ合わせた。 それから、冷たいご飯を入れ、かき混ぜた。それから、切ったキャベツと冷凍コーン を入れ、またかき混ぜた。フライパンにオイルをひくと、火をいれ三分の一を流し入れた。 紅しょうがやかつお・青のりをのせて、蓋をして両面ふっくらと焼いた。最後に、ソースとマヨネーズをかけた。それを、三度繰り返した。 「は〜〜〜い、出来上がり!」 正男は、両手を膝の上に置いて、かしこまった。ポンポコリンは、テーブルの上に並べた。正男のは、少し小さかった。 「僕の、少し小さいよ!」 「大きいのがいいの?」 「うん!」 「食べられるかな?」 「食べられるよ〜!」 「そおお!凄いなあ〜、じゃあ、わたしのと取替えてあげる。」 母親が、叱った。 「駄目でしょう、お姉さんのを取っちゃあ〜!」 「いいんですよ。お腹が空いたら、また自分で作りますから。」 「ほんとうに、すみませんねえ!」 三人は、手を合わせ「いただきま〜す!」と言ってから食べ始めた。正男が一番早かった。 「おいしいねえ、母ちゃん!」 「そうだねえ。スープも飲みなさい。」 「うん!」 ポンポコリンは、嬉しそうに正男を見ていた。まるで、自分の子供を見るように。 「うんと食べて、大きくなって、強くなるのよ!」 「うん!」 正男は、食べながら大きく頷いた。そして、食べている母を見た。 「母ちゃん、僕が大きくなったら、一生懸命に働いて、お金を持ってきてあげるから、死なないでね!」 母は、しくしくと泣き出した。 「正男〜〜〜、ごめんなさ〜い!母ちゃん、二度と死ぬなんて言わないからね〜!」 「死んだら、父ちゃんに逢えなくなるよ。」 「うん、そうだね。」 ポンポコリンは、優しく親子を見ていた。遠くで高野山の鐘が鳴っていた。
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