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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第149回   社会人の常識は、先ず言葉から!
龍次たちは、霊宝館の庭の木々の下で雨宿りをしていた。龍次の隣には、アキラがいた。ショーケンは隣の木の下にいた。
「龍次さんって、やけに兄貴に親切だねえ?」
「実はねえ、わたし、本物のショーケンと同じ年なんですよ。」
「え〜〜、そうなの?」
「なんか、昔の溌剌としたショーケンを思い出してね。見てると、わたしも元気になってくるんですよ。」
「へ〜〜〜え。たったそれだけで?」
「親切ですか?」
「なんか、遠慮してるって感じ。」
「そうかなあ〜。」
「リーダーとしては、あんまりそういうのは良くないんじゃないの?」
「…そうですね。」
アキラは、誰にでもはっきりと言う性格だった。アキラは空を見上げた。
「雨、止みそうにないね〜。」
「山の天気は、ころころ変わるから分かりませんよ。」
「じゃあ、もうすぐ止むの?」
「止むかも知れません。」
「雨じゃあ、仕事にならないねえ〜、いつもこうやって休むの?」
「そうです。」
「のんきな仕事だね。」
「大雨だと中止にします。」
「そうなんだ。」
「外仕事は、大抵そうですよ。」
「そういえば、道路工事の人も、雨降りにはやってないな〜。」
「そうでしょう。」
アキラは後ろの霊宝館を見た。
「この建物は何なの?」
始めて見る建物だった。
「霊宝館(れいほうかん)ですか?」
「れいほうかんって言うんだ。」
「高野山の重要な文化財が保管して展示されているところです。」
「へ〜〜〜え。」
ショーケンがやって来た。
「龍次さん、どうするの?」
「仕事?」
「そう。」
「どうしましょうかねえ…」
龍次は雲を見ていた。
「もう少し様子を見ましょう。」
アキラが「だって!」と言った。ショーケンは怒った。
「何が、だって!だよ〜〜。おまえ、年上の人に対する言葉かよ〜。誤れよ!」
「えっ?兄貴、怒ってるの?」
「早く誤れって!」
アキラは龍次に、野球帽を取って、頭を深く下げて素直に謝った。
「ごめんなさい!」
「いいんですよ。そんなことはどうでも。」
ショーケンは、まだ怒っていた。
「龍次さんは、優しいから、ああ言ってるがなあ、ほんとうは気分を害してるんだよ。」
「え〜〜、そうなの〜?」
「そんなことはありませんよ。」
ショーケンは、いたって真面目な顔をしていた。
「これからは、ちょんと敬語を使え!社会人なんだから!」
「あれ〜〜〜、どうしたの、兄貴?」
「いいから、これからは、年上の人には敬語を使え!」
「兄貴は?」
「俺も使うよ!」
「分かった!」
「年下の連中にも、ちゃんとした日本語を使えよ!」
「分かったよ。」
「社会人の常識は、先ず言葉から!」
「どうしたの、兄貴?」
「基本的な行いから出直そうぜ!」
「どうしたの、兄貴?」
ショーケンは、高野山に来て、新しい何かを感じ悟っていた。
「俺たちが、こうしてここにいられるのも、龍次さんのおかげなんだからな、礼を言って感謝しろよ!」
「ああ、そうだね!」
アキラは龍次に向いて、頭を下げた。
「どうもありがとうございます!」
「いいよ、礼なんて!」
ショーケンも頭を下げた。
「ありがとうございます!」
「ショーケンさん、今まで通りでいいって!」
「ショーケンさんじゃなくって、ショーケンでいいです!」
「そっちが良くってもねえ、こっちが良くないんですよ。ショーケンさん、でいいの!」
「どうしてですか?」
「わたしの時代のカリスマなんだから、呼び捨てにはできないよ!」
「わたしは、クローンですよ。」
「わたしの中では、昔のままのカリスマのショーケンさんなんです!」


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