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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第147回   便秘の熊さん
「早く止まないかなあ〜、この雨。」
熊さんは、恨めしそうに空を見ていた。ポンポコリンも見ていた。
「雲も出てきたし、止みそうにはないね。」
「どうしようかな〜。お腹の調子が悪いと、どうも頭も働かねえな〜。」
「腸が悪いの?」
「そう、腸。」
「腸は、第二の脳って言うからねえ。」
「ちょうなの?」
「ははは、さえてるじゃない!」
「さえてなんかないよ。いつものセリフだよ。」
「どういうふうに悪いの?」
「便秘!トイレに行っても出ないんだよ。便秘だなんて初めてだよ。出ないって、気持ち悪いな〜。」
「男の人は、女性に比べたらならないんだけどね。年取ると、腸の働きも弱くなってくるからねえ。食べ物には気を配らないと。昨日は何を食べたの?」
「何を食べた…って、夕食は食堂だろう、昼は、マグロの煮付けだな。刺身でないのを安くで買ってきたやつだよ。」
「煮付けって、マグロだけなの?」
「そうだよ。」
「たぶん、それだわ。マグロの赤身の部分だったでしょう?」
「そうだよ。」
「赤みの部分は煮てたくさん食べると、便秘になるのよ。」
「え〜〜〜、そうなの!」
「そうなの。」
「な〜〜んだ、そうだったのか。」
「マグロが出れば良くなるわ。カンチョーあげようか?」
「…あるの?」
「あるよ。今もって持って来ようか?」
「雨が止んでからでいいよ。」
紋次郎は、二人の話しを聞いていた。
「傘、持ってきましょうか?」
「あっ、持って来て。集会所の傘でいいわ。」
紋次郎は、集会所に向かった。正男は、相変わらずダンボールの中でニワトリを見ていた。
「便秘の苦しみを始めて味わったよ。」
「なによこのくらい、一週間も二週間も出ない人がいるのよ。」
「え〜〜〜、ほっんとかよ〜!?」
「一ヵ月も出ない人がいるんだから。」
「え〜〜〜、信じられんな〜!?死なないのかよ?」
「そんなことじゃあ、死なないわ。」
「どうなるの?」
「お腹が、ぱんぱんに張って、胃を圧迫して痛くなります。肌が荒れ、満腹感があるのにお腹が空くという感じになります。」
「いや〜〜、それ最悪だなあ〜。」
「排泄物が長く滞在すると、しだいに腐敗してくるんですよ。それが危険なんです。」
「え〜〜〜!?」
「腐敗した排泄物は腸内の悪玉菌によって有害物質へと分解されます。生じたガスは、便秘で逃げ場がなく腸内にたまるのでお腹の張りを感じるようになります。」
「おならか?」
「そうです。おならは出たほうがいいんです。」
「有害物質は血液を通して全身に行き渡るので頭痛やめまい、吐き気をもよおし、肺に行き放出され口から出て行くので口臭になります。」
「いや〜〜、それは最悪だな〜〜。そういう人はどうするの?」
「薬を飲むしかないわね。」
「お〜〜、おっかねえ。気をつけよう!」
「ちゃんと、バランスよく食べてれば大丈夫よ。水分は、よくとったほうがいいわ。」
「ああ、気をつけるよ。」
「プルーンには、ソルビトールと言う成分が含まれていて、下剤ほど強力ではないけど、かなりの効果があるよ。」
「プルーンか、聞いたことあるな〜。」
「乾燥したもののほうがいいよ。繊維もあるし。でも、たくさん食べ過ぎると下痢になるよ。」
「分かった!」
「それに、プルーンは頭痛にもいいのよ。」
「ああ、そう!」
「小さく切って、ヨーグルトに入れて食べるといいわ。」
「さすがに看護師だな〜、よく知ってるな〜。」
「肉とか魚などのタンパク質を食べるときには、必ず他のものと一緒に食べること!」
「ご飯でもいいんだ?」
「いいわ、穀物は大丈夫!」
「分かった!」
「早食いは良くないわ。野菜が嫌いな人は、果物でもいいのよ。」
「分かった、分かった!」
「年寄りは、水分を多くとったほうがいいわ。」
「年寄りって、俺まだ五十代だよ!」
「失礼!」
「龍次さんと同じ歳!」
「な〜〜んだ、じゃあアラ還じゃん!」
「あらかん?なんで、俺が、嵐寛壽郎(あらし かんじゅうろう)なんだよ!?」
「あれ〜〜、龍次さんも同じこと言ってたわ。それ、どういう人なの?」
「知らないの?」
「知らない。」
「有名な映画俳優だよ。あらかんと言えば、嵐寛壽郎だよ。略して、あらかん!」
「ああ、そうなの。」
「本物のショーケンと同じ歳!」
「え〜〜〜、そうなの!?」
「そうだよ。」
「かっこいい〜〜〜!」
「なんだよ、歳が同じだけのことじゃないか。」
「素敵〜〜〜い!」
ポンポコリンは、少女漫画のヒロインの目になっていた。星が飛んでいた。
「素敵でも何でもねえよ。ただの便秘のおじさん。はっはは。」
熊さんは、自分で言って、自分で笑っていた。
「おたくの、あらかんは、どういうこと?」
「アラウンド還暦の略で、還暦前後という意味。」
「ああ、そうなの。へ〜〜〜え!」
紋次郎が、傘を持って帰ってきた。ポンポコリンに手渡した。
「はい。」
「ありがとう。」
こっちに向かって、ロボットアーム電動車椅子に乗った男がやってくるの見えた。ロボットアームは傘を差していた。乗ってる人間が、熊さんたちに手を振っていた。
「あっ、研究所の所長だ!」



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