ガソリン暴走族のメリーゴーランドから分かれた彼らは、アナーキーな永ちゃんのヒットナンバー<黒く塗りつぶせ>を歌いながら普通に走っていた。無政府主義者と化した彼らには、ぴったり曲だった。
そうさ 朝から晩まで ナイト アン デイ いつも働きっぱなし〜 ♪ まるで犬コロみたいさ ナイト アン デイ なのに文無し ナイト アン デイ〜 ♪ シャクな〜この世界だぜ〜 みんな黒く塗り潰せ〜〜〜 ♪ シャクな〜金持ちどもを〜 みんな黒く塗り潰せ〜〜〜 ♪ いつか おいらのハートはハリケーン 闇を切り裂くハリケーン ♪ 荒れる竜巻 光る稲妻 闇を切り裂くハリケーン ♪ シャクな〜恋の夢など〜 みんな黒く塗り潰せ〜〜〜 ♪ 古い夢見るやつら〜 みんな〜 黒く塗り潰せ〜〜〜 ♪
「あっ、ボスたちの自動車だ!」 彼らの前を、雇い人たちの銀色のマイクロバスが走っていた。 彼らは、クラクションを鳴らすと、助手席側の窓を開け、追い越しざま「先導しま〜〜す!」と叫んで、マイクロバスの前に出て行った。マイクロバスの運転手は驚いた。 「なんだ、あいつら。余計なことしやがって。真面目に炭酸ガスを撒き散らし走り回って仕事してろ!」 後ろに座ってる隊長が言った。 「まあ、いいじゃないか。前方を守ってやってるんだろう。」 「わたしの運転だけで大丈夫ですよ〜。」 「こっちが大丈夫でも、ときどき逆走してくる老人がいるからなあ〜。地球人は何をするか分からん。」 「まあ、そうですけど。」 「いいじゃないか、数少ない地球人の仲間なんだから。」 マイクロバスは、大台ケ原に向かっていた。 運転手の後ろの席には、隊長と副隊長が座っていた。 「昨夜は驚いたなあ〜。」 「隊長、何のことですか?」 「豊沢会長だよ。突然現れて、びっくりしたよ。」 「そうですねえ〜。」 「一昨日(おととい)やっと完成して、あの世とやらに送ったばかりなのになあ。」 「私も驚きました。」 「会長は新しい物が好きだからなあ〜。よっぽど嬉しかったんだろうなあ〜、」 「あの世に行っても同じですねえ〜。さすがですねえ〜。」 「オロロン星の最新科学で作ったものです。あれは最高傑作ですよ。」 「そうだな、龍の玉伝説を参考にして上手く作ったもんだ。」 「会長には、特許出願で色々と世話になったからな〜。ほんの御礼だよ。」 「そうですねえ、会長がいなかったら、レアアースの会社は無かったでしょうねえ。」 「地球の法律はややこしからな。今、儲かってるのは、会長のおかげだよ。」 「発明学会には、足を向けては眠れませんな〜。」 「そうだな。」 「地球温暖化で、学会は大丈夫でしょうか?」 「大丈夫だよ。あの人達は発明のプロだから。普通の地球人とは違うよ。」 隊長は、空を見た。 「高野山の次元の窓から、見たこともない龍の玉と発明界の天才がやってきて、きっと空海もびっくりしているだろうな〜。」 「そうですね〜〜、さぞかしびっくりしていますよ。」 「憎っくき空海め、はっははははは!」 「隊長、あの世とかに、空海はいるんですか?」 「それは分からんなあ〜。そんなところには行ったこともないしなあ〜。生きて高野山にいると言うが、そんなことはありえないしなあ〜。」 「人間は死んだら、あの世とかに行くんですよね?」 「人間どもは、そう言ってるな。」 「だったら、あの世は死人で一杯になるんじゃないですか?」 「なんでも、あの世では百年以内に、また戻ってくるらしいよ、この世に。輪廻転生とか言ってな。うまくできてるだろう。」 「りんねてんしょう?うまく考えたもんですすな〜。」 「考えた?」 「地球の坊さんたちですよ。」 「考えたんじゃなくって、ほんとうにあるんだと。だから、会長が戻って来たんだろう。」 「あっ、そうか!」 「聖人を除いてな。」 「聖人?」 「空海のような人間を聖人と言うんだよ。」 「じゃあ、聖人の空海は、あの世に今も生きて残ってるんですか?」 「生きてはいないよ。残っているかも知れんけど、そんなことは分からん!」 「じゃあ、あの世とかで空海は、死んで生きているんですね。」 「死んで生きてる?なんだそりゃあ?」 「空海は、なぜそんなところに残っているんですか?」 「あの世の迷える魂を救っているそうな。お節介なやつだよなあ。」 「まったくですねえ。」 「人間の魂なんか救って、どうするんだよな〜。どろどろした人間の魂なんか救って。」 「まったくですねえ。理解に苦しみますねえ。」 「地球人の魂は、我々オロロン星人の魂みたいに清らかじゃないからな〜。」 「まったくです、まったくです!」 「地球人の汚れて腐った魂なんか、犬にでも食わしてしまえ!」 「まったくです、まったくです!」
|
|