「あの連中が宇宙人だったら、月での採掘も可能かも知れませんね〜。」 「宇宙人だったら、できるかも知れません。」 姉さんは、上空を見上げた。 「今朝、高野山ニュースで言ってた、緑色で光る球体が飛んでいたというのは、この上ですよね。」 「はい、そうです。」 「じゃあ、やっぱり、あの走る不思議な球体だったのかなあ〜。」 「そうかも知れませんね。」 「そして、ここから空の彼方に飛んでいった?」 「そうかも知れません、そんな物が道路を走っていたというニュースはありませんでしたから。」 「あんな物が道路を走っていたら、目立って絶対にニュースになりますよ。」 「そうです。」 「じゃあ、あれはユーフォーってことですか?」 「そうですね。それしか考えようがありませんね。」 「ニュースでは、消えたと言ってましたよ。」 「言ってました。雷光と雷鳴と一緒に消えたと。つまり、ユーフォーサンダーです。」 「やっぱり、アニーさんの言ってたユーフォーサンダーだったんですね。」 「そういうことになりますね。」 「そして、昨夜の雷鳴は、ユーフォーのワープだった!」 「そうです。やっぱり、時空間ワープだったんです。」 「やっぱり、そのワープだったんですか。」 「一瞬にして、時空間を移動するんですよ。」 「それ聞きました。」 「もし、龍の玉だとしたら、違う次元に。」 「違う次元に?」 「あの世です。」 「あの世!?」 「もし、ユーフォーと龍の玉伝説が関係あるとしたら…」 「ユーフォーと龍の玉伝説?」 「龍の玉伝説では、龍の玉は、この世とあの世を行き来できるんだそうです。」 「え〜〜〜〜〜!?」 「これは、龍の玉がユーフォーだと仮説したときの話しです。」 「だとしたら、昨夜の龍の玉は、あの世から来て、あの世に行ったんですか?」 「もし、龍の玉に乗ってる人が、あの世の人だったら、そういうことになりますね。」 「アンビリーバブル!」 姉さんは、何気に芝生の上を見ていた。 「あっ、名刺だわ!」 十メートルほど離れたところにキラキラ光る名刺が落ちていた。姉さんは拾ってきた。チタンの名刺だった。 「わ〜〜綺麗!まだ新しいわ。」 「ほんとだ、最近落ちた感じですね。」 姉さんは名刺を読み上げた。 「発明学会、会長・豊沢豊雄…」 「…もしかしたら、龍の玉からの落し物?」 「えっ、まさか!?」 姉さんとアニーは、空を見上げた。 「棺桶の彼らとは、どういう関係があるんでしょうか?」 「それは、分かりません。」 姉さんは、周りを見回した。 「ほんとうに、高野山は不思議なところですねえ。」 中学校の校庭で、子供たちが、ひしゃくみたいなものを持って、ボールの投げあいをしていた。 「あの中学校の子供たち、何やってるのかしら?」 姉さんは指差した。 「あ〜〜、あれは、ひしゃく投げ玉です。」 「ひしゃく投げ玉?」 「ひしゃくで、木の屑の入った布のボールをキャッチするんですよ。」 「へ〜〜〜え。」 「高野山の昔からのスポーツです。」 「面白いんですか?」 「けっこう、はまるんですよ〜。ひしゃくに入れるのが、けっこう難しいんですよ〜。」 姉さんは、妙な返事をした。「そげんね?」 姉さんは、双眼鏡で見出した。 「葛城さん、こっちこっち!」 「何ですか?」 「おじさん、おはぎを売ってるわ。」 姉さんは、アニーの指差す方向を見た。おじさんが、麦藁帽子をかぶって、可愛いリアカーを引いて歩いていた。 「あれ、おはぎを売ってるんですか!?」 「はい。」 姉さんは、急に笑顔になった。 「おいしそうだな〜〜!」 「高野山名物の、ごま入りおはぎです。」 「ごま入りおはぎ!おいしそうだな〜〜!」 「お彼岸ですからねえ〜。」 「私が払います。早速買いましょう!」 「えっ?ここからじゃあ無理ですよ。」 「福之助に電話をします!」 姉さんは、携帯電話を取り出して電話をした。 「あっ、福之助。おねがいがあるんだけど…」 … 「そっちに、ぼたもち屋さんが歩いてくるから、ごま入りおはぎを十二個買っておいて。」 … 「いいから、買っておいて!」 … 「うるさい!」 姉さんは、電話を切った。アニーは笑っていた。 「十二個も?」 「半分は、お供えですよ。」 姉さんは、にこにこしていた。 そして、手の平を返したように、急に真剣な顔になった。 「ここに電話してみましょう!」 左手には携帯電話、右手には名刺を持っていた。 「今ですか?」 「はい。」 姉さんは、電話番号を中指でプッシュした。繋がった。 「もしもし…」 直ぐに電話は終わった。 「どうでした?」 「この方は、今年の二月に亡くなっています。」 「やっぱり!」 二人は、少し青ざめていた。
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