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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第138回   謎のチタン名刺
「あの連中が宇宙人だったら、月での採掘も可能かも知れませんね〜。」
「宇宙人だったら、できるかも知れません。」
姉さんは、上空を見上げた。
「今朝、高野山ニュースで言ってた、緑色で光る球体が飛んでいたというのは、この上ですよね。」
「はい、そうです。」
「じゃあ、やっぱり、あの走る不思議な球体だったのかなあ〜。」
「そうかも知れませんね。」
「そして、ここから空の彼方に飛んでいった?」
「そうかも知れません、そんな物が道路を走っていたというニュースはありませんでしたから。」
「あんな物が道路を走っていたら、目立って絶対にニュースになりますよ。」
「そうです。」
「じゃあ、あれはユーフォーってことですか?」
「そうですね。それしか考えようがありませんね。」
「ニュースでは、消えたと言ってましたよ。」
「言ってました。雷光と雷鳴と一緒に消えたと。つまり、ユーフォーサンダーです。」
「やっぱり、アニーさんの言ってたユーフォーサンダーだったんですね。」
「そういうことになりますね。」
「そして、昨夜の雷鳴は、ユーフォーのワープだった!」
「そうです。やっぱり、時空間ワープだったんです。」
「やっぱり、そのワープだったんですか。」
「一瞬にして、時空間を移動するんですよ。」
「それ聞きました。」
「もし、龍の玉だとしたら、違う次元に。」
「違う次元に?」
「あの世です。」
「あの世!?」
「もし、ユーフォーと龍の玉伝説が関係あるとしたら…」
「ユーフォーと龍の玉伝説?」
「龍の玉伝説では、龍の玉は、この世とあの世を行き来できるんだそうです。」
「え〜〜〜〜〜!?」
「これは、龍の玉がユーフォーだと仮説したときの話しです。」
「だとしたら、昨夜の龍の玉は、あの世から来て、あの世に行ったんですか?」
「もし、龍の玉に乗ってる人が、あの世の人だったら、そういうことになりますね。」
「アンビリーバブル!」
姉さんは、何気に芝生の上を見ていた。
「あっ、名刺だわ!」
十メートルほど離れたところにキラキラ光る名刺が落ちていた。姉さんは拾ってきた。チタンの名刺だった。
「わ〜〜綺麗!まだ新しいわ。」
「ほんとだ、最近落ちた感じですね。」
姉さんは名刺を読み上げた。
「発明学会、会長・豊沢豊雄…」
「…もしかしたら、龍の玉からの落し物?」
「えっ、まさか!?」
姉さんとアニーは、空を見上げた。
「棺桶の彼らとは、どういう関係があるんでしょうか?」
「それは、分かりません。」
姉さんは、周りを見回した。
「ほんとうに、高野山は不思議なところですねえ。」
中学校の校庭で、子供たちが、ひしゃくみたいなものを持って、ボールの投げあいをしていた。
「あの中学校の子供たち、何やってるのかしら?」
姉さんは指差した。
「あ〜〜、あれは、ひしゃく投げ玉です。」
「ひしゃく投げ玉?」
「ひしゃくで、木の屑の入った布のボールをキャッチするんですよ。」
「へ〜〜〜え。」
「高野山の昔からのスポーツです。」
「面白いんですか?」
「けっこう、はまるんですよ〜。ひしゃくに入れるのが、けっこう難しいんですよ〜。」
姉さんは、妙な返事をした。「そげんね?」
姉さんは、双眼鏡で見出した。
「葛城さん、こっちこっち!」
「何ですか?」
「おじさん、おはぎを売ってるわ。」
姉さんは、アニーの指差す方向を見た。おじさんが、麦藁帽子をかぶって、可愛いリアカーを引いて歩いていた。
「あれ、おはぎを売ってるんですか!?」
「はい。」
姉さんは、急に笑顔になった。
「おいしそうだな〜〜!」
「高野山名物の、ごま入りおはぎです。」
「ごま入りおはぎ!おいしそうだな〜〜!」
「お彼岸ですからねえ〜。」
「私が払います。早速買いましょう!」
「えっ?ここからじゃあ無理ですよ。」
「福之助に電話をします!」
姉さんは、携帯電話を取り出して電話をした。
「あっ、福之助。おねがいがあるんだけど…」

「そっちに、ぼたもち屋さんが歩いてくるから、ごま入りおはぎを十二個買っておいて。」

「いいから、買っておいて!」

「うるさい!」
姉さんは、電話を切った。アニーは笑っていた。
「十二個も?」
「半分は、お供えですよ。」
姉さんは、にこにこしていた。
そして、手の平を返したように、急に真剣な顔になった。
「ここに電話してみましょう!」
左手には携帯電話、右手には名刺を持っていた。
「今ですか?」
「はい。」
姉さんは、電話番号を中指でプッシュした。繋がった。
「もしもし…」
直ぐに電話は終わった。
「どうでした?」
「この方は、今年の二月に亡くなっています。」
「やっぱり!」
二人は、少し青ざめていた。


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