メリーゴーランドたちガソリン暴走族は、舞姫公園のレストランで食事をした後、公園の駐車場に集まっていた。 「これより、大台ケ原に帰る!集団走行は、猿狩り小次郎に感づかれるので、偽善者の人間らしく交通ルールは厳守して、各自バラバラで向かうことにする。くれぐれも猿狩り小次郎に尾行されないように。」 全員「お〜〜!」と歓声を上げた。 「一所懸命に努力して、ガソリンを燃やして炭酸ガスを撒き散らせば、その分アルバイト料が上がる!みんな交通ルールを守って、低速でも、アクセルをめいっぱいに踏みこんで、できるだけガソリンを燃やしてください!いくらガソリンを燃やしても罰則はありませんかから!」 全員「お〜〜!」と歓声を上げた。 「それじゃあ、解散!」 全員「お〜〜!」と歓声を上げた。全員、改造ガソリン自動車に乗り込んだ。メリーゴーランドは、無線機に向かって叫んだ。 「ふかせ、ふかせ〜〜!炭酸ガスを撒き散らせ〜〜!」 全車、ばらばらになって、大台ケ原に向かって、地球環境に遠慮しながら走っている、普通の自動車のように走り出した。でも、ギアは落として、目いっぱいアクセルを踏み込んでいた。白煙が勢いよく出していた。 近くを歩いている観光客が、白煙にむせていた。 「なんだ、この自動車は!?」 パトカーが近くを走っていたが、そういうことで迷惑をかけてはいけないという法律はないので、通り過ぎて行った。彼らは、信号機で止まったが、アイドリング状態で、目いっぱいアクセルを踏み込んでいた。炭酸ガスを撒き散らすことだけが、定職のない彼らには、唯一の収入源だった。彼らは、ひたむきに一所懸命だった。彼らは、俺たちをこうさせたのは、政治や世の中が悪いと思っていた。ゆえに彼らは、彼らなりのやり方で世の中に挑戦していた。自分たちが生きて行くには、地球がどうなろうと、そんなことは関係なかった。五十年後の地球や子供たちの未来よりも、自分たちの明日の糧が重要だった。 彼らは叫びながら走っていた。 「ふかせ、ふかせ〜!炭酸ガスを撒き散らせ〜!」 そして、彼らにアルバイト料を支払っているオロロン星人も、同じ頃に大台ケ原に向かっていた。大台ケ原は、オロロン星人と暴走している彼らの聖地だった。 「隊長、あのロボットの頭脳だけ抜き取ってはどうでしょう?」 「どうやって?」 「コピーして、同じタイプのロボットの新しい電子頭脳に移すんですよ。」 「なるほど…、おまえ、たまにいいことぬかすなあ〜。」 「はい、ぬかします!帰ったら、早速作戦を練りましょう。」 「そうだな、そうしよう!」 隊長は思い出していた。 「それにしても、あのロボットの歌と踊りは、最高だったなあ〜。」 「そうですねえ。」 「なんちゅうか、天才ロボットだな〜!」 「そうですねえ〜!」 「第三世界がやってくるぜ〜〜♪か。いいな〜〜!」 「いいフレーズですね〜!」 珍しく、雲は大台ケ原方面には無く、大台ケ原は遠くにはっきりと見えていた。 「大台ケ原を見てると、オロロン星を思い出すな〜〜!」 「はい!」 隊長は、突然歌いだした。
ふるさと〜いまだ〜 忘れがたく〜〜ぅ 酒さえ飲まなきゃ 優しい親父〜〜 ♪
真っ赤なスポーツカーが追い越して行った。アベック風の男女が乗っていた。 「株で買っちゃったよ、この車。どうだい乗り心地は?」 「やっぱり、外車は最高!」 「金も、がっぽり入ったことだし。とうぶん、仕事なんて馬鹿馬鹿しいことはしないで、日本中を気ままに旅行しながら走り回るか!」 「どうせ、コンピュータが株の売買をしてるんでしょ?」 「まあ、そうだけど。」 「そうね。来月から、環境税でガソリンも高くなるしね。」 「そんな、みみっちいこと言うなよ〜!」 「そうね。ぶっ飛ばして、短い青春を楽しみましょう〜!」 「レッツ・ゴ〜!」 「いよいよ日本の環境税が高くなったら、外国で走ればいいわ。」 「そうだな〜。」 「わたしたちには関係ないわ。」 「そうだな〜。俺たちのようなリッチな人間には関係ねえ話しだよな。」 「レッツ・ゴ〜!」 「そうだ!」 「どうしたの?」 「ついでに、来年の地獄夏に備えて、どっか別荘を探しに行こう!」 「それはいい考えだわ。」 「どこがいいかな〜?」 「軽井沢とか、どうかしら?」 「軽井沢ねえ、最近あそこは結構ゲリラ豪雨があるんだよな〜。」 「帰ったら、インターネットで調べましょう!」 「そうだな。もっと手ごろでいいところがあるよ。」 「土地が高くなる前に、たくさん買っておくと、きっと儲かるわ。」 「そうか、そういう手もあるなあ〜。」 「きっと儲かるよ。わたし、そういう検索は得意だから。」 「なんだか、来年からの地獄夏が楽しみになってきたなあ〜。」 二人は、楽しそうに笑い合っていた。 刻一刻と確実に、地球温暖化による人類滅亡の危機は迫っていた。
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