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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第135回   菊の花茶の効用
「葛城さん、これから天軸山に登って、双眼鏡カメラを持って人間村を撮影に行きましょう!」
「はい。」
福之助は二人を見ていた。
「また、お出かけですか、わたしを残して?」
アニーが慰めた。
「福ちゃん、すぐに帰ってくるから。」
「留守番、ちゃんと頼むよ。」
「は〜〜〜い!」
「夕飯は作らなくっていいよ。芋煮パーティに行くから。」
「は〜〜〜い!」
アニーが付け加えた。
「山田さんが来たら、明日は余ってるから配達は要らないって言っておいて。」
「は〜〜い!」
二人は出て行った。
「あ〜〜あ、また留守番か、つまんないの。」
二人が出ると、待ち構えていたようにカラスが遠くから飛んできた。姉さんは気が付いた。
「あっ、カラスの平吉だ!」
「えっ、分かるんですか?」
「分かります!」
カラスは、二人の上空を飛んで行った。
「あのやろう…」
「また邪魔しようと思っているんですかねえ?」
「今度はさせませんよ。もう凧もないし。」
「そうですね。」
見たことのある銀色のマイクロバスがやって来た。姉さんは敏感だった。
「あっ、あのマイクロバス、棺桶の連中のだわ。」
「戻ってきたのかしら?」
マイクロバスは、二人の横で止まった。運転手が尋ねた。
「あの〜、ロボットを御存知ありませんか?」
姉さんが答えた「ロボット?」
「旧型の補佐ロボットです。」
「知ってますよ。うちのロボットです。
「そのロボット、譲っていただけませんか?」
いきなりの無礼な質問に、姉さんはむっとした。
「いやですよ、そんな!」
「お金は払います。」
「駄目です!」
「五百万でどうでしょう?」
「駄目です!売り物ではありません!」
運転手は、後ろの男に命じられて発言していた。
「八百万でどうでしょう?」
「売り物ではないと、言ってるでしょう〜!」
「一千万でどうでしょう?」
「しつこいなあ〜、警察を呼びますよ!」
少し間があった。
「分かりました。」
マイクロバスは、白煙を残して去って行った。
「何なんだ、ありゃあ?」
「福ちゃんの踊りが気に入ったんじゃないですか?」
「あ〜〜〜、そういうことか!」
「また来るかも知れませんよ。」
「もう来ないでしょう。」
姉さんは、マイクロバスが去った方を振り返った。
「変なことを教えなきゃあ良かったなあ〜。」
姉さんは気になった。
「ちょっと、福之助に言って来ます。気をつけるように。」
姉さんは、急いでログハウスに戻って行った。直ぐに戻って来た。
「言ってきました。用心しろって。万が一のときは、助けを呼べって。」
天軸山公園の駐車場の方から、山田が大きな袋を持ってやってきた。
「やあ、お二人さん、お出かけですか?」
姉さんは「はい。」と答えた後、今までの出来事を説明した。
「じゃあ、わたしがしばらく居ましょう。お二人が帰ってくるまで。」
「そうですか、ありがとうございます。それではおねがいします!」
アニーも「三時までは戻ってきます。おねがいします!」と言った。
二人が、管理人の家の前を歩いていると、ちょうど管理人の鎌田が出てきた。
「こんにちわ。お出かけですか?」
二人は、ほぼ同時に「はい!」と言った。
アニーは、目をこすりながら「天軸山の上から、写真撮影をしようと思いまして。」
双眼鏡カメラを見せた。
「そうですか、天気もいいし、そうれはいいですね。」
アニーは、また目をこすった。
「目、どうしたんですか?」
「ちょっと、テレビやパソコンの見すぎなのか、乾いてしぽしぽしちゃって。」
「それは、きっと疲れ目でしょう。あっ、そうだいいものがあります。ちょっと待っててください。」
鎌田はすぐに戻って来た。お盆に、ティーカップが二つ載せてあった。
「菊の花茶です。」
「菊の花茶?」
「中国では、疲れ目やストレスに効果有りとして重宝されているものです。わたしも飲んでいますが、よく利きますよ。」
「じゃあ、遠慮なく。」
アニーは飲んだ。
「そちらの方も、どうぞ!」
姉さんも、にこにこしながら子供みたいな顔で飲んだ。
「うん、爽やかないい味!これどこに売ってるんですか?」
「インターネットです。」
鎌田が、アニーに尋ねた。
「どうですか?」
「とっても美味しかったんですけど…」
「急には効果は出ませんよ。しばらくすると出てきます。」
「どうもありがとうございます。」
二人は、礼を言うと、歩き出した。山頂近くになって、アニーが言った。
「わ〜〜〜、目が爽やかになったわ!」
「ほんとだ、なんだか気分が良くなってきたわ!」
二人には、お茶のせいなのか、高野山の景色と爽やかな森林浴のせいなのかは分からなかった。結果がよければ、そんなことはどうでもよかった。
頂上に着いた。
「アニーさん、いい眺めですね〜〜!」
「そうですね〜〜!」


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