「葛城さん、これから天軸山に登って、双眼鏡カメラを持って人間村を撮影に行きましょう!」 「はい。」 福之助は二人を見ていた。 「また、お出かけですか、わたしを残して?」 アニーが慰めた。 「福ちゃん、すぐに帰ってくるから。」 「留守番、ちゃんと頼むよ。」 「は〜〜〜い!」 「夕飯は作らなくっていいよ。芋煮パーティに行くから。」 「は〜〜〜い!」 アニーが付け加えた。 「山田さんが来たら、明日は余ってるから配達は要らないって言っておいて。」 「は〜〜い!」 二人は出て行った。 「あ〜〜あ、また留守番か、つまんないの。」 二人が出ると、待ち構えていたようにカラスが遠くから飛んできた。姉さんは気が付いた。 「あっ、カラスの平吉だ!」 「えっ、分かるんですか?」 「分かります!」 カラスは、二人の上空を飛んで行った。 「あのやろう…」 「また邪魔しようと思っているんですかねえ?」 「今度はさせませんよ。もう凧もないし。」 「そうですね。」 見たことのある銀色のマイクロバスがやって来た。姉さんは敏感だった。 「あっ、あのマイクロバス、棺桶の連中のだわ。」 「戻ってきたのかしら?」 マイクロバスは、二人の横で止まった。運転手が尋ねた。 「あの〜、ロボットを御存知ありませんか?」 姉さんが答えた「ロボット?」 「旧型の補佐ロボットです。」 「知ってますよ。うちのロボットです。 「そのロボット、譲っていただけませんか?」 いきなりの無礼な質問に、姉さんはむっとした。 「いやですよ、そんな!」 「お金は払います。」 「駄目です!」 「五百万でどうでしょう?」 「駄目です!売り物ではありません!」 運転手は、後ろの男に命じられて発言していた。 「八百万でどうでしょう?」 「売り物ではないと、言ってるでしょう〜!」 「一千万でどうでしょう?」 「しつこいなあ〜、警察を呼びますよ!」 少し間があった。 「分かりました。」 マイクロバスは、白煙を残して去って行った。 「何なんだ、ありゃあ?」 「福ちゃんの踊りが気に入ったんじゃないですか?」 「あ〜〜〜、そういうことか!」 「また来るかも知れませんよ。」 「もう来ないでしょう。」 姉さんは、マイクロバスが去った方を振り返った。 「変なことを教えなきゃあ良かったなあ〜。」 姉さんは気になった。 「ちょっと、福之助に言って来ます。気をつけるように。」 姉さんは、急いでログハウスに戻って行った。直ぐに戻って来た。 「言ってきました。用心しろって。万が一のときは、助けを呼べって。」 天軸山公園の駐車場の方から、山田が大きな袋を持ってやってきた。 「やあ、お二人さん、お出かけですか?」 姉さんは「はい。」と答えた後、今までの出来事を説明した。 「じゃあ、わたしがしばらく居ましょう。お二人が帰ってくるまで。」 「そうですか、ありがとうございます。それではおねがいします!」 アニーも「三時までは戻ってきます。おねがいします!」と言った。 二人が、管理人の家の前を歩いていると、ちょうど管理人の鎌田が出てきた。 「こんにちわ。お出かけですか?」 二人は、ほぼ同時に「はい!」と言った。 アニーは、目をこすりながら「天軸山の上から、写真撮影をしようと思いまして。」 双眼鏡カメラを見せた。 「そうですか、天気もいいし、そうれはいいですね。」 アニーは、また目をこすった。 「目、どうしたんですか?」 「ちょっと、テレビやパソコンの見すぎなのか、乾いてしぽしぽしちゃって。」 「それは、きっと疲れ目でしょう。あっ、そうだいいものがあります。ちょっと待っててください。」 鎌田はすぐに戻って来た。お盆に、ティーカップが二つ載せてあった。 「菊の花茶です。」 「菊の花茶?」 「中国では、疲れ目やストレスに効果有りとして重宝されているものです。わたしも飲んでいますが、よく利きますよ。」 「じゃあ、遠慮なく。」 アニーは飲んだ。 「そちらの方も、どうぞ!」 姉さんも、にこにこしながら子供みたいな顔で飲んだ。 「うん、爽やかないい味!これどこに売ってるんですか?」 「インターネットです。」 鎌田が、アニーに尋ねた。 「どうですか?」 「とっても美味しかったんですけど…」 「急には効果は出ませんよ。しばらくすると出てきます。」 「どうもありがとうございます。」 二人は、礼を言うと、歩き出した。山頂近くになって、アニーが言った。 「わ〜〜〜、目が爽やかになったわ!」 「ほんとだ、なんだか気分が良くなってきたわ!」 二人には、お茶のせいなのか、高野山の景色と爽やかな森林浴のせいなのかは分からなかった。結果がよければ、そんなことはどうでもよかった。 頂上に着いた。 「アニーさん、いい眺めですね〜〜!」 「そうですね〜〜!」
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