管理人の家は、天軸山公園の駐車場の隣にあった。真由美が指差した。 「あそこよ!」 沙織は、駐輪場の近くにダチョウ・カートを止めた。二人は降りた。沙織は降りると、カートの綱を近くのポールに結んだ。 「これで、よしと!」 沙織は、カートの後ろにあるアルファルファという草をダチョウに与えると、「ちょっと待っててね!」と言った。ダチョウは大きく頷いていた。 真由美は尋ねた。 「その草は、どこにあるの?」 「うちの畑で栽培してるの。人間も食べられるのよ。」 「ふ〜〜ん。」 「玉子焼きに入れると、おいしいのよ。」 「ふ〜〜〜ん。」 真由美の始めてみる草だった。 「ダチョウさんが好きなんだ?」 「大好きなの。」 「ダチョウさんは、何でも食べるの?」 「何でも食べるよ。」 真由美は、管理人の家のチャイムを押した。 「どなた〜〜?」 管理人の声だった。 「伊集院真由美で〜〜す!」 ドアが開いた。 「真由美ちゃん、どうしたの?」 「鎌田さん、芋煮パーティに、この人も連れてきていいですか?」 鎌田は、沙織を見た。 「あ〜〜、沙織ちゃんね。いいよ。」 真由美は、頭を下げた。 「どうもありがとうございます!」 沙織も頭を下げた。 「どうもありがとうございます!」 真由美は、もう一つ頼んだ。 「忍者隊月光の写真が見たいんですけど、いいですか?」 「今?」 「はい。」 「いいよ。入って見ていいよ。」 二人は「ありがとうございま〜す!」と言って、入って行った。 大きな窓の向かい側の壁いっぱいに、忍者隊月光の写真が飾られてあった。 鎌田が指差した。 「これみんな、忍者隊月光だよ。」 二人は、その写真の前に行った。沙織は驚いた。 「わ〜〜、凄い写真!」 それは、忍者隊月光が、特殊訓練をしている写真だった。 「わ〜〜、火の中を飛び越えてる!」 沙織の目は写真に釘付けになっていた。 「わ〜〜、空を飛んでるわ〜!」 鎌田が説明した。 「それはね、飛ぶときはロケットで飛んで、降りるときにはパラシュートで降りるんだよ。」 「管理人さんも、忍者隊月光なんですか?」 「まっさか〜、そんな怖いことはできないよ。ただの忍者隊月光のファン。」 「高野山にいるんですか?」 「そうだよ。今、動画を見せてあげるよ。」 鎌田は、テレビのリモコンを手に取って、ビデオのボタンを押した。 「ここに座って見なさい。」 二人は、テレビの前のソファーに座った。ビデオは十五分程度で終わった。 「わ〜〜、忍者隊月光は凄いなあ〜。」 真由美は二度目なので、そんなには驚かなかった。鎌田は台所で、不思議なことをやっていた。卵の底を割って、鍋の中に丁寧に入れていた。好奇心の強い真由美は質問した。 「鎌田さん、何やってるんですか?」 「うん、知らない?ゆで卵?」 「ゆで卵は知ってます。」 「ゆで卵はねえ、こやって卵の底を割って茹でると、殻がつかなくって簡単に剥けるんだよ。」 「え〜〜〜、そうなんですか?」 「こんどやってごらん。丸いほうが底だからね。」 「中身は出ないんですか?」 「底には空気があるところだから、大丈夫だよ。」 「じゃあ、こんどやってみます!」 「あまり割ったら駄目だよ。」 「は〜〜い!ゆで卵も芋煮のなかに入れるんですか?」 「そうだよ。」 「じゃあ、わたしたち、六時に来ればいいんですね?」 「六時においで!」 二人は、「六時に来ま〜す!と言って帰って行った。 鎌田の携帯電話が鳴った。 「はい、こちら、卍根来(まんじねごろ)ファイブ…」
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