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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第134回   ゆで卵の茹で方
管理人の家は、天軸山公園の駐車場の隣にあった。真由美が指差した。
「あそこよ!」
沙織は、駐輪場の近くにダチョウ・カートを止めた。二人は降りた。沙織は降りると、カートの綱を近くのポールに結んだ。
「これで、よしと!」
沙織は、カートの後ろにあるアルファルファという草をダチョウに与えると、「ちょっと待っててね!」と言った。ダチョウは大きく頷いていた。
真由美は尋ねた。
「その草は、どこにあるの?」
「うちの畑で栽培してるの。人間も食べられるのよ。」
「ふ〜〜ん。」
「玉子焼きに入れると、おいしいのよ。」
「ふ〜〜〜ん。」
真由美の始めてみる草だった。
「ダチョウさんが好きなんだ?」
「大好きなの。」
「ダチョウさんは、何でも食べるの?」
「何でも食べるよ。」
真由美は、管理人の家のチャイムを押した。
「どなた〜〜?」
管理人の声だった。
「伊集院真由美で〜〜す!」
ドアが開いた。
「真由美ちゃん、どうしたの?」
「鎌田さん、芋煮パーティに、この人も連れてきていいですか?」
鎌田は、沙織を見た。
「あ〜〜、沙織ちゃんね。いいよ。」
真由美は、頭を下げた。
「どうもありがとうございます!」
沙織も頭を下げた。
「どうもありがとうございます!」
真由美は、もう一つ頼んだ。
「忍者隊月光の写真が見たいんですけど、いいですか?」
「今?」
「はい。」
「いいよ。入って見ていいよ。」
二人は「ありがとうございま〜す!」と言って、入って行った。
大きな窓の向かい側の壁いっぱいに、忍者隊月光の写真が飾られてあった。
鎌田が指差した。
「これみんな、忍者隊月光だよ。」
二人は、その写真の前に行った。沙織は驚いた。
「わ〜〜、凄い写真!」
それは、忍者隊月光が、特殊訓練をしている写真だった。
「わ〜〜、火の中を飛び越えてる!」
沙織の目は写真に釘付けになっていた。
「わ〜〜、空を飛んでるわ〜!」
鎌田が説明した。
「それはね、飛ぶときはロケットで飛んで、降りるときにはパラシュートで降りるんだよ。」
「管理人さんも、忍者隊月光なんですか?」
「まっさか〜、そんな怖いことはできないよ。ただの忍者隊月光のファン。」
「高野山にいるんですか?」
「そうだよ。今、動画を見せてあげるよ。」
鎌田は、テレビのリモコンを手に取って、ビデオのボタンを押した。
「ここに座って見なさい。」
二人は、テレビの前のソファーに座った。ビデオは十五分程度で終わった。
「わ〜〜、忍者隊月光は凄いなあ〜。」
真由美は二度目なので、そんなには驚かなかった。鎌田は台所で、不思議なことをやっていた。卵の底を割って、鍋の中に丁寧に入れていた。好奇心の強い真由美は質問した。
「鎌田さん、何やってるんですか?」
「うん、知らない?ゆで卵?」
「ゆで卵は知ってます。」
「ゆで卵はねえ、こやって卵の底を割って茹でると、殻がつかなくって簡単に剥けるんだよ。」
「え〜〜〜、そうなんですか?」
「こんどやってごらん。丸いほうが底だからね。」
「中身は出ないんですか?」
「底には空気があるところだから、大丈夫だよ。」
「じゃあ、こんどやってみます!」
「あまり割ったら駄目だよ。」
「は〜〜い!ゆで卵も芋煮のなかに入れるんですか?」
「そうだよ。」
「じゃあ、わたしたち、六時に来ればいいんですね?」
「六時においで!」
二人は、「六時に来ま〜す!と言って帰って行った。
鎌田の携帯電話が鳴った。
「はい、こちら、卍根来(まんじねごろ)ファイブ…」



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