里芋畑の前の道の脇には、薄紫色のコスモスが咲き、爽やかな秋風に揺れながら、見頃を迎えていた。コスモスに混じって、秋の七草のひとつで、名月の観賞には欠かせないススキの穂が涼やかな風に揺れていた。そして、悪霊から作物を守るとされているススキが里芋畑を取り囲んでいた。 「お姉ちゃん、きれいな花だね〜。」 「コスモスって言うのよ。」 「こ・す・も・す。」 「そう、コスモス。」 「あっ、黄色いちょうちょが止まってる〜!」 「蝶々は見たことあるの?」 「うん、テレビで!」 「あっ、鳥だ〜!きれいに並んで飛んでるよ!」 「ツバメよ。」 「ツ・バ・メ。」 「そう、つばめ。」 「どこに行くの?」 「これから日本は寒くなるから、暖かいところに行くの。」 「ふ〜〜ん、頭いいな〜。」 「そう、動物はみんな、先のことを考えて頭がいいの。」 夏鳥のツバメは、成長した子を連れて飛び去り、南の国に向かって懸命に飛んでいた。 正男は、ツバメに向かって叫んだ。 「みんな、がんばれ〜〜!」 豪華で大きな高級乗用車が、後ろからやって来た。正男は、とても敏感だった。 「お姉ちゃん、危ないよ!」 「分かってる!」 平然と当たり前のように排気ガスを出して走っていた。排気ガスに驚いて蝶々が逃げて行った。そして、二人と地球に迷惑をかけながら、通り過ぎて行った。 「お姉ちゃん、じどうしゃのオナラは臭いね。」 「自動車のオナラか〜、それ面白いな〜!」 ポンポコリンは笑った。 「正男くんは、大きな自動車が嫌いなの?」 「オナラ臭いから大嫌い!」 「はっはっは、おっかしい!」 通り過ぎて行った自動車は、ダチョウ牧場の前で止まっていた。 大きな太った白人の男が出てきた。正男は驚いた。 「わ〜〜、大きいなあ〜!」 「自動車ばっかり乗ってると、ああなるのよ。」 「何か買ってるよ。」 「ダチョウの玉子焼きを買ってるね。」 ポンポコリンは、自動車の手前で止めた。 「ここで見よう!」 「うん!」 牧場では、十頭のダチョウが広い囲いのなかで走っていた。ビニールの大きなボールを蹴りあって遊んでいた。 「わ〜〜、サッカーしてる!」 「サッカーじゃなくって、ただ蹴ってるだけ。」 太った白人は、大きなダチョウの玉子焼きを買うと、直ぐに自動車に乗って、来た道を帰って行った。 「両手で持ってたよ〜。」 「ダチョウの卵は大きいのよ。」 「一人で食べるのかな〜?」 「おデブさんだから、きっと一人で食べるのよ。」 「食いしん坊だな〜。」 ダチョウ牧場には、入場料一時間千円と書いてあった。そして、入場者以外撮影禁止と書いてあった。二人が見ていると、牧場主がやってきた。 「やあ、こんにちわ!」 ポンポコリンが「こんにちわ!」と答えたので、正男も「こんにちわ〜!」と答えた。 「おっ、坊や、元気いいねえ〜!」 「今度、新しく人間村に入った、五十嵐正男くんです。」 「そ〜〜う。僕は、田口賢治っていうんだ。よろしくな!」 「たぐち・けんじさん。はい、分かりました!」 「お〜〜、頭いいなあ〜!客はいないから、柵の中に入ってもいいよ。」 ポンポコリンは思わぬ言葉に尋ね返した。 「えっ、いいんですか?」 「いいよ、いいよ。日頃いろいろと世話になってるから。」 「じゃあ、ちょっとだけ、入らせていただきます。」 「自由に触っていいよ。おとなしいから大丈夫!」 「はい!正男くん、行こう!」 ポンポコリンは、正男の手を引いた。 「わ〜〜〜、中に入ってもいいの〜〜!?」 「うん、いいのよ。」 「わ〜〜〜!」 二人が柵の中に入ると、好奇心旺盛なダチョウたちが寄ってきた。正男はびっくりした。正男は逃げて行った。ダチョウたちは面白がって、正男を追いかけだした。 「わ〜〜〜、たいへんだ〜〜!」 ポンポコリンと牧場主の田口は大笑いしていた。
|
|