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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第128回   芋煮パーティ
きょん姉さんとアニーは、空撮の映像を見ていた。アニーは、映像を止めた。
「結局、普通の景色でしたねえ。野菜工場らしきところも、お米と野菜だけだったし。」
「そうですねえ、普通の稲と野菜でしたねえ。」
「周りにも変なものはなかったし。」
「そうですねえ。」
「変なものがなくって良かったわ。」
「そうです、そうです。」
「わたしたちは、事件を探しに来たんじゃないんですから。ただの調査なんですから。」
「彼らは、平和な連中ですよ。」
「そうですね。これじゃあ、早く帰れるかも知れません。」
「えっ、そうなんですか?」
「はい。」
姉さんは、複雑な気持ちだった。
「真由美ちゃん、悲しむだろうな〜。」
「そうですね〜、仕方ありませんね。」
福之助は、壁に寄りかかって、自らに充電をしていた。
「福之助、まだ充電なの?」
「まだ完全に終わってなかったんです。」
「ああ、そう。」
「あと一時間で大丈夫です。」
「じゃあ、ゆっくりやんな。」
「はい。」
福之助は目を閉じ、動かなくなった。
ドアベルが、カランコロンと鳴った。
「誰だろう?」
「予定では、山田さんの配達は三時だから、まだ早いわね。」
「とにかく出てみます。」
姉さんはドアの前で答えた。
「どなたですか?」
「管理人の鎌田です。」
「鎌田さん?」
姉さんは、覗き窓を開けて確認した。本人だったので、ドアを開けた。鎌田が立っていた。
「何か?」
「実は、夕方の六時から、芋煮パーティをやろうと思いましてね。よろしかったら、参加しませんか?」
「えっ、わたしたちがですか?」
「はい、里芋を頂いたときには、いつもログハウスの方々を招いているんですよ。今年は、ここだけになってしまいましたけどね。後は、毎年手伝ってくれる伊集院さん兄妹たちと。」
「わ〜〜、どうしましょう?」
姉さんは喜んでいた。アニーの顔を見た。
「いいですよ。仕事は五時で終わりですから。わたしも喜んで参加させて頂きます。」
姉さんは、再び喜んだ。そして、鎌田に微笑で答えた。
「喜んで、参加させて頂きます!」
「じゃあ、六時きっかりに来て下さい。」
「管理人さんのところでいいんですね?」
「はい。」
「分かりました!」姉さんは頭を下げた。
鎌田は、静かにドアを閉め去って行った。
福之助が右目を開けて尋ねた。
「どうしたんですか?」
姉さんは、近くまで来て答えた。
「芋煮だよ、芋煮!芋煮がやって来たんだよ!」
「芋煮がやって来た?芋が歩いて来たんですか?」
「あほ!芋が歩いてやって来るか!また、留守番を頼むよ。」
「芋を食べに行くってことですか?」
「そうだよ。」
「どこまで?」
「管理人さんのところまでだよ。」
「まったく、食いしん坊だなあ〜〜、姉さんは。」
福之助は目を閉じた。
「芋煮か〜〜〜、どんなんだろうな〜?」
姉さんは、わくわくしていた。アニーは冷静に姉さんを見ていた。外では、ウサギのナカとヨシが、管理人の鎌田を追って跳ねていた。



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