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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第126回   大台ケ原の鬼
「空海の秘術で鬼が逃げたという大台ケ原というのは、どこにあるんですか?」
「三重県にあります。三重県で一番高いところです。千六百メートルくらいのところです。」
「ここから遠いんですか?」
「同じ紀伊半島なので、それはど遠くはありません。」
「どういうところなんですか?」
「日本の秘境です。日本で屋久島の次に雨の多いところです。吉野熊野国立公園のなかにあり、トウヒの立ち枯れと笹原が有名です。昔は、鬼や妖怪が棲んでいると云われていて、誰も近寄らなかった場所です。」
「鬼や妖怪?」
「はい。」
「そこは、平坦なところなんですか?」
「そうですねえ、約五キロ四方くらいの岩の多い高原ですねえ。」
「誰も住んでないんですか?」
「秘境だから誰も住んではいないと思います。遊歩道や泊まるところはあるみたいです。」
「観光地なんですか?」
「今は観光地みたいにはなっているみたいですが、やはり秘境です。」
「なんか、面白そうなところですねえ。」
「葛城さんって、男っぽいんですね。」
「はい。冒険が好きなんです。」
「一度行ったんですけど、鹿ばっかりが多くて、何もありませんよ。」
「そういうところが大好きなんです。」
「雨は多いし雷は多いし、大変なところですよ。」
「ここからは、どのくらいの時間のところなんですか?どうやって行くんですか?」
「ここからは行ったことはないので、そうですねえ…」
アニーは、パソコンの前に座り込んだ。
「ルート検索してみます。」
「すみませんねえ。」
「スタートは高野山で、目的地は大台ケ原でルート検索でいいんですね。」
「はい。」
アニーの検索は早かった。
「ここから、県道五十三号線で九十五キロ・三時間四十六分、国道百六十九号線で百十一キロ・三時間五十五分、国道三百九号線で百十キロ・三時間五十六分です。」
「どのコースも、約四時間ですか。」
「そうです。」
「けっこう遠いんですねえ。」
「山ですからねえ。あそこは、よくユーフォーも目撃されるんですよ。」
「えっ、そうなんですか?」
唐突に福之助が、二人の近くに来た。スッチブックを持っていた。
「何ですか、この絵は?」
福之助は、姉さんのスケッチブックを開いて見せた。
「なんだかさっぱり分からないや。これ絵ですか?」
姉さんは怒った。
「なんだよ、人の絵を黙って見て!」
「すみません!」
「絵ですか?とは何だよ!失礼な質問だなあ〜。絵だよ、絵!」
「な〜んだ、絵なんですか。何の絵なんですか?」
「何の絵?またまた失礼な質問だなあ〜!見りゃあ分かるだろう。風景だよ、風景!」
「風景?どこが?」
「どこが?またまたまた失礼な質問だなあ〜!もういい、人の絵を勝手に見るな!」
「はい!」
「まったく失礼な奴だなあ〜!」
「分かった!抽象画ってやつですね!」
「ますます、失礼な奴だなあ〜!」
「すみません。」
福之助は、アニーのスケッチブックに手を伸ばした。アニーは怒った。
「勝手に人の絵を見ないでよ!」
「はい!すみません!」
福之助は、アニーの厳しい表情にびっくりした。
アニーは、メモリーチップをテレビに差し込んだ。
「葛城さん、空撮の映像を見ましょう。」
「はい。」



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