「空海の秘術で鬼が逃げたという大台ケ原というのは、どこにあるんですか?」 「三重県にあります。三重県で一番高いところです。千六百メートルくらいのところです。」 「ここから遠いんですか?」 「同じ紀伊半島なので、それはど遠くはありません。」 「どういうところなんですか?」 「日本の秘境です。日本で屋久島の次に雨の多いところです。吉野熊野国立公園のなかにあり、トウヒの立ち枯れと笹原が有名です。昔は、鬼や妖怪が棲んでいると云われていて、誰も近寄らなかった場所です。」 「鬼や妖怪?」 「はい。」 「そこは、平坦なところなんですか?」 「そうですねえ、約五キロ四方くらいの岩の多い高原ですねえ。」 「誰も住んでないんですか?」 「秘境だから誰も住んではいないと思います。遊歩道や泊まるところはあるみたいです。」 「観光地なんですか?」 「今は観光地みたいにはなっているみたいですが、やはり秘境です。」 「なんか、面白そうなところですねえ。」 「葛城さんって、男っぽいんですね。」 「はい。冒険が好きなんです。」 「一度行ったんですけど、鹿ばっかりが多くて、何もありませんよ。」 「そういうところが大好きなんです。」 「雨は多いし雷は多いし、大変なところですよ。」 「ここからは、どのくらいの時間のところなんですか?どうやって行くんですか?」 「ここからは行ったことはないので、そうですねえ…」 アニーは、パソコンの前に座り込んだ。 「ルート検索してみます。」 「すみませんねえ。」 「スタートは高野山で、目的地は大台ケ原でルート検索でいいんですね。」 「はい。」 アニーの検索は早かった。 「ここから、県道五十三号線で九十五キロ・三時間四十六分、国道百六十九号線で百十一キロ・三時間五十五分、国道三百九号線で百十キロ・三時間五十六分です。」 「どのコースも、約四時間ですか。」 「そうです。」 「けっこう遠いんですねえ。」 「山ですからねえ。あそこは、よくユーフォーも目撃されるんですよ。」 「えっ、そうなんですか?」 唐突に福之助が、二人の近くに来た。スッチブックを持っていた。 「何ですか、この絵は?」 福之助は、姉さんのスケッチブックを開いて見せた。 「なんだかさっぱり分からないや。これ絵ですか?」 姉さんは怒った。 「なんだよ、人の絵を黙って見て!」 「すみません!」 「絵ですか?とは何だよ!失礼な質問だなあ〜。絵だよ、絵!」 「な〜んだ、絵なんですか。何の絵なんですか?」 「何の絵?またまた失礼な質問だなあ〜!見りゃあ分かるだろう。風景だよ、風景!」 「風景?どこが?」 「どこが?またまたまた失礼な質問だなあ〜!もういい、人の絵を勝手に見るな!」 「はい!」 「まったく失礼な奴だなあ〜!」 「分かった!抽象画ってやつですね!」 「ますます、失礼な奴だなあ〜!」 「すみません。」 福之助は、アニーのスケッチブックに手を伸ばした。アニーは怒った。 「勝手に人の絵を見ないでよ!」 「はい!すみません!」 福之助は、アニーの厳しい表情にびっくりした。 アニーは、メモリーチップをテレビに差し込んだ。 「葛城さん、空撮の映像を見ましょう。」 「はい。」
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