今日は、我々の祖先が地球に来て、二千五十年の記念すべき日である。ここ高野山は、我々の祖先が、最初に地球に降り立った記念すべき場所である。」 みんなは、黙って聞いていた。 「そして、憎っくき空海の摩訶不思議なる密教秘術と法力剣によって、われわれの龍神が退治され、我々が大台ケ原に追われた『オロロンの屈辱の日』を決して忘れるな!」 みんなは、「お〜〜!」と、歓声を上げた。 「昨夜の『オロロンへの祈りの儀式』は、無事に終了した。みんな、ありがとう!これより、大台ケ原に帰還する!」 みんなは、「お〜〜!」と、歓声を上げた。」 「邪悪貪欲の人類に死を!」 みんなは、「お〜〜!」と、歓声を上げた。」
「葛城さん!見て見て!彼らが棺桶を担いで出てきたわ!」 姉さんは、急いで窓から見た。 「帰るのかしら?」 視力のいい姉さんは、担がれた棺桶の中を見ていた。 「あのときは、よく見えなかったんだけど、棺桶の中には龍の絵が描いてあるわ。」 「なんだか、そうみたいですね。」 「ひょっとすると、彼らの神様かも知れませんね。」 「龍の神様…」 「昨夜の龍の玉伝説と関係あるのでは?」 「龍の玉伝説の前には、空海の龍退治伝説というのがあります。」 「空海の龍退治伝説?」 「なんでも、高野山には村人を苦しめる、黒い邪悪な龍が棲んでいて、それを、空海が密教の秘術で退治したというものです。その後、もともといた緑の龍が帰ってきて、空海の守り神になったとか。」 「それが、龍の玉?」 「はい。」 「邪悪な龍を神に祭っていた鬼たちは、大台ケ原に逃げたそうです。」 「それは面白い話しですねえ!」 「伝説とか神話とか好きなんですか?」 「はい、御伽噺とか伝説とか神話とか、大好きです。」 「不思議なものが好きなんですね?」 「はい!」 彼らは、銀色の宇宙艇のようなマイクロバスに乗り込むと、去って行った。 「まるで、空でも飛びそうな自動車ですねえ。」 「そういう感じですねえ。」 「どこに帰って行くんでしょうかねえ?」 「さ〜〜あ?」 「ひょっとしたら、大台ケ原に帰った行ったのでは?」 「それは面白い!」 「不思議な人たちでしたねえ。」 「そうですね〜。」 「この高野山も不思議だらけだけど、来る人も不思議な人たちばかりですねえ〜。」 「いちばん不思議なのは、葛城さんかな?」 「え〜〜〜〜?アニーさんこそ!」 「えっ、そうですか〜?」 二人は、顔を見合わせて笑った。福之助は手を休め、お地蔵さんのように黙って二人を見ていた。
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