その頃、猿人間キーキーたちは、キーキー言いながら、御飯のオカズに網で焼いた御殿(おど)川で獲れた川魚(あまご)とカブの一夜漬けを食べていた。 「やっぱり、カブは最高だなあ〜。」 カブを美味しそうに、かぶかぶと食べていた。 「そうだな〜、高野山で取れたカブは最高だな〜。」 「なんだ、あんたもカブが好きなのかい?」 「あ〜、大好きだよ!」 「不思議なもんだなあ、俺たちみんな好きだなんて!」 「俺たち、似てるんだな〜〜。」 「ここはいいな〜、頭の変な連中がいなくって!」 「下界の連中は、頭がおかしいからなあ〜。特に警官は!」 「おかしいって、どうしたんだい?」 「一円玉を拾ったから、俺、嘘をつくのはいけなから、正直に交番に届けたんだよ。そしたら、何と言ったと思う?」 「褒められた?」 「とんでもない!怒られちゃったよ!」 「どうして?」 「忙しいのに、一円玉くらいで、いちいち届けるな!って。ひどい話だろう?」 「そりゃあ、ひどいなあ〜。学校で習ったよな、お金を拾ったら、ちゃんと届けろ!って。」 「そうだよな〜。嘘は泥棒の始まり!まったく、どうなってるんだ、世の中?」 「正しいことをやる警官が、公然と間違ったことをやっているだからな〜。まったくひどい話しだよ〜。」 「この国は、もう駄目だな、自分勝手な連中ばかりで!」 今まで、黙って聞いていた猿人間キーキーも話に加わった。 「俺なんか、もっとひどいよ。」 「もっとって?」 「一円玉じゃなくって、十円玉だよ。」 「ほんとかよ〜〜〜!?」 「俺、正しいよな?間違っていないよな?」 「その通り、あんたは正しい!間違っていない!」 「まったく、下界は間違った変な連中ばっかだよ。嘘をついたら、即刻罰則だよ!」 「一円を笑うものは一円に泣く!一円を馬鹿にしちゃあ、いけないよ!」 「俺なんか、横断歩道で手を上げて渡ろうとしたら、タクシーが止まってよ。」 「で、どうしたんだよ?」 「紛らわしいことするな〜!って怒鳴られちゃった!」 「え〜〜〜、そりゃあ、ひどい話しだな〜〜!」 「あの運ちゃん、心の病気だな!と思って、黙ってたよ。」 「まったく、気が狂ってる世の中だよな〜。下界は変な連中ばっかだよ。」 「下界は、うつ病みたいな連中ばっかりだな!」 「下界では、うつ人間たちが、うつつを抜かしているからな〜。」 「はっはっはっは、それは傑作だ!」 下らない駄洒落に大喜びする彼らであった。温泉ホームレスの三人は違う話しをしていた。 「今年は、熱中症で死ぬかと思ったよ〜!」 「俺もだよ。」 「俺もだよ。自動車は、突然火を噴いて燃え上がるし。」 「自動車には近づかないほうがいいぞ。」 「道路の脇の歩道は、歩かないほうがええぞ!」 「そうだな〜。でも、もう危険な下界に戻ることはないだろう。」 「ありゃあ、走る棺桶だな。」 「まったくだ。」 「下界では、今も沢山の棺桶が走っていると思うと、ぞっとするよ。」 「お〜〜、気持ち悪い!」 「来年は、もっと熱中症で死ぬだろうな〜。」 「お〜〜、怖い怖い!」 「高野山は、下界と比べると涼しいなあ〜。」 「まるで天国だな〜。」 「ほんとにいいところだな〜ここは、近くには温泉も湧いてるし。」 「ほんとにいいところだ!」 彼らは、合計十人の集団だった。 地主がやってきた。 「やってるね〜、君たち!」 「やあ、地主さん!」 「開墾は進んでいるみたいだねえ〜。」 「はい!開墾したら、ほんとうにくれるんですか、この土地を?」 「ああ、あげるよ。荒れ果てて、困ってたんだよ。助かったよ!」 「この辺りの草は、ほとんど刈ってあります。不便なので、道も作りました。」 「ああ、大したもんだ!」 「地主さんが、いろいろな機械を貸してくれたもので、かなり進んでますよ。」 「そのようだね。何か足りない物があったら言ってくれ。持ってくるから。」 「ありがとうございます。」 「いつまでも、テントじゃあ辛いでしょう。もうすぐ、プレハブの小屋を持ってくるよ。」 「いろいろとありがとうございます!今のところ、テントでも大丈夫です。地主さんから頂いた虫除けの蚊帳(かや)もあるし。」 「持ってきたら、自分たちで組み立ててね。」 「はい!」「は〜〜い!」 「君たちは、こうやって話していると、いい奴なんだけどな〜。」 「そうなんです、わたしたち普通なんです。世間の連中が間違っているんです。」 「そうかも知れんな。」 「知れんなじゃなくって、そうなんです!」 地主は、それ以上は逆らわなかった。 「そうだな!君たちは正しい!また来るよ!」 鼻を噛みつかれたら大変なので、地主はさっさと帰って行った。 一人の男が、『極限の正義』という本を読んでいた。みんなに提案した。 「俺たちを、極限正義党と名づけよう!」 みんなは、「賛成〜〜!」と言って、拍手した。彼らは常に、単純明快だった。複雑な、地球温暖化の風が、強くなったり弱くなったりを繰り返して吹いていた。
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