『迷惑こそ我らが快感!』の御旗を立てた、暴走族メリーゴーランドたちは、彼らの呼び名であるところの、暗黒ヶ原に向かっていた。 「ふかせ、ふかせ〜〜!炭酸ガスを撒き散らせ〜〜!」 暗黒ヶ原には、既に八台のガソリン自動車がアイドリング状態で止まっていた。 メリーゴーランドたち十台が新たに到着すると、リーダーのメリーゴーランドは、自動車を降りて叫んだ。 「エンジンを止めるな〜〜、ふかせ、ふかせ〜〜!」 みんなは黙って従った。リーダーは、いつもの少し高い場所に立った。みんなは、エンジンをかけたままで、自動車の外に立っていた。 「今年の最高気温は、四十六度二分。熱中症による死者は、一万十八人!みんな、ついに一万人を突破したぞ〜〜!』 拍手が起きた。 「来年は、今年以上の気温上昇と死者を願って、みんな頑張ろう!」 拍手が起きた。 「迷惑こそ我らが快感!迷惑こそ、我らが誇り!偽善者たちを地獄に葬れ!」 拍手が起きた。 「みんな、心配するな!我々は、焼け死ぬ前に、彼らが助けてくれる!」 みんなは、『お〜〜!』と歓声を上げた。 近くで、猿人間キーキーの十人の集団が、キャンプをしていた。 「リーダー、変な奴が、こっちにやって来ます!」 「なんだ?」 その変な奴は、リーダーの前で立ち止まった。 「君たち、いったい何をやってるんだ?」 「見れば分かるでしょう?ただの集会ですよ。」 「爆音を立てて、エンジンをかけたままで排気ガスを出して、迷惑なんだよ。」 「勝手だろう!自由だろう!」 「勝手?自由?」 「ああ、みんな、排気ガスを出して、勝手に自由に走っているじゃないか?」 「だから、みんなは、遠慮しながら走っているんです。」 「結局、走ってるんだから、同じじゃないか。」 「人に迷惑をかけてはいけません!」 「だから、みんなも同じように迷惑をかけてるの!」 「そんなことはない!君たちのように迷惑をかけてはいません!」 「日本は自由主義なの!」 「自由主義でも、他人に迷惑をかけたら駄目でしょう!他人に迷惑をかける自由はありません!」 「あんた、馬鹿じゃないの?そういうのを、単細胞って言うんだよ!」 「とにかく、迷惑だから、すぐにエンジンを切ってくれない?」 「いやだね!」 その男は、いきなりメリーゴーランドの鼻を噛みつこうとした。彼は、危うく避けた。 「なにするんだ、このやろう!」 近くの仲間が叫んだ。 「リーダー、こいつ、切れると噛みつく猿人間キーキーだ!」 「そうらしいな。」 「ぼこぼこにしましょうか?」 ヘリコプターのローター音が聞こえてきた。一人の男が叫んだ。 「リーダー!猿狩り小次郎です!」 リーダーが叫んだ。 「みんな、高野山に逃げろ!」 みんなは、素早く自動車に乗り込むと、高野山に向かって走り出した。猿人間キーキーは、頭脳警察の小次郎に向かって手を振り叫んでいた。 「高野山に逃げたぞ〜!捕まえて、ぼこぼこにして二度と走れなくしてやれ〜!」 いつものように、風が吹き草花は風に揺れ、雲は流れていたが、地球温暖化による人類滅亡の日は、刻一刻と確実に迫っていた。
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