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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第121回   メリーゴーランド vs 猿人間キーキー
『迷惑こそ我らが快感!』の御旗を立てた、暴走族メリーゴーランドたちは、彼らの呼び名であるところの、暗黒ヶ原に向かっていた。
「ふかせ、ふかせ〜〜!炭酸ガスを撒き散らせ〜〜!」
暗黒ヶ原には、既に八台のガソリン自動車がアイドリング状態で止まっていた。
メリーゴーランドたち十台が新たに到着すると、リーダーのメリーゴーランドは、自動車を降りて叫んだ。
「エンジンを止めるな〜〜、ふかせ、ふかせ〜〜!」
みんなは黙って従った。リーダーは、いつもの少し高い場所に立った。みんなは、エンジンをかけたままで、自動車の外に立っていた。
「今年の最高気温は、四十六度二分。熱中症による死者は、一万十八人!みんな、ついに一万人を突破したぞ〜〜!』
拍手が起きた。
「来年は、今年以上の気温上昇と死者を願って、みんな頑張ろう!」
拍手が起きた。
「迷惑こそ我らが快感!迷惑こそ、我らが誇り!偽善者たちを地獄に葬れ!」
拍手が起きた。
「みんな、心配するな!我々は、焼け死ぬ前に、彼らが助けてくれる!」
みんなは、『お〜〜!』と歓声を上げた。
近くで、猿人間キーキーの十人の集団が、キャンプをしていた。
「リーダー、変な奴が、こっちにやって来ます!」
「なんだ?」
その変な奴は、リーダーの前で立ち止まった。
「君たち、いったい何をやってるんだ?」
「見れば分かるでしょう?ただの集会ですよ。」
「爆音を立てて、エンジンをかけたままで排気ガスを出して、迷惑なんだよ。」
「勝手だろう!自由だろう!」
「勝手?自由?」
「ああ、みんな、排気ガスを出して、勝手に自由に走っているじゃないか?」
「だから、みんなは、遠慮しながら走っているんです。」
「結局、走ってるんだから、同じじゃないか。」
「人に迷惑をかけてはいけません!」
「だから、みんなも同じように迷惑をかけてるの!」
「そんなことはない!君たちのように迷惑をかけてはいません!」
「日本は自由主義なの!」
「自由主義でも、他人に迷惑をかけたら駄目でしょう!他人に迷惑をかける自由はありません!」
「あんた、馬鹿じゃないの?そういうのを、単細胞って言うんだよ!」
「とにかく、迷惑だから、すぐにエンジンを切ってくれない?」
「いやだね!」
その男は、いきなりメリーゴーランドの鼻を噛みつこうとした。彼は、危うく避けた。
「なにするんだ、このやろう!」
近くの仲間が叫んだ。
「リーダー、こいつ、切れると噛みつく猿人間キーキーだ!」
「そうらしいな。」
「ぼこぼこにしましょうか?」
ヘリコプターのローター音が聞こえてきた。一人の男が叫んだ。
「リーダー!猿狩り小次郎です!」
リーダーが叫んだ。
「みんな、高野山に逃げろ!」
みんなは、素早く自動車に乗り込むと、高野山に向かって走り出した。猿人間キーキーは、頭脳警察の小次郎に向かって手を振り叫んでいた。
「高野山に逃げたぞ〜!捕まえて、ぼこぼこにして二度と走れなくしてやれ〜!」
いつものように、風が吹き草花は風に揺れ、雲は流れていたが、地球温暖化による人類滅亡の日は、刻一刻と確実に迫っていた。


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