「ヨコタン、後はいいわ。わたしに任せて!」 「そうね、一通り説明しておいたわ。後は頼むわ。」 ヨコタンは、母親に言った。 「五十嵐さん、何か分からないことがあったら、彼女に聞いてください。」 「はい、分かりました。」 正男がヨコタンを見上げた。 「お姉ちゃん、行っちゃうの?」 「また明日、逢おうね。」 「うん!」 ヨコタンは、正男に「ばいば〜い!」と言うと、正男も「ばいば〜い!」と言い返した。ヨコタンは出て行った。 紋次郎が、ポンポコリンの部屋から出てきた。 「運び終わりました。他に御用は?」 ポンポコリンは、考え込んだ。 「とにかく、ここで待ってて、用があるかも知れないから。」 「はい。」 正男が、紋次郎に寄ってきた。 「ぅわ〜〜〜ぁ、凄いなあ〜〜!」 正男は、紋次郎を見上げていた。 「もんちゃん、触ってもい〜い?」 「どうぞ。」 正男は、恐る恐る触った。 「わ〜〜〜、鉄なの〜?」 「ジュラルミンというものです。」 「じゅらるみん…?」 「鉄みたいなものです。鉄よりも軽いものです。」 「すごいなあ〜〜。」 母親が叱った。 「正男、邪魔になるから、こっちに来なさい!」 正男は、黙って紋次郎から離れた。 ポンポコリンが、説明を始めた。 「明日は、八時に集会所に集合します。それまでに、朝食を済ませておいてください。朝食はどうしますか?もし、自分で作るようでしたら、ご希望のものを調達しますけど?人間村の食堂もやってますけど。」 「スーパーとかは、あるんですか?」 「スーパー高野(たかの)というのがありますが、かなり遠いです。二キロくらいかなあ。近くだったら、花谷医院という病院の裏に、ココストアぜにやというコンビニがあります。」 「ここからは遠いんですか?」 「遠くはありません。十五分ほどの距離です。」 「そこに行ってみようかなあ〜。」 「行きますか、お金はあります?」 「今日と明日の分くらいだったら、まだあります。」 「そうですか。じゃあ、どうしようかなあ…」 「分かりにくいんですか?」 「ちょっとね。そうだ、紋次郎に頼もう!」 ポンポコリンは、紋次郎を見た。 「紋次郎、ココストアぜにやまで連れて行ってくれない?」 紋次郎は、持ってましたとばかりに返事をした。 「分かりました!」 母親は、正男に「ここで待ってなさい。すぐに帰ってくるから。」と言った。 正男は、「いやだよ〜〜、僕も行きたいよ〜!」と、だだをこねた。 「子供には遠いから、ここにいなさい!」 「僕も行きたいよ〜!」 紋次郎が、提案した。 「だったら、正男君はリアカーに乗って行きましょう!」 ポンポコリンも同意した。 「それはいいわね。でも、雨が降ってるんじゃないの?」 「もう止んでいます。」 「でも、また降ってくるかも知れないから、傘を持って行ったほうがいいわ。」 ポンポコリンは、紋次郎に傘を三本手渡した。 「わたしは、防水なのでいいです。」一本返した。 「ああ、そうなの。」 「じゃあ、行ってきます。」 紋次郎は軽く敬礼をした。 「はい、正男君、リアカーに乗ってください。」 正男は、「わ〜〜い!」と言って、リアカーに乗り込んだ。 紋次郎は、母と子を連れて出て行った。紋次郎は、集会所に入って報告した。 「保土ヶ谷さんはいますか?」 保土ヶ谷龍次が出てきた。 「おう、紋次郎くん、何だね?」 「今から、五十嵐さんたちと一緒に、ココストアぜにやまで、買い物に行ってきます。」 「ああ。そう。雨は降ってないの?」 「もう止みました。」 「じゃあ、頼むよ!」 「分かりました!」 紋次郎たちは、コンビニに向かった。 「わ〜〜〜い、紋ちゃんのリアカーは楽しいなあ〜!」 先ほどまで降っていた雨は、母と子の気持ちのように、すっかりと止んでいた。
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