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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第12回   紋ちゃんのリアカー
「ヨコタン、後はいいわ。わたしに任せて!」
「そうね、一通り説明しておいたわ。後は頼むわ。」
ヨコタンは、母親に言った。
「五十嵐さん、何か分からないことがあったら、彼女に聞いてください。」
「はい、分かりました。」
正男がヨコタンを見上げた。
「お姉ちゃん、行っちゃうの?」
「また明日、逢おうね。」
「うん!」
ヨコタンは、正男に「ばいば〜い!」と言うと、正男も「ばいば〜い!」と言い返した。ヨコタンは出て行った。
紋次郎が、ポンポコリンの部屋から出てきた。
「運び終わりました。他に御用は?」
ポンポコリンは、考え込んだ。
「とにかく、ここで待ってて、用があるかも知れないから。」
「はい。」
正男が、紋次郎に寄ってきた。
「ぅわ〜〜〜ぁ、凄いなあ〜〜!」
正男は、紋次郎を見上げていた。
「もんちゃん、触ってもい〜い?」
「どうぞ。」
正男は、恐る恐る触った。
「わ〜〜〜、鉄なの〜?」
「ジュラルミンというものです。」
「じゅらるみん…?」
「鉄みたいなものです。鉄よりも軽いものです。」
「すごいなあ〜〜。」
母親が叱った。
「正男、邪魔になるから、こっちに来なさい!」
正男は、黙って紋次郎から離れた。
ポンポコリンが、説明を始めた。
「明日は、八時に集会所に集合します。それまでに、朝食を済ませておいてください。朝食はどうしますか?もし、自分で作るようでしたら、ご希望のものを調達しますけど?人間村の食堂もやってますけど。」
「スーパーとかは、あるんですか?」
「スーパー高野(たかの)というのがありますが、かなり遠いです。二キロくらいかなあ。近くだったら、花谷医院という病院の裏に、ココストアぜにやというコンビニがあります。」
「ここからは遠いんですか?」
「遠くはありません。十五分ほどの距離です。」
「そこに行ってみようかなあ〜。」
「行きますか、お金はあります?」
「今日と明日の分くらいだったら、まだあります。」
「そうですか。じゃあ、どうしようかなあ…」
「分かりにくいんですか?」
「ちょっとね。そうだ、紋次郎に頼もう!」
ポンポコリンは、紋次郎を見た。
「紋次郎、ココストアぜにやまで連れて行ってくれない?」
紋次郎は、持ってましたとばかりに返事をした。
「分かりました!」
母親は、正男に「ここで待ってなさい。すぐに帰ってくるから。」と言った。
正男は、「いやだよ〜〜、僕も行きたいよ〜!」と、だだをこねた。
「子供には遠いから、ここにいなさい!」
「僕も行きたいよ〜!」
紋次郎が、提案した。
「だったら、正男君はリアカーに乗って行きましょう!」
ポンポコリンも同意した。
「それはいいわね。でも、雨が降ってるんじゃないの?」
「もう止んでいます。」
「でも、また降ってくるかも知れないから、傘を持って行ったほうがいいわ。」
ポンポコリンは、紋次郎に傘を三本手渡した。
「わたしは、防水なのでいいです。」一本返した。
「ああ、そうなの。」
「じゃあ、行ってきます。」
紋次郎は軽く敬礼をした。
「はい、正男君、リアカーに乗ってください。」
正男は、「わ〜〜い!」と言って、リアカーに乗り込んだ。
紋次郎は、母と子を連れて出て行った。紋次郎は、集会所に入って報告した。
「保土ヶ谷さんはいますか?」
保土ヶ谷龍次が出てきた。
「おう、紋次郎くん、何だね?」
「今から、五十嵐さんたちと一緒に、ココストアぜにやまで、買い物に行ってきます。」
「ああ。そう。雨は降ってないの?」
「もう止みました。」
「じゃあ、頼むよ!」
「分かりました!」
紋次郎たちは、コンビニに向かった。
「わ〜〜〜い、紋ちゃんのリアカーは楽しいなあ〜!」
先ほどまで降っていた雨は、母と子の気持ちのように、すっかりと止んでいた。



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