20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第119回   ひたひたぴっちゃんの涙
隊長は、望郷の歌を歌い終えると、ひたひたと〜、望郷の念がやってきた。
「ひたひたぴっちゃん、ひたぴっちゃん!」
一粒の涙が頬をつたわり落っこちた。
「どうしたんですか、隊長?」
隊長は、恥ずかしい涙を隠すために、くるりんと横方向に裏返った。
「どうしたもこうしたもあるもんか、黙れ!」
「はい!」
隊長は、いつもの怒るごまかしであった。隊長は、宇宙インターネット・パソコンの前に、とぼとぼの足取りで座り込んだ。カチャカチャカチャ…
指マウスがクルクル回っていた。
「お〜〜〜い、おいおいおいおい、おろろんおろろん!」
隊長は本気で泣き出しちゃった。
「ウサギ美味しい〜古ちゃと〜〜〜♪子ブタ釣りし〜きゃの川〜〜♪」
隊長は、アンドロメダのオロロン星の故郷の風景を見ていた。見ながら泣いていた。それは、ひたひたぴっちゃん、ひたぴっちゃんの涙であった。
「隊長!隊長の小説『我輩は若干猫である』が、宇宙インターネットで大うけだそで、おめでとうございます!」
「ありがとう!実はなあ、あれは、日本の有名な小説を手本にして書いたんだよ。」
「そうだったんですか!」
「内緒だぞ!」
「はい!」

ログハウスの外では、踊りが終わり、彼らは天に向かって両手をかざし、祈りを始めた。

 心はどこにありますか? アンドロメダの宇宙にあります
 心はどこにありますか? ここにはなく アンドロメダの宇宙にあります
 わたしの心は アンドロメダの宇宙にあります
 喜びも悲しみも憎しみも アンドロメダの宇宙にあります
 喜びは ここにはありません アンドロメダの宇宙にあります
 悲しみは ここにはありません アンドロメダの宇宙にあります
 憎しみは ここにはありません アンドロメダの宇宙にあります
 わたしの心は 仲間の心であり アンドロメダの宇宙にあります

アニーは、その光景を見ていた。
「見て見て!何か祈りみたいなものを始めたわ!」
姉さんも振り向いた。
「ほんとだ〜、何だろう?」
「ああいうのは初めて見たわ。」
「ほんとうに宇宙人なのかも知れませんね?」
「まさか〜〜?」
福之助が、とまとプリンを持って来た。
「どうぞ〜〜!」
「おっ、これが、とまとプリンか〜。」
「わ〜、福ちゃん、上手ねえ〜。」
「蜂蜜も入ってるなあ〜?」
「はい。」
「かなり、上達したなあ〜!」
「クワイタ、ガ〜イ!」
「はっ?」
「大した奴だ!って言ったんです。」
「あ〜、そうですか。じゃあ、わたしも、クワイタ、ガ〜イ!」
「ありがとうございます!」
「見て見て、今度は泣いてるわ。」
「あっ、ほんとだ!何でしょう?」
「何か言いながら泣いてるわ!」
「福之助、音を集音マイクで拾ってみろ。」
「はい。」
「何て泣いてるの?」
「ひたひたぴっちゃん、ひたぴっちゃん。と泣いています。今、再現します。」
福之助の胸のスピーカーから流れた。

 ひたひたぴっちゃん ひたぴっちゃん お〜いおいおい おろろんおろろん

「変な泣き方だなあ〜」
「初めて聞くわ。」
「やっぱり、宇宙人かしら?」


← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 31446