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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第118回   最低のクイズ番組
きょん姉さんとアニーは、既に食事をしていた。ドアが開き福之助が帰ってきた。
「ただいま〜!」
姉さんが答えた。
「食べてるよ。とっても美味しいよ。」
「そうですか。ありがとうございます。」
「福ちゃん、美味しいわ。栗御飯、よく炊けてたわ。」
「そうですか、それは良かった!」
姉さんは、美味しそうに栗御飯を食べていた。
「踊りは、もう終わったのかい?」
「はい。もう終わりました。」
「どうだった?」
「姉さんの言った通り、びっくりしていました。大うけしました。」
「そうかい、やっぱりな!」
テレビが映っていた。姉さんたちは、珍しく娯楽番組を見ていた。
「姉さん珍しいですねえ。こんな低俗な番組を見るなんて。」
「あっ、そうだな。チャンネルを切り替えるのを忘れていたんだよ。」

 『さ〜〜〜、今年の最高気温は、何度だったでしょ〜〜〜!?』

福之助は、チャンネルを変えようとした。姉さんは止めた。
「ちょっと待て!」
「えっ?」
「答えを見てから。」
「ああ、そうですか。」

 『四十六度二分でした〜〜〜!続いて熱中症の死者は何人だったでしょ〜〜!?』

福之助は不愉快な顔になった。
「人の不幸を番組にするなんて、低俗な番組だなあ〜。」
福之助は、チャンネルを変えようとした。また姉さんは止めた。
「ちょっと待て!」
「こんなのを見るんですか?」
「この答えだけ。」

 『一万十八人でした〜〜〜〜!』

姉さんは驚いた。
「え〜〜、そんなに!」

 『両方当った方の中から、抽選で五人の方に、一人百万円を差し上げま〜〜す!』
 『もし、五人に満たない場合には、五百万円を分けて差し上げま〜〜す!』

「福之助、もういいよ!」
福之助は、チャンネルを変えた。
「こんなので、お金を頂いて、良心が痛まないんでしょうかねえ?」
「ほんとだなあ。」
「まったく、最低の番組ですね!」
「こういう番組を見る人間がいるから、こういう番組が成り立っているんだよ。」
「こういうのを見るなんて、人間の屑です!」
「今日は、やけに厳しいねえ。」
「こんな人間のために働いていると思うと、情けなくって!」
アニーは、黙々と食べていた。姉さんは話題を変えた。
「あの連中、地球人だった?」
「地球人だったって、当たり前じゃないですか。」
「耳は尖ってなかった?」
「普通の耳でした。」
「小指は動いてた?」
「そこまでは見ませんでした。どうしてですか?」
「宇宙人は、小指が動かないんだよ。テレビのインベーダーという番組では。」
「な〜〜んだ、テレビの話しですか。宇宙人なんていませんよ。」
「そうかなあ?」
「そんなのがいたら大変ですよ。」
「ひょっとすると、いるかもよ。」
「そんな馬鹿な話しは止めてください。あっ、そうだ!デザートを作ります!」
「トマトのデザート?」
「そうです!とまとプリンです。」
「とまとプリン?それは楽しみだなあ〜。」
姉さんは、高野山放送に切り替えた。

 『昨夜、十時十五分頃、天軸山上空に、緑色の光る物体が現れました。』
 『これが、その映像です。』
 『光る物体は、稲光と落雷音と共に消えたそうです。』

「葛城さん!昨日の落雷と、緑色の球体のことじゃない?」
「そうですねえ〜〜!」
アニーは考え込んだ。
「確か、緑色の球体の後に落雷でしたよねえ?」
「はい。」
「その球体の前が、彼らの棺桶運び?」
「はい。それが何か?何か関係が?」
アニーは深く考え込んだ。
「ひょっとしたら、深い関係があるのかも知れません…」


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