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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第115回   第三世界の歌
ログハウスの中では、二人の男がテレビの温暖化地球危機のニュースを聞きながら、窓の外で踊っている仲間を見ていた。
「わっはっはっは!愚かな地球人どもよ。二酸化炭素で全滅だ〜!」
脇の者も同じように笑っていた。
「これで、わざわざ二酸化炭素をばら撒く必要がなくなりましたな〜、隊長!」
「わっはっはっは!そういうことだな。」
「あと五十年もしたら、地球人は全滅ですな〜。五十年の辛抱ですな〜。」
「案外と、もっと早いかもよ。」
「どんどん増えて、森林も減っていますから、時間の問題でしょう。」
「そういうことだな。あ〜愉快、愉快!」
「焼け死ぬか、酸欠で窒息死するか、どっちかですな〜。」
「そういうことだな、楽しみだなあ〜。おまえ、どっちだと思う?」
「今現在、熱中症で死んでいますから、このまま焼け死ぬんじゃないですか?」
「俺は、酸欠で窒息死に賭けよう!」
「わたしは、熱中症に賭けます。」
「武器も使わずに地球人を全滅させれば、きっと俺たちは表彰されるぞ!」
「そうですな〜!」
「こりゃあ、実に楽しみの極みだなあ。」
「実に楽しみの極みであります!」
「地球という最果ての星で、地球の土となって死んで行った仲間たちも、きっと喜ぶぞ!」
「隊長〜〜〜!」
「もう少しの辛抱だな。」
「はい!」
二人は、涙ぐんでいた。
「隊長、変なのがこっちにやって来ます。」
「なんだありゃあ?」
ロボットが、ポンポコとお腹を叩きながら、こちらに向かっていた。
「なんだ、あのオモチャのロボットみたいなやつは?」
「あれは、地球人の旧型の補佐ロボットです。」
「足の遅そうなロボットだなあ。」
「べた足ですから、遅いです。」
ロボットは、踊っている五人の者たちの近くで歩みを止めた。彼らは、意に介さずに踊っていた。ロボットは、胸のスピーカーから音楽を鳴らすと、奇妙な動きで踊りだし、歌いだした。

 ハレハレ〜 ♪ ハレハレ〜 ♪
 時の流れに〜 フラフラフララ〜 ♪ どこもかしこも〜 フラフラフララ〜 ♪
 ヤクザも家具屋も 医者もスターも 流し流され フラフラフラフラ〜 ♪
 第三世界が来るぜ〜〜 ♪ 春よ来い〜〜 ♪
 子供達もフラフラ〜 政治家もフラフラ〜 ♪ 右も左もフラフラ〜 ♪
 自由に羽ばたけ〜 鳥の〜〜ように〜 ♪
 第三世界が来るよ〜〜 ♪ 春よ来い〜〜 ♪
 狐も狸もフラフラ みんなフララフラフラ〜 狂って狂ってフラフラ〜 ♪

踊ってる連中は、驚いて踊りを止めた。呆けて見ていた。ログハウスの中の二人も、呆けて見ていた。
「隊長、何ですか、あれは!?」
「なんだろうなあ?」
姉さんたちも、窓から福之助を見ていた。
「あ〜〜、あいつ、やっちゃったよ〜〜!」
「あれは、茶屋で見た踊りですねえ。」
「あれ、得意なんです。」
「なんという曲でしたっけ?」
「ショーケンの春よ来いです。」

踊っていた連中は、福之助に合わせて、同じように踊りだした。そして、歌いだした。

 第三世界が来るぜ〜〜 ♪ 春よ来い〜〜 ♪

「隊長、なかなか、いい歌と踊りですねえ。」
「そうだなあ…」

姉さんたちも、彼らが福之助の真似をして踊り出すのを見ていた。
「葛城さん、見て見て!あの人たち、福ちゃんの真似をして踊りだしたわ。」
「どうなってるんだ、あの棺桶の連中?」
「簡単に自分たちの踊りを止めるなんて、変ですねえ。」
「そうですねえ。ほんとうに、宇宙人なのかも知れませんねえ?」
「まさか〜〜?ただの、ユーフォー教だと思いますよ。」
「あの棺桶、実は小型宇宙艇ってことはありませんよね?」
「まっさか〜〜?」
二人は、不思議そうに彼らの踊りを見ていた。



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