20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第114回   ユーフォーステップ
姉さんは、不審な目で彼らを見ていた。
「前衛舞踊かしら?それとも、オカルト集団かしら?」
アニーは、少し冷たい目で見ていた。
「以前、アメリカで見たことがあります。これと似た踊りを。」
「えっ、そうなんですか?」
「その踊りは、宇宙人と交信する踊りでした。」
「宇宙人と交信する踊り?」
「彼らは、そう言ってました。」
「そう言われれば、そういう感じの踊りですねえ。」
その踊りは、前衛舞踊のような、とっても奇妙な所作の踊りだった。
「変なステップだわあ〜。」
「あのとき見たステップと同じです。彼らは、ユーフォーステップと言ってました。」
「ユーフォーステップ!?」
「はい。」
「じゃあ、あの棺桶も、宇宙人と交信してたのかも知れませんねえ?」
「アメリカでは、ああいうのは見ませんでしたけど、ひょっとしたらそうかも知れません。」
福之助は、何やら一所懸命に料理をしていた。
「お前が、変な飲み物を出すから、変な踊りの連中が出てきたよ。」
「変な踊りって?」
「お前の、フラフラ踊りよりも変な踊り。」
「そんな踊りがあるんですか?」
「ちょっと見てみろ。」
「今は駄目です。」
「ああ、そう。」
「あそこの近くに行って、ひらひら踊りで対抗すると面白いかもなあ。」
「また〜、変なこと言って、姉さん。」
「やつら、きっとびっくりするぞ。」
「また〜〜、おだてないでくださいよ。わたしは、すぐその気になるんですから。」
「その気になって、踊って来い!」
「また〜〜〜!」
「お前、何作ってるんだよ〜?」
「ひらひら大根鍋です。」
「ひらひら大根鍋?なんだいそりゃあ?」
「まあ、食べてみてくださいよ。」
「ああ、食べるよ。大根だけってことはないよな?」
「もっちろんですよ〜〜!骨付き鶏モモ肉に里芋に椎茸が入ってます。」
「味付けは?」
「醤油と、お酒と、みりんです。」
「純日本味だな?」
「はい。」
「まあ、いいや。よろしく頼むよ。」
「はい、食後にトマトのデザートを作ります。」
「なんでもいい。頼むよ。」
「まかせてくださ〜〜い!」
福之助は、やけに張り切っていた。
「福ちゃん、張り切っているけど、どうしたのかしら?」
「さ〜〜〜あ、やっぱり頭でも打ったのかなあ?」
福之助が叫んだ。
「打ってませんよ!」
福之助の左腕は快調に動いていた。
「はい、終わりました〜!」
「もういいの?」
「はい!五分したら、鍋の火を止めてください。」
「あい、分かった!」
壁時計は、十一時五十分をさしていた。
福之助は、ドアに向かった。
「福之助、どこに行くんだよ?」
「踊ってきます!」
「えっ!?」
「リクエストに答えて踊ってきます。」
福之助は、颯爽(さっそう)と出て行った。
「ありゃ〜〜〜、ほんとに行っちゃった!」
「えっ、福ちゃん、どこに行ったんですか?」



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 31446