姉さんは、不審な目で彼らを見ていた。 「前衛舞踊かしら?それとも、オカルト集団かしら?」 アニーは、少し冷たい目で見ていた。 「以前、アメリカで見たことがあります。これと似た踊りを。」 「えっ、そうなんですか?」 「その踊りは、宇宙人と交信する踊りでした。」 「宇宙人と交信する踊り?」 「彼らは、そう言ってました。」 「そう言われれば、そういう感じの踊りですねえ。」 その踊りは、前衛舞踊のような、とっても奇妙な所作の踊りだった。 「変なステップだわあ〜。」 「あのとき見たステップと同じです。彼らは、ユーフォーステップと言ってました。」 「ユーフォーステップ!?」 「はい。」 「じゃあ、あの棺桶も、宇宙人と交信してたのかも知れませんねえ?」 「アメリカでは、ああいうのは見ませんでしたけど、ひょっとしたらそうかも知れません。」 福之助は、何やら一所懸命に料理をしていた。 「お前が、変な飲み物を出すから、変な踊りの連中が出てきたよ。」 「変な踊りって?」 「お前の、フラフラ踊りよりも変な踊り。」 「そんな踊りがあるんですか?」 「ちょっと見てみろ。」 「今は駄目です。」 「ああ、そう。」 「あそこの近くに行って、ひらひら踊りで対抗すると面白いかもなあ。」 「また〜、変なこと言って、姉さん。」 「やつら、きっとびっくりするぞ。」 「また〜〜、おだてないでくださいよ。わたしは、すぐその気になるんですから。」 「その気になって、踊って来い!」 「また〜〜〜!」 「お前、何作ってるんだよ〜?」 「ひらひら大根鍋です。」 「ひらひら大根鍋?なんだいそりゃあ?」 「まあ、食べてみてくださいよ。」 「ああ、食べるよ。大根だけってことはないよな?」 「もっちろんですよ〜〜!骨付き鶏モモ肉に里芋に椎茸が入ってます。」 「味付けは?」 「醤油と、お酒と、みりんです。」 「純日本味だな?」 「はい。」 「まあ、いいや。よろしく頼むよ。」 「はい、食後にトマトのデザートを作ります。」 「なんでもいい。頼むよ。」 「まかせてくださ〜〜い!」 福之助は、やけに張り切っていた。 「福ちゃん、張り切っているけど、どうしたのかしら?」 「さ〜〜〜あ、やっぱり頭でも打ったのかなあ?」 福之助が叫んだ。 「打ってませんよ!」 福之助の左腕は快調に動いていた。 「はい、終わりました〜!」 「もういいの?」 「はい!五分したら、鍋の火を止めてください。」 「あい、分かった!」 壁時計は、十一時五十分をさしていた。 福之助は、ドアに向かった。 「福之助、どこに行くんだよ?」 「踊ってきます!」 「えっ!?」 「リクエストに答えて踊ってきます。」 福之助は、颯爽(さっそう)と出て行った。 「ありゃ〜〜〜、ほんとに行っちゃった!」 「えっ、福ちゃん、どこに行ったんですか?」
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