「ほんとかよ〜〜!?」 「はい!」 福之助は、ゆっくりと動かしてみせた。 「ほらね!」 「お〜〜〜!普通に動かしてみろ。」 福之助は、普通に動かした。 「動きます!」 「あ〜〜、良かった!」 「良かったわね〜、福ちゃん!」 「はい!」 福之助は、すっかり笑顔になっていた。姉さんも、笑顔になっていた。 「もとのボンクラ顔になって良かった〜!」 「ボンクラ顔とは何ですか!」 「お前は、その顔が似合ってるよ〜。」 「失礼な!」 姉さんは、壁時計を見た。十一時半だった。福之助は突然、思い出したように泣き出した。今度は大きな声で。 「わ〜〜〜ん!おえおえおえ!」 「どうしたんだよ、福之助!?」 「どうしたの、福ちゃん?」 「ありがとうございます、姉さん!」 「うん?腕のことか?」 「はい。それと…」 「それと、何だよ?」 「それと、わたしの敵討ちだなんて!」 「そんなこと言ったっけ?」 「言いました!わたしは感激しました!そこまで、わたしのことを思っていてくれたんですね!」 「…つい、カァ〜〜っとなったんだよ。」 福之助は、また大きな声で泣き出した。 「わ〜〜〜ん!おえおえおえ!」 アニーが慰めた。 「ほんとうに、福ちゃんのことを心配してるのよ。」 「わたしは大丈夫です。機械ですから。あの人は心の病気だったのかも知れません。だから怒らないでください。」 「…そうだな。心の病気だったのかもな。」 「病気を憎んで、人を憎んではいけません。」 「お〜〜〜、お前、偉いこと言うじゃん!」 「そうですか?」 「頭でも打ったか?」 「失礼な!」 姉さんとアニーは、顔を見合えあせて笑った。 姉さんは言った。 「下界は変な人間が増えてきましたねえ〜。」 「人口が多い都会に多いんです。」 「そうなんですか?」 「生物は多すぎると、減らそうとして共食いを始めるそうです。生物の本能なんです。」 「そうなんですか。」 「人間は、共食いじゃなくって、病気になって自殺するのかも知れません。そういうことを唱えてる学者がいるんです。」 「そうかも知れませんねえ。」 「人口は、加速度的に増えています。その分、炭酸ガスも増え、森林は減っています。」 「じゃあ、いい人間だけを残さないといけませんねえ。」 「難しいけど、そうですねえ。今、国連では、世界一人っ子計画を検討しています。」 「そうなんですか。間に合うといいんですけど。」 「炭酸ガスによる地球温暖化ですか?」 「はい。コーラの炭酸ガスはけっこうですけど、地球温暖化の炭酸ガスは真っ平です。」 「はい、その通りです。」 福之助は元気になって動き出した。 「今から、おいしいオカズをつくります!」 その言葉に、姉さんは敏感に反応した。 「おいしいオカズって、何だい!?」 「知りたいですか?」 「あ〜〜、大いに知りたいよ!」 「今、炭酸ガス入りの冷たい緑茶を持ってきますので、椅子に座ってお待ちください。」 「なんだって!?炭酸ガス入りの冷たい緑茶?」 「そうです。」 「え〜〜〜〜〜!?」 アニーも驚いた。 「何、それ?」 福之助は、すぐに持って来た。コップに注いであった。 「どうぞ!」 緑色の緑茶が泡を立てていた。姉さんは黙って飲み始めた。 「大人好みの味でもないし、子供好みの味でもなしし、妙な味だねえ。」 「ほんと、思ったよりも、緑茶っぽくはなくって、初めて経験する味だわ。」 「そうでしょう!」 「なんというか、宇宙人が好みそうな味だな。」 「そういえば、そうですね。」 「そうですか〜〜!」 福之助は、いたく喜んでいた。 「なんだ、あれ!?」 姉さんは、ログハウスの立ち並ぶ側の窓の外を見ていた。 「棺桶の連中、変な踊りをやってるわ!」 アニーも見た。 「何なんでしょう?」 「まるで、宇宙人の踊りみたいだなあ〜。」 「そんなの見たことあるんですか?」 「はい、夢の中で。」
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