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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第112回   いざ、敵討ち!
福之助は、しくしくと泣いていた。
「左腕が動かないんです〜〜!」
姉さんは、福之助の左腕を触った。
「どうしたんだよ?」
アニーも心配そうに尋ねた。
「どうしたの〜?」
「栗御飯を仕込んで、まだかな〜と思って、外に出て見てたら、男の人が変なことを尋ねてきたので、答えたら、急に怒り出して両手で突き飛ばされたんです。倒れたら、左腕がおかしくなっちゃったんです。」
「変なことって、何を尋ねてきたたんだよ?」
「わたしの行き場所を教えてください?って言うので、そんなことは知りません、一人前の人間だったら、自分で考えてください。って答えたら、ロボットのくせに生意気で不親切だな〜!と言って、突然に突き飛ばされたんです。」
「なんだってぇ〜!?で、その男は?」
「逃げて行きました。」
「逃げて行った〜、どこに!?」
「大踊りの方向でした。」
アニーが思い出したように尋ねた。
「白いシャツを着た中年の人だったでしょう?」
「はい。」
「葛城さん、舞姫公園であった人じゃない?ほら、変なこと言ってた変な人。」
「あ〜〜、そうだそうだ。同じようなことを言ってましたねえ。」
「きっと、あの変な男ですよ。」
「どうなってるんだ?いきなりかよ?」
「はい。」福之助は、まだ腕を押さえていた。
「ぜんぜん動かないののかよ?」
「はい。」
「気が狂ってるのかなあ?」
「最近の、切れる大人っていうんじゃない?ほら、よく駅員が殴られるっていう。」
「切れる大人?」
「最近多いんですってよ。」
「おっかない世の中になったな〜。」
「福ちゃん、ちょっと立ってみて。立てる?」
「はい。」
福之助は、ゆっくりと左手をかばいながら立ち上がった。
「椅子に座ってみてくれない?」
「はい。」
福之助は近くの椅子に座った。アニーは福之助の背後に回った。
「ぜんぜん、動かないの?」
「肘までは動くんです。肘から下が動かないんです。」
「…肘のジョイントかなあ?」
姉さんがアニーに尋ねた。
「ロボットに詳しいんですか?」
「いや、まったく詳しくはありません。」
「まったく、ひどい人間だなあ〜。かよわい、やっと動いてるロボットをこんなめにあわせて!」
福之助は怒った。
「やっと動いてるって、何ですか!」
アニーは、冷静に福之助のボディを見ていた。
「おかしいわねえ、左腕が少し曲がっているよ。」
「えっ?」
姉さんも背後から確認した。
「ほんとだ!」
福之助も同様な返事をした。
「そういえば、肘が外側に曲がっていますねえ…」
姉さんは、腕を組んだ。
「人間の脱臼だったらなあ〜、なんとか治せるんだけどな〜。」
アニーはびっくりした。
「そういうこと、できるんですか?」
「柔術の練習中に、よく外れるんですよ。」
「え〜〜、そうなの。怖〜〜い!」
「ひょっとすると、ロボットも治るかな?福之助!床に足を出して座ってみろ!」
「はい。」
福之助は、おとなしく座った。姉さんは、福之助の左側に行き、福之輔の左腕を、膝を曲げた中に入れて腰を落とした。両手で、福之助の手首を持った。
「行くぞ!」
「はい!」
姉さんは、「キェ〜〜〜イ!」と言って、福之助の左腕を引いた。ゴキッっと音がした。
「入ったかな?」
姉さんは立ち上がった。
「福之助、立って動かしてみろ。ゆっくりとな。」
「はい。」
福之助は、立って、ゆっくりと動かそうとした。
「駄目です。動きません。」
「やっぱり、駄目か…」
姉さんは、怒りが込み上げてきた。
「お前の敵(かたき)はとってやる!大通りに行ったんだな?」
「はい。」
姉さんは、ドアに向かった。アニーは尋ねた。
「どこに行くんですか?」
「敵討ちです。とっ捕まえて、同じ目にあわせてやります!」
「えっ!?」
福之助が叫んだ。
「姉さん!動きました!」
姉さんは振り返った。



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