ヨコタンは、表札の無いドームハウスの前で止まった。 「ここよ。」 正男は驚いた。 「ぅわ〜〜〜ぁ、まん丸のお家だぁ〜〜!」 ヨコタンが鍵を開けると、みんなは入って行った。 正男は驚いた。 「ぅわ〜〜〜、いい匂いだなあ〜〜!綺麗だなあ〜〜!」 母親も、驚いていた。 「こんなに綺麗なところに住まわせてもらって、ほんとうにいいんですか?」 「勿論ですよ。」 「二人だけで住んでもいいんですか?」 「勿論です。」 「家賃などは?」 「いいんですよ。明日から、わたしたちと働いてもらえれば、それでいいんです。」 「ほんとうに、それでいいんですか?」 「はい。明日、給料を前払いしますので、光熱費と食料だけは、自分で調達してください。食券も自分で買ってください。」 「ほんとうに、家賃は要らないんですか?」 「はい!」 ヨコタンは、ダイニングルームに案内した。 「コンロも調理器具も冷蔵庫も、買わなくてもありますよ。」 正男は、飛び回って喜んだ。 「わ〜〜〜、ほんとだ〜〜!母ちゃん、電子レンジもあるよ!」 五十嵐礼子には、不思議なことだらけだった。正男は、テーブルの前の椅子に座った。 「ここで食べるんだね。」 ヨコタンは、お風呂場に案内した。タイル張りの浴槽の浅い西洋式のステンレス風呂だった。 ここでも、正男は喜んだ。 「ぅわ〜〜〜、大きくって綺麗なお風呂だな〜〜!」 「元栓を開いて、スイッチを回せば沸きます。」 「はい。」 ヨコタンは、二つある六畳の生活部屋に案内した。 「ここは、畳の部屋です。同じ造りの部屋が、南側に二つあります。」 「いい部屋ですねえ。」 「お布団も、そこの押入れに入っていますので、使ってください。」 「はい。」 「もう一つ同じ部屋がありますけど、使いますか?」 「ここだけで結構です。正男は子供ですから、一緒で結構です。」 「そうですか、じゃあ空室だと危ないので、鍵を掛けておきましょうか?」 「はい、そうしてください。」 ポンポコリンが入って来た。 「あら、どうしたの、ポンポコリン?」 「その部屋、私が使うからいいわ。」 「えっ?」 「ここに引っ越すことになったの。お母さんが仕事中は、正男くんが一人っきりになるからって。」 「ああ、そうなの?誰が決めたの?」 「わたしと龍次さん。これで、あなたともお別れね。」 「わたし、一人っきりになるのか。」 「代わりに、ロボットの紋次郎が来るわ。」 「紋次郎が来るの〜〜!?」 「龍次さんが、いつまでも集会所暮らしじゃ、紋次郎が可哀想だからって。」 「まあ、いいや。」 「紋次郎はロボットだから、気遣う必要がないからいいんじゃない。」 「そうね。でも、あなたも仕事があるんじゃないの?」 「正男くんも、私と一緒に集会所に行くことになったの。」 「ああ、そうなの。それはいいわね。」 ポンポコリンは、母親に尋ねた。 「このほうが、五十嵐さんも、安心して仕事に行けますよね。」 「はい。何から何まで、ありがとうございます。」 ポンポコリンは、正男の頭を撫でた。 「お姉ちゃんと一緒に、待ってようね!」 「うん、分かった!」 ロボットの紋次郎の声がした。 「荷物を持って来ました〜〜!」 「あっ、紋次郎だわ!」 みんなは、玄関まで出て行った。紋次郎が、リアカーを引いて止まっていた。 「この家ですか?」 「そうよ、降ろして私の部屋まで運んで!」 「はい!」 正男は、びっくりして大喜びした。 「わぁ〜〜〜〜〜、ロボットだぁ〜〜!」 紋次郎は、正男に挨拶した。 「紋次郎です。よろしくね。」 「もんじろう…、何だか言いにくい名前だなあ〜。」 「紋ちゃん、でいいですよ。」 「もんちゃん。僕は、正男!」 「まさお、まさお君だね。分かりました。」 紋次郎は、荷物を抱えて、家の中に入っていった。正男は、はしゃいでいた。 「わ〜〜〜ぁ、ロボットだぁ〜〜〜!もんちゃん、もんちゃん!頑張れ、もんちゃん!」 正男は、手拍子を打ちながら楽しそうに踊り始めた。
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