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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第11回   頑張れ、もんちゃん!
ヨコタンは、表札の無いドームハウスの前で止まった。
「ここよ。」
正男は驚いた。
「ぅわ〜〜〜ぁ、まん丸のお家だぁ〜〜!」
ヨコタンが鍵を開けると、みんなは入って行った。
正男は驚いた。
「ぅわ〜〜〜、いい匂いだなあ〜〜!綺麗だなあ〜〜!」
母親も、驚いていた。
「こんなに綺麗なところに住まわせてもらって、ほんとうにいいんですか?」
「勿論ですよ。」
「二人だけで住んでもいいんですか?」
「勿論です。」
「家賃などは?」
「いいんですよ。明日から、わたしたちと働いてもらえれば、それでいいんです。」
「ほんとうに、それでいいんですか?」
「はい。明日、給料を前払いしますので、光熱費と食料だけは、自分で調達してください。食券も自分で買ってください。」
「ほんとうに、家賃は要らないんですか?」
「はい!」
ヨコタンは、ダイニングルームに案内した。
「コンロも調理器具も冷蔵庫も、買わなくてもありますよ。」
正男は、飛び回って喜んだ。
「わ〜〜〜、ほんとだ〜〜!母ちゃん、電子レンジもあるよ!」
五十嵐礼子には、不思議なことだらけだった。正男は、テーブルの前の椅子に座った。
「ここで食べるんだね。」
ヨコタンは、お風呂場に案内した。タイル張りの浴槽の浅い西洋式のステンレス風呂だった。
ここでも、正男は喜んだ。
「ぅわ〜〜〜、大きくって綺麗なお風呂だな〜〜!」
「元栓を開いて、スイッチを回せば沸きます。」
「はい。」
ヨコタンは、二つある六畳の生活部屋に案内した。
「ここは、畳の部屋です。同じ造りの部屋が、南側に二つあります。」
「いい部屋ですねえ。」
「お布団も、そこの押入れに入っていますので、使ってください。」
「はい。」
「もう一つ同じ部屋がありますけど、使いますか?」
「ここだけで結構です。正男は子供ですから、一緒で結構です。」
「そうですか、じゃあ空室だと危ないので、鍵を掛けておきましょうか?」
「はい、そうしてください。」
ポンポコリンが入って来た。
「あら、どうしたの、ポンポコリン?」
「その部屋、私が使うからいいわ。」
「えっ?」
「ここに引っ越すことになったの。お母さんが仕事中は、正男くんが一人っきりになるからって。」
「ああ、そうなの?誰が決めたの?」
「わたしと龍次さん。これで、あなたともお別れね。」
「わたし、一人っきりになるのか。」
「代わりに、ロボットの紋次郎が来るわ。」
「紋次郎が来るの〜〜!?」
「龍次さんが、いつまでも集会所暮らしじゃ、紋次郎が可哀想だからって。」
「まあ、いいや。」
「紋次郎はロボットだから、気遣う必要がないからいいんじゃない。」
「そうね。でも、あなたも仕事があるんじゃないの?」
「正男くんも、私と一緒に集会所に行くことになったの。」
「ああ、そうなの。それはいいわね。」
ポンポコリンは、母親に尋ねた。
「このほうが、五十嵐さんも、安心して仕事に行けますよね。」
「はい。何から何まで、ありがとうございます。」
ポンポコリンは、正男の頭を撫でた。
「お姉ちゃんと一緒に、待ってようね!」
「うん、分かった!」
ロボットの紋次郎の声がした。
「荷物を持って来ました〜〜!」
「あっ、紋次郎だわ!」
みんなは、玄関まで出て行った。紋次郎が、リアカーを引いて止まっていた。
「この家ですか?」
「そうよ、降ろして私の部屋まで運んで!」
「はい!」
正男は、びっくりして大喜びした。
「わぁ〜〜〜〜〜、ロボットだぁ〜〜!」
紋次郎は、正男に挨拶した。
「紋次郎です。よろしくね。」
「もんじろう…、何だか言いにくい名前だなあ〜。」
「紋ちゃん、でいいですよ。」
「もんちゃん。僕は、正男!」
「まさお、まさお君だね。分かりました。」
紋次郎は、荷物を抱えて、家の中に入っていった。正男は、はしゃいでいた。
「わ〜〜〜ぁ、ロボットだぁ〜〜〜!もんちゃん、もんちゃん!頑張れ、もんちゃん!」
正男は、手拍子を打ちながら楽しそうに踊り始めた。


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