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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第108回   ロボットマラソン大会
忍は左足首に包帯を巻いて、高野山病院から出てきた。ポンポコリンと正男も出てきた。
「いや〜〜、このシップ、冷たくって気持ちいいわ〜〜。」
シップの上から包帯は巻かれていた。
「骨が折れてなくって良かったわ〜。ちゃんと歩ける?」
「大丈夫だよ。松葉杖には馴れたよ。」
「足首は、あまり動かさないでね。」
「分かってるよ。」
「今週は安静!」
「あ〜〜あ、そうだなあ。」
「朝晩、シップを取り替えるから、ちゃんと来てよ。」
「悪いねえ。迷惑かけちゃって。」
「これが、わたしの仕事だから、気にしないで。」
「ありがとう!」
ポンポコリンがスライダーカートに乗り込むと、忍も、松葉杖を後ろの荷物入れに立掛けてから、器用に乗り込んだ。
「正男!」忍は手招きした。
「ぼく、つえといっしょのところでいいよ。」
「杖と一緒のところ?」
「ここ。」
正男は指差した。
ポンポコリンが出てきて、正男を持ち上げて、荷物入れに下ろした。
「ちょうどいいわね。」
「わ〜〜〜、いいな〜、ここ〜!」
子供の正男は妙に喜んでいた。忍は、正男に礼を言った。
「ありがとう、正男!」
「うわ〜〜、早く行こう!」
スライダーカートは、人間村に向かって動き出した。
「包帯を巻いてくれた看護婦さん、綺麗だったな〜〜。」
「そうかしら?タイプなの?」
「タイプってことじゃあ〜ないけど。」
前方から、紋次郎が早足でやって来るのが見えた。
「紋次郎だ。」「ほんとだ、紋ちゃんだわ。」
ポンポコリンはスライダーカートを止めた。忍が大きな声で呼んだ。
「紋次郎〜〜、何やってんだよ〜!?」
紋次郎は、彼らの前で止まった。
「買い物です。大先生に頼まれて鳥小屋の金網を買いに行きます。」
「大先生?」
「急いでいるので失礼します!」
紋次郎は早足でさっさと行ってしまった。
「大先生って、誰だ?」
「誰のことなんでしょうね?」
正男が紋次郎に手を振っていた。
「紋ちゃ〜〜ん、ばいば〜〜い!」
観光客らしい中年の男女が、ポンポコリンに尋ねていた。
「一の橋は、こっちですか?」
「はい、そうです。」
「ありがとうございます。高野山は息が楽でいいですねえ。」
「息が楽で?」
「下界は、二酸化炭素だらけで、酸欠で息苦しいんですよ。」
「そうなんですか?」
「高野山に引っ越して来ようかな〜。どうもありがとうございます!」
尋ねた男は、軽く頭を下げて去って行った。

紋次郎が急いで歩いていると、知らない男が呼び止めた。
「ごめんなさい!」
紋次郎は立ち止まった。
「なんでしょうか?」
「龍神スカイライン・二足ロボットマラソン大会に出ませんか?」
「急いでいるので、ごめんなさい!」
紋次郎は走り出した。男は驚いた。
「ぅお〜〜〜〜、早いな〜〜!」
男は追いかけて行った。男はマラソンの有名選手だった。


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