忍は左足首に包帯を巻いて、高野山病院から出てきた。ポンポコリンと正男も出てきた。 「いや〜〜、このシップ、冷たくって気持ちいいわ〜〜。」 シップの上から包帯は巻かれていた。 「骨が折れてなくって良かったわ〜。ちゃんと歩ける?」 「大丈夫だよ。松葉杖には馴れたよ。」 「足首は、あまり動かさないでね。」 「分かってるよ。」 「今週は安静!」 「あ〜〜あ、そうだなあ。」 「朝晩、シップを取り替えるから、ちゃんと来てよ。」 「悪いねえ。迷惑かけちゃって。」 「これが、わたしの仕事だから、気にしないで。」 「ありがとう!」 ポンポコリンがスライダーカートに乗り込むと、忍も、松葉杖を後ろの荷物入れに立掛けてから、器用に乗り込んだ。 「正男!」忍は手招きした。 「ぼく、つえといっしょのところでいいよ。」 「杖と一緒のところ?」 「ここ。」 正男は指差した。 ポンポコリンが出てきて、正男を持ち上げて、荷物入れに下ろした。 「ちょうどいいわね。」 「わ〜〜〜、いいな〜、ここ〜!」 子供の正男は妙に喜んでいた。忍は、正男に礼を言った。 「ありがとう、正男!」 「うわ〜〜、早く行こう!」 スライダーカートは、人間村に向かって動き出した。 「包帯を巻いてくれた看護婦さん、綺麗だったな〜〜。」 「そうかしら?タイプなの?」 「タイプってことじゃあ〜ないけど。」 前方から、紋次郎が早足でやって来るのが見えた。 「紋次郎だ。」「ほんとだ、紋ちゃんだわ。」 ポンポコリンはスライダーカートを止めた。忍が大きな声で呼んだ。 「紋次郎〜〜、何やってんだよ〜!?」 紋次郎は、彼らの前で止まった。 「買い物です。大先生に頼まれて鳥小屋の金網を買いに行きます。」 「大先生?」 「急いでいるので失礼します!」 紋次郎は早足でさっさと行ってしまった。 「大先生って、誰だ?」 「誰のことなんでしょうね?」 正男が紋次郎に手を振っていた。 「紋ちゃ〜〜ん、ばいば〜〜い!」 観光客らしい中年の男女が、ポンポコリンに尋ねていた。 「一の橋は、こっちですか?」 「はい、そうです。」 「ありがとうございます。高野山は息が楽でいいですねえ。」 「息が楽で?」 「下界は、二酸化炭素だらけで、酸欠で息苦しいんですよ。」 「そうなんですか?」 「高野山に引っ越して来ようかな〜。どうもありがとうございます!」 尋ねた男は、軽く頭を下げて去って行った。
紋次郎が急いで歩いていると、知らない男が呼び止めた。 「ごめんなさい!」 紋次郎は立ち止まった。 「なんでしょうか?」 「龍神スカイライン・二足ロボットマラソン大会に出ませんか?」 「急いでいるので、ごめんなさい!」 紋次郎は走り出した。男は驚いた。 「ぅお〜〜〜〜、早いな〜〜!」 男は追いかけて行った。男はマラソンの有名選手だった。
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