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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第107回   そのときは、もう遅い!
「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃ〜〜ん♪」
熊さんは、子連れ狼の歌を口ずさみにながら仕事をしていた。作業の手を休めて空を見た。
「最近は、しとしとぴっちゃんの雨が降らないなあ〜。」
空に雲がある限り、雨の恵みがあることは、誰でも知っていた。でも、もう雨はしとしととロマンチックに降ってはくれなくなっていた。どしゃどしゃと、思いやりのないクルクルパーのように、乱暴に降って生きているものに大迷惑をかけていた。
「降ったら、ゲリラ豪雨。困ったもんだ。いったいどうなってるんだ?」
背後から声がした。
「もう地球は終わりなんですよ。」
「うん?」
熊さんは振り向いた。
「な〜〜んだ、サキちゃんか?」
「大先生って、熊さんのこと?」
「そうらしいよ。なんで知ってるの?」
「今、そこで遇ったの。大先生に頼まれたって言ってたわ。」
「あいつは単純なやつだなあ。やっぱりロボットだなあ。」
「どこまで行ったの?」
「マツヤマ金物屋。」
熊さんは、空を見上げた。
「畑に少し水が欲しいんだけどなあ、いい雨は降ってくれないなあ〜。」
「もうすぐ来るんじゃない?」
「どひゃ〜〜〜っとな、狂った馬鹿みたいに。」
「最近の天気は、完全に狂ってますね。」
「狂ってるもいいとこだよ。」
「九月なのに、まだ下界は暑いし。」
「も〜〜う、下界は行きたくない!夏に大阪に行ったときには、あまりに暑くて目眩がしたよ。熱射病寸前だったよ。あんなとこじゃあ、人間は住めないよ。」
「それで、買い物を諦めて、すぐに帰ってきたんだよね。」
「いや〜〜、まいったなあ〜、あの時は。生まれて初めての経験だったよ。」
「で、帰って不慣れなインターネットで買い物したわけだ。」
「いや〜〜、インターネットの有難さが分かったよ。」
「下界は、もう住めないわ。」
「人と自動車の排気ガスと排気熱だろう、アスファルトとビルディング、エアコンからの熱風、ありゃあたまんないよ。」
「みんな分かっているんだけど、どうしようもないのよ。」
「そうだろうなあ。」
「明日は、大気が不安定になるって言ってたわ。」
「大気が不安定?最近よく聞くけど、どういう意味だい?」
「ゲリラ豪雨になるってことでしょう?」
「どこが?」
「それが分からないから、ゲリラ豪雨なんじゃない?」
「そういうことか。」
「局地的でころころ変わるから、予測するのが難しいんじゃないのかしら?」
「そういうことか。あ〜〜あ、変な時代になったなあ〜。」
「豪雨もいやだけど、カミナリが怖いね。」
「いやだいやだ、カミナリ大嫌い!」
「ほんとうに、温暖化を止めないと、手遅れになるわ。」
「そうだなあ〜、来年はどうなるのかなあ〜。おっそろしいよ。」
「これからの子供たちが可哀想だわ。」
「そうだなあ…、経済優先の貪欲アンポンタンには、地球環境なんて言っても分からねえしな〜。馬鹿は、いつも苦しんで気がつくんだよ。」
「そのときは、もう遅いわ。」



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