「しとしとぴっちゃん、しとぴっちゃ〜〜ん♪」 熊さんは、子連れ狼の歌を口ずさみにながら仕事をしていた。作業の手を休めて空を見た。 「最近は、しとしとぴっちゃんの雨が降らないなあ〜。」 空に雲がある限り、雨の恵みがあることは、誰でも知っていた。でも、もう雨はしとしととロマンチックに降ってはくれなくなっていた。どしゃどしゃと、思いやりのないクルクルパーのように、乱暴に降って生きているものに大迷惑をかけていた。 「降ったら、ゲリラ豪雨。困ったもんだ。いったいどうなってるんだ?」 背後から声がした。 「もう地球は終わりなんですよ。」 「うん?」 熊さんは振り向いた。 「な〜〜んだ、サキちゃんか?」 「大先生って、熊さんのこと?」 「そうらしいよ。なんで知ってるの?」 「今、そこで遇ったの。大先生に頼まれたって言ってたわ。」 「あいつは単純なやつだなあ。やっぱりロボットだなあ。」 「どこまで行ったの?」 「マツヤマ金物屋。」 熊さんは、空を見上げた。 「畑に少し水が欲しいんだけどなあ、いい雨は降ってくれないなあ〜。」 「もうすぐ来るんじゃない?」 「どひゃ〜〜〜っとな、狂った馬鹿みたいに。」 「最近の天気は、完全に狂ってますね。」 「狂ってるもいいとこだよ。」 「九月なのに、まだ下界は暑いし。」 「も〜〜う、下界は行きたくない!夏に大阪に行ったときには、あまりに暑くて目眩がしたよ。熱射病寸前だったよ。あんなとこじゃあ、人間は住めないよ。」 「それで、買い物を諦めて、すぐに帰ってきたんだよね。」 「いや〜〜、まいったなあ〜、あの時は。生まれて初めての経験だったよ。」 「で、帰って不慣れなインターネットで買い物したわけだ。」 「いや〜〜、インターネットの有難さが分かったよ。」 「下界は、もう住めないわ。」 「人と自動車の排気ガスと排気熱だろう、アスファルトとビルディング、エアコンからの熱風、ありゃあたまんないよ。」 「みんな分かっているんだけど、どうしようもないのよ。」 「そうだろうなあ。」 「明日は、大気が不安定になるって言ってたわ。」 「大気が不安定?最近よく聞くけど、どういう意味だい?」 「ゲリラ豪雨になるってことでしょう?」 「どこが?」 「それが分からないから、ゲリラ豪雨なんじゃない?」 「そういうことか。」 「局地的でころころ変わるから、予測するのが難しいんじゃないのかしら?」 「そういうことか。あ〜〜あ、変な時代になったなあ〜。」 「豪雨もいやだけど、カミナリが怖いね。」 「いやだいやだ、カミナリ大嫌い!」 「ほんとうに、温暖化を止めないと、手遅れになるわ。」 「そうだなあ〜、来年はどうなるのかなあ〜。おっそろしいよ。」 「これからの子供たちが可哀想だわ。」 「そうだなあ…、経済優先の貪欲アンポンタンには、地球環境なんて言っても分からねえしな〜。馬鹿は、いつも苦しんで気がつくんだよ。」 「そのときは、もう遅いわ。」
|
|