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作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第104回   レアアースの神様
龍次の携帯無線機が鳴った。
「なに?」

「じゃあ、御社(みやしろ)の前に届けてくれる。」
龍次は、無線機を切った。
ショーケンが尋ねた。
「なに?」
「弁当、どこに届けたらいいかって。」
「あっ、そうか。今日から、みんなに直接に食堂から届けるんだ。」
「そうです。」
アキラは、ちゃんと聞いていた。
「じゃあ俺が取りに行ってくるよ。どこまで持ってくるの?」
「御社(みやしろ)の前です。」
「御社(みやしろ)って、どこ?」
「あそこです。赤い鳥居のあるところです。」
「赤い鳥居…あっ、あれ!」
「そうです。」
御社(みやしろ)は、百メートルほど離れたところにあった。
「じゃあ、ここにいれば分かるね。」
「そうですね。」
ショーケンが尋ねた。
「鳥居って、あれ神社なの?」
「はい、そうです。」
「高野山にも、神社があったの?」
「丹生(にう)明神、高野(たかの)明神、高野山の真言密教の守り神です。」
「ってことは、お寺よりも古いってこと?」
「そういうことですね。」
「へ〜〜、凄いなあ〜。」
アキラが皆を呼んだ。
「お〜〜〜い!あっちに行くぞ〜!」
みんなはやってきた。
「龍次さん、ちょうど今行こうと思ってたんですよ。」
「あっ、そう。それは良かった。」
みんなは、御社(みやしろ)に向かって歩き出した。
龍次が、鳥居の前で立ち止まると、みんなは、そこから仕事を始めた。五十嵐礼子も一緒に動き出した。
「わたしもやります!」
龍次が「がんばって!」と言って励ました。
アキラが龍次に質問した。
「ここに来るの?」
「はい。食堂のみっちゃんが、電動自動車で持ってきます。」
「へ〜〜え、電動自動車?うちにそんなのあったの?」
「ありましたよ。調子が悪かったんで、修理に出してたんですよ。」
「あ〜、そうなの。」
「遅いなあ…」
ショーケンは竹箒を持っていた。龍次は、その姿を、まじまじと見ていた。
「ショーケンさん、悪いね。ロック界のカリスマを。」
「ただのクローンですから。ここには誰が祭られているんですか?。」
「丹生(にう)明神と高野(たかの)明神です。左側が丹生(にう)明神で、正式な名を、丹生都比売大神(にうつひめのおおかみ)と言います。天照大神(あまてらすおおみかみ)の妹です。」
「天照大神(あまてらすおおみかみ)の妹!」
「中央は、高野(たかの)明神または狩場明神(かりばみょうじん) と言って、丹生明神の子供です。」
「天照大神(あまてらすおおみかみ)の妹と、その子供!それにしても、なんだか最近できたみたいで綺麗だな〜。」
「国の重要文化財で、二十一年ごとに屋根替と修理が行われているんです。」
「あ〜、そうなんだ〜。ここの神様は何の神様なんですか?」
「レアアースの神様です。」
「レアアース?」
「レアメタルとも言いますね。貴重金属のことです。」
「貴重金属?」
「昔は、水銀が貴重で、丹生(にう)明神は水銀の神様だったんです。」
「水銀の神様?」
「金や銀は、水銀に溶けるんですよ。それを塗って熱で乾かすと、水銀だけが蒸発して、金や銀だけが残るんです。」
「メッキ!」
「そうです。古代のメッキ方法です。」
「そうやって、メッキしてたんだ〜〜!」


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