20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ
 ようこそゲストさん トップページへ ご利用方法 Q&A 操作マニュアル パスワードを忘れた
 ■ 目次へ

作品名:高野山 人間村 作者:毬藻

第103回   だらしねえな〜〜!
アキラは怒った。
「だらしねえな〜〜!なんだい、このホウキの置き方は!」
ホウキは、投げ捨てられたように、地面に置いてあった。
近くにいた男がやってきた。
「あっ、すみません!」
「人が踏むだろう〜!」
「すみません!」
男は、近くの木に立て掛けた。男は、ゴミ詰めの作業に戻った。
ショーケンは、アキラの隣にいた。
「お〜〜〜、怒ったね〜!」
「だらしないの、嫌いなの!」
ショーケンは、アキラが几帳面なのを知っていた。
「ああいうの放っておくと駄目なの。一事が万事って言うでしょう。」
「そういうこと。さっすが!」
彼らは、高さ四十八メートル強の根本大塔の近くにいた。龍次が、五十嵐礼子と一緒にやってきた。
「遠くから見てましたよ。何かあったんですか?」
アキラが答えた。
「大事な仕事道具のホウキを人の通る地面に置いてあったもんでね。叱ったんですよ。」
アキラは分かれた組の、五人の臨時責任者だった。
「ああ、そうだったんですか。森君は?」
「あっち。」
アキラは指差した。
「みんな、アキラさんのこと褒めてましたよ。」
「えっ?」
「器用で、仕事が速いって。」
「そうかなあ?」
ショーケンが、無表情に言った。
「アキラは器用だよ。それに、だらしねえのは大嫌いだもんな。」
「まあね。」
龍次が尋ねた。
「潔癖症なんですね?」
「潔癖症ってほどではないけど。だらしないのは嫌いだね。」
「やっぱり、潔癖症なんですよ。」
「うちの親父が、だらしなかったから、その反動かな?はっは!」
「自分なりに悟るなんて、偉いです!」
「別に偉くは無いよ。人間として当たり前のことだよ。」
「偉いことですよ。」
「だらしないと、他人(ひと)に迷惑をかけるでしょう。」
「そういうことが分からない人が、最近は多いんですよ。」
「そうなの〜?」
「そうなんですよ。自分の権利ばっかり主張してね。」
「口先ばっかりって奴ね。あ〜〜、そういうの最低!」
「アキラさんは、真面目なんですね〜。酔っ払いとか嫌いでしょう?」
「あ〜〜、大っ嫌い!親父が、そうだったから!」
「そうだったんですか?」
「酔っ払って、だらしなくって、大嫌いだったよ。」
「実は、日本人だけなんですよ。」
「えっ?」
「ああやって、よたよたと酔っ払いが、公共の道を歩くのは。」
「そうなの〜?」
「外国じゃあ、だらしない行為なんです。恥ずかしい行為なんです。」
「そうなんだ。」
「それに、外国であんなことしたら、強盗にあいます。」
「そうだろうね。」
「日本人は、島国で安全でしたから、甘えているんですよ、安全な社会に。外国は、そうはいきません。国はつながっているし、多人種多言語の人々が、競い合って生活していますから、油断すると襲われます。」
「そうだよね〜〜。」
「だらしなかったら、すぐに襲われます。」
「そうだよね〜。」
アキラの目が鋭く光った。
「だらしない奴らは、親父狩りにでも遇えばいいんだ!」
「そうですね。」
龍次の、意外な返答に、アキラは思わずにやっと笑った。
「あれ〜〜〜、龍次さん、親父狩りの味方なの?」
「味方ってことじゃないけど、少しは薬になるんじゃないかな?」
「おっもしれ〜〜〜!龍次さんみたいなこと言う大人は、なっかなかいないよ!」
「そうかなあ?」
「さっすが、カリスマの龍次さん!おっもしれ〜〜!」
「そっお?」
「そんなアラ還、なっかなかいないよ〜!」
「嵐寛(あらかん)?なんで僕が、嵐寛壽郎(あらし かんじゅうろう)なの?」
「あらし かんじゅうろう?おっもしれ〜〜!」



← 前の回  次の回 → ■ 目次

■ 20代から中高年のための小説投稿 & レビューコミュニティ トップページ
アクセス: 31446