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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第87回   マック怒鳴るど
小さな風小僧に吹き飛ばされて一匹の蟻ん子が、坂を転がっていた。
「あらあら可哀想に。」
「どうしたの?」
「蟻が、風に飛ばされて。この坂を転げ落ちているわ。」
「それがどうしたの?」
「人間が作った坂には、草も石ころもないから、転がって自動車の潰されてしまうわ。」
「そうだね。」
「残酷だわ。」
「そうだね。蟻のことまで考えては作らないからね。」
「やっぱり、ここは妖精たちの住めないところだわ。」
「まあね…」
「偉い人間はいないのかしら?」
「いるんじゃないの?」
「さっきの、将棋の名人みたいな。」
「羽生名人か…」
「そう。深く考える思いやりのある、とてもとってもいい目をしていたわ。」
「あの人は天才だからね。」
「みんな天才になればいいのに。」
「そうだね。」
「偉い人は、どこが違うのかしら?」
「偉い人は、最初っから違うんだよ。」
「小さいときから?」
「そう。」
機械仕掛けの犬のマックが、ワンワンと怒鳴っていた。
「マックが怒鳴っているわ。マックドナルドのフライドポエトは美味しいわ。」
「食べたいの?」
「今日はいいわ。また内緒で食べましょうよ。」
「そうだね。内緒で食べると美味しいね。」
「えへへ〜〜。」
「おかしな返事。」
「フライドポテトは、ソフトクリームをつけて食べると、美味しいのよ。」
「え〜〜?」
「熱いフライドポテトに冷たいソフトクリームをつけて食べるの。」
「そうなの?」
「けんけん姉さんが、教えてくれたの。熱くて冷たくって、とってもとっても美味しかったわ〜。」
「今度、やってみよう!」
「それが、きっといいわ。」
森の公園に辿り着くと、大勢の亡霊や妖怪たちが歩いていた。妖精たちが楽しそうに飛んでいた。
「やっぱり、ここはいいわあ。」
「そうだねえ。」
一平は、来た道を走って行こうとした。スミレちゃんが指差した。
「遠回りになるわ。あっちから行きましょう!」
「あっちから?あっちのほうが遠回りになるんじゃないの?」
「遠くならないわ。」
「あっ、そう。」
「あなたは、お喋りだから、こっちのほうが近いわ。」
「どういうこと?」
遠くで、中国語会話のお姉さんが、二人を発見して、手を振っていた。一平は気づいて、手を振った。
「あ〜〜あ、やっぱりあっちを走ったほうが良かったじゃん。」
「急ぎましょう!」
「あ〜〜あ、レッスン2をやりたかったなあ〜。」
「人生は短いわ。早く行きましょう〜!」
「僕は、まだ若いんだよ。」
「人生は、あ〜〜〜っと言う間に終わってしまうわ。」
「なあんだ、遠回りになるって、このことだったのか?」
三匹の、よ〜いどん妖怪たちが、四十五度の角度で上空に向かって、びょ〜〜んと飛び出して行った。鳩や小鳥たちが驚いて逃げていった。森の公園は、平和で満ちていた。
スミレちゃんは、意地悪く微笑んで楽しそうに歌いだした。
「ろ〜れん、ろ〜れん、ろ〜〜れん♪」


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