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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第83回   ボンジョビ・スミレ
「たのも〜〜う!」
スミレちゃんの声に気付いた浦賀源内が出てきた。
「おやおや、スミレちゃんじゃないか。どうしたの?」
「ぽんぽこ狸のからくり人形を取りに来たんで〜す。」
「あっ、そうか。今日だったね。」
「そうで〜〜す。」
「ちょっと待って、門を開けるから。」
門の大きな扉が、霧のように消えた。一平はびっくりした。
「わっ、消えた!」
「これ、立体映像なの。」
「立体映像…、だったら、誰でも入れるんじゃないの?」
「入れるけど、警報が鳴って、警備ロボットが出てくるの。」
「なるほどね。」
浦賀源内先生が出てきた。
「入って。」
スミレちゃんは、「はい。」と言って入って行った。若者は、「おじゃまします。」と言って、入って行った。
芝生の庭には、大きな木のテーブルと椅子があった。浦賀源内が、微笑んで二人を迎えた。
「よく来たねえ、スミレちゃん。ここまでどうやって来たの?そちらの方は?」
「お客さまの、高坂さんです。」
一平が、ペコリと頭を下げ挨拶した。
「高坂一平です。」
「この人が運転して、スミレ号で来たんです。」
「スミレ号?」
「お父さんが作ってくれた、電動アシスト自転車スミレ号で来たんです。
「ほ〜〜、どんなん?」
「門の外に止めてあります。」
「持ってきて、見せてくれない?」
「いいですよ。」
一平が、「わたしが持ってきます。」と言って出て行った。すぐに戻ってきた。
スミレちゃんが、にこっと笑って指差した。
「これです。」
「ほほ〜〜〜。なかなか可愛くっていいじゃない。」
「いいでしょう〜〜〜!」
「ほ〜〜〜。ちょっと乗ってもいいかな。」
「いいですよ。」
浦賀源内は、乗る前に三輪自転車スミレ号の下を覗き込んだ。
「三段変則、三六ボルトのモーターかぁ…、なるほど。」
浦賀源内は、スミレ号にまたがった。
「ちょっと、芝生の上を走ってくる。」
走り出した。芝生の先端まで行って、戻ってきた。
「なるほど、負荷が重くなると、自動で電動アシストするんだね。おまけに回生ブレーキだ。」
「なあに、それ?」
「ブレーキで充電するんだよ。」
「ふ〜〜〜ん。」
「これ、気に入った!百万円で譲ってくれない?」
「これは駄目よ〜!」
「じゃあ、お父さんに頼んで、同じものを作ってくれないかなあ。ちょっと大きいのがいいかな。」
「聞いてみないと、分からないわ。」
「じゃあ、聞いてよ。電話持ってくるから。」
浦賀源内は、携帯電話を取りに家の中に戻ろうとした。一平が声を掛けた。
「あっ、電話だったら、ここにあります。」
浦賀源内は、「あっ、そう。」と言って、戻ってきた。
一平は、スミレちゃんに携帯電話を渡した。
「はい。これ使っていいよ。」
スミレちゃんは、浦賀源内に尋ねた。
「何て言えばいいの?」
「出たら、僕が話すよ。」
「分かったわ。ちょっと待っててね。」
スミレちゃんは、電話を掛けた。
「チェックメイトキングツー、チェックメイトキングツー、こちらスミレちゃん…」
浦賀源内は、目の上の空の一点を睨んだ。それから、口を開いた。
「おっかしいよ〜、スミレっちゃ〜ん!自分のことを、ちゃんだなんてぇ〜!」
「あら、そうかしら?」
「そうだよ。」
「チェックメイトキングツー、チェックメイトキングツー、応答せよ…、おう父さん…・」
一平は、思わずのけぞった。
「応答せよ、応答さん?なんだいそりゃあ?」
「…こちら、ボンジョビ。」
「こちら、ボンジョビ?なんのこっちゃあ〜?」
「こちら、ぼんじょびスミレ。」
「ボンジョビ・スミレ?なんのこっちゃあ〜?』
浦賀源内が諭(さと)した。
「スミレちゃん、無線機じゃないんだから、相手が出たら話せばいいんだよ。」
「あっ、そっか!」
源内先生は、首をひねっていた。
「スミレちゃんは、ときどき変なことをするよねえ?戦争にでも行ったのかな?」
スミレちゃんは、不気味に笑っていた。


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