スミレちゃんは、左右の手を、交互に押し出しながら、ダンスステップで帰ってきた。 「三歩進んで、二歩下がる♪三歩進んで、二歩下がる♪」 けんけん姉さんは、台所で何かをやっていた。」 「スミレちゃ〜ん。」 スミレちゃんは、ダンスを止めて答えた。 「は〜〜い!」 スミレちゃんは、台所にやってきた。 「バター作るの、手伝って。」 「は〜〜い。」 「そこの、生クリーム取って。」 「これ?」 「それは、ホイップクリーム。となりのやつ。」 「これね。」 「そうよ。」 「はい。」 姉さんは、氷水の入った大きなボールに、小さなボールを入れ、その中に市販の生クリームを注いだ。 「スミレちゃん、泡だて器を取って。」 「これね、はい。」 「ありがとう。」 姉さんは、泡だて器で生クリームを掻き混ぜはじめた。 「空気をクリームの中に取り入れるようにして、よく泡立てるのよ。」 「ふ〜〜ん。」 「フンワリしてきますが、それでもさらに掻き混ぜつづけます。」 「ふ〜〜ん。」 「だんだんモロモロになってきて、水がでてきます。」 「ふ〜〜ん。」 「白から、だんだん黄色っぽくなってきます。」 「ぅわ〜、ほんとだぁ。」 「さらにかき混ぜつづけていくと、急に水が増えます。」 「ぅわ〜、ほんとだぁ。」 「もう混ぜることができなくなり、脂肪の固まりと水とがはっきり分かれます。」 「ぅわ〜!」 「この黄色い固まりがバターです。」 「ぅわ〜!」 「できたバターを、冷たい水でさっと洗って、水を切ったバターを容器に入れ、塩を加えて混ぜます。」 「これで、できあがり。」 「スプーンの背などで押しかため、ラップなどで被(おお)い、冷蔵庫で冷やします。」 「ぅわ〜〜、もうできちゃったの。」 「簡単でしょう。」 「びっくりしちゃった。」 「次に作るときには、スミレちゃんも、やってみる?」 「わ〜、いいの〜?」 「いいわよ。」 「わ〜〜!」 姉さんは、目玉を寄せた。スミレちゃんは、驚いた。 「どうしたの?」 「…3(スリー)・2(ツー)・1(ワン)!」 「お〜〜、イェ〜!」 二人は、カラオケに向かって走り出した。 スミレちゃんは、カラオケのスイッチを入れた。姉さんが選曲すると、スミレちゃんが、マイクを握った。 「テンプの秘密の合言葉ね!お〜〜、イェ〜!」 「お姉さん、ステップは、こうよ。三歩進んで、二歩下がる♪」 「なに、それ?」 「サルサっていうの。」 「それ、サルサ?」 「知ってるの?」 「それ、変だよ。まるっきし、変!」 「そうかしら。」 「サルサは、こうやるの。」 「ぅわ〜〜、きゃっこいい〜!どひゃ〜〜!」 二人は、踊りだした。そして、歌いだした。
3(スリー) ・ 2(ツー) ・ 1(ワン) お〜〜、いぇ〜 ♪ ふたりがいつも逢うときぃは これが二人の〜 合言葉〜 ♪ なにも言わずに なにも言わずに 黙っていても分かるのさ〜 ♪
楽しく、踊って歌っていると、高坂一平が入って来た。 「ぅわ〜〜、二人とも上手いなあ〜!」 姉さんは、踊るのを止めた。 「高坂さん、夏の四五度対策会議は終わったの。」 「終わりました。」 スミレちゃんも、踊るのを止めた。一平は、スミレちゃんに拍手をした。 「上手だねえ、スミレちゃん。」 「そうかしら?」 「高坂さんも踊りません?」 「お父さんに頼まれて、これから客寄せの、からくり人形を取りに行くんです。」 「ああ、そうなんですか。場所、分かりますか?」 「地図をもらいました。」 スミレちゃんは、目を輝かせていた。 「わたしも行きたいなあ。」 「行ってらっしゃいよ。スミレちゃん。」 「ひゃっほ〜〜ぉ!」 スミレちゃんは、不思議な妖精の昔歌を歌いだした。
パンパン手拍子 からくり人形 パンパン手拍子 からくり人情 物人(ものびと)こぞりて からくり人形 からくり人情
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