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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第65回   華麗なるダブルクリック
龍次さんは、面白いキャラをしてますねえ。女性にモテモテでは?」
「とんでも、八分!」
「また、是非来てください。」
「えっ、ほんとぉ?」
「ええ。漫画の脇役のイメージにピッタリなんです。」
「脇役?…主役じゃなくって?」
「主役は、残念ながら、あの方なんですよ。」机の横のイラストを指差した。
「お〜〜〜、風魔小太郎!」
「アイヌ忍者・風魔小太郎です。」
「アイヌ忍者だったんだ…」
「風魔小太郎は、アイヌという説があるんですよ。」
「そうか、風魔小太郎は、アイヌだったのか…」
「説です、説。」
「アイヌだったのか…」
「あなたには、風の匂いがしますわ。」
「風の匂い…」
「風魔忍者のような、風の戦慄を感じますわ。」
「風の戦慄…、そう言えば、友人からよく言われます。目が風のように鋭いって。」
スミレちゃんが、「ほんと〜う?」と言って、上目で睨んで、首をかしげた。
龍次は、むきになって返答した。「ほんとだよ。子供には分からないんだよ!」
「ふ〜〜ん。」
美人の涌井いづみは、なぜか龍次の顔を見て、不気味に微笑んでいた。
「ちょくちょく来てくださいね。食べたりはしませんから。」
「ほんとに、来てもいいの〜?」
「ええ。」
「わ〜〜〜、じゃあ来よう!」
「こちらから電話しますわ。おいしいトロピカルカクテルも用意して待っていますわ。」
「え〜〜〜、ほんとぉお!?酔わせて、食べるんじゃないの?」
「それもいいですね。」
龍次は、思わずのけぞった。
「うぉうぉ〜♪、ぃえぃえ〜〜ぃ!」
「面白い方ですねえ。あっ、お昼だわ!」
スミレちゃんも壁時計を見た。
「あ〜〜、帰らなきゃ〜!」
「帰らなくっちゃ♪帰らなくっちゃ〜♪」
「なに、それ?」
「むかし、流行った歌だよ。」
「ふ〜〜ん。」
「龍次さんは、お食事の御予定は?」
「ありましぇ〜ん!」
「じゃあ、わたしの十八番、お好み焼きそばを食べていってください。スミレちゃんは、けんけん姉さんが待ってるのよね。」
「そうなの。帰るわ。」
スミレちゃんは、一人で玄関のドアを開けた。
龍次が手を振った。「ばいば〜い!今度、ゆっくりと、華麗なるダブルクリップを教えてあげるよ。」
「そんなの、いいわ!」スミレちゃんは、帰って行った。
涌井いずみが尋ねた。
「ダブルクリップ?」
「クリップじゃなくって、クリック!もぉ〜〜〜!」
龍次は、自分のほっぺを右手で叩いた。

「そうだ。僕はこれから、風のように自由に生きよう!」
「どうしたんですか?」
「風のように、生きるんです。自分で仕事を作ってね。」
「自分で仕事を作って、ですか。難しいですよ。」
「僕はインテリなんです。そのくらいやればできます。今までやらなかっただけなんです。」
「じゃあ、頑張ってください。」
「一生懸命に、今まで生きてきたんですよ!懸命に働いてきたんですよ。でも、もういいです。飽きました。」
「新しい人生ですね。」
「そうです!リーチです!」
「そんなことより、わたしが料理している間に、さっそく名刺を注文しておいてくれませんか。」
「いいですよ。」
「龍次さんって、なんだか面白いなあ〜。もてもてでしょう?」
「とんでも、八分!」

 僕らは 紅の夕陽の中を 必死に走ってきた
  互いに 未熟な心を傷つけあいながrら 必死に生きてきた
   でも もうおしまい そんなチャチな人生は ここでおしまい せめて僕は僕で終わりたい

「僕は、働くだけの蟻ん子なんかじゃない!文明を創造できる、ひとりの人間なんだぁ!」
「もう、一声!」
「このまま、黙って死んでたまるか〜!男のどしょっ骨を見せてやるぜ〜〜!」
「若いときと違って、失敗は許されませんわ。落ち着いて考えたほうがいいですわ。」
「…そうですね。」

  ただ生きているんじゃなく ただ生きているんじゃなく
     この世に何かを残そう この世に何かを残そう ただ生きているんじゃなく


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