龍次さんは、面白いキャラをしてますねえ。女性にモテモテでは?」 「とんでも、八分!」 「また、是非来てください。」 「えっ、ほんとぉ?」 「ええ。漫画の脇役のイメージにピッタリなんです。」 「脇役?…主役じゃなくって?」 「主役は、残念ながら、あの方なんですよ。」机の横のイラストを指差した。 「お〜〜〜、風魔小太郎!」 「アイヌ忍者・風魔小太郎です。」 「アイヌ忍者だったんだ…」 「風魔小太郎は、アイヌという説があるんですよ。」 「そうか、風魔小太郎は、アイヌだったのか…」 「説です、説。」 「アイヌだったのか…」 「あなたには、風の匂いがしますわ。」 「風の匂い…」 「風魔忍者のような、風の戦慄を感じますわ。」 「風の戦慄…、そう言えば、友人からよく言われます。目が風のように鋭いって。」 スミレちゃんが、「ほんと〜う?」と言って、上目で睨んで、首をかしげた。 龍次は、むきになって返答した。「ほんとだよ。子供には分からないんだよ!」 「ふ〜〜ん。」 美人の涌井いづみは、なぜか龍次の顔を見て、不気味に微笑んでいた。 「ちょくちょく来てくださいね。食べたりはしませんから。」 「ほんとに、来てもいいの〜?」 「ええ。」 「わ〜〜〜、じゃあ来よう!」 「こちらから電話しますわ。おいしいトロピカルカクテルも用意して待っていますわ。」 「え〜〜〜、ほんとぉお!?酔わせて、食べるんじゃないの?」 「それもいいですね。」 龍次は、思わずのけぞった。 「うぉうぉ〜♪、ぃえぃえ〜〜ぃ!」 「面白い方ですねえ。あっ、お昼だわ!」 スミレちゃんも壁時計を見た。 「あ〜〜、帰らなきゃ〜!」 「帰らなくっちゃ♪帰らなくっちゃ〜♪」 「なに、それ?」 「むかし、流行った歌だよ。」 「ふ〜〜ん。」 「龍次さんは、お食事の御予定は?」 「ありましぇ〜ん!」 「じゃあ、わたしの十八番、お好み焼きそばを食べていってください。スミレちゃんは、けんけん姉さんが待ってるのよね。」 「そうなの。帰るわ。」 スミレちゃんは、一人で玄関のドアを開けた。 龍次が手を振った。「ばいば〜い!今度、ゆっくりと、華麗なるダブルクリップを教えてあげるよ。」 「そんなの、いいわ!」スミレちゃんは、帰って行った。 涌井いずみが尋ねた。 「ダブルクリップ?」 「クリップじゃなくって、クリック!もぉ〜〜〜!」 龍次は、自分のほっぺを右手で叩いた。
「そうだ。僕はこれから、風のように自由に生きよう!」 「どうしたんですか?」 「風のように、生きるんです。自分で仕事を作ってね。」 「自分で仕事を作って、ですか。難しいですよ。」 「僕はインテリなんです。そのくらいやればできます。今までやらなかっただけなんです。」 「じゃあ、頑張ってください。」 「一生懸命に、今まで生きてきたんですよ!懸命に働いてきたんですよ。でも、もういいです。飽きました。」 「新しい人生ですね。」 「そうです!リーチです!」 「そんなことより、わたしが料理している間に、さっそく名刺を注文しておいてくれませんか。」 「いいですよ。」 「龍次さんって、なんだか面白いなあ〜。もてもてでしょう?」 「とんでも、八分!」
僕らは 紅の夕陽の中を 必死に走ってきた 互いに 未熟な心を傷つけあいながrら 必死に生きてきた でも もうおしまい そんなチャチな人生は ここでおしまい せめて僕は僕で終わりたい
「僕は、働くだけの蟻ん子なんかじゃない!文明を創造できる、ひとりの人間なんだぁ!」 「もう、一声!」 「このまま、黙って死んでたまるか〜!男のどしょっ骨を見せてやるぜ〜〜!」 「若いときと違って、失敗は許されませんわ。落ち着いて考えたほうがいいですわ。」 「…そうですね。」
ただ生きているんじゃなく ただ生きているんじゃなく この世に何かを残そう この世に何かを残そう ただ生きているんじゃなく
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