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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第63回   にゃんにゃんにゃん!
「愛美(めぐみ)ちゃん、スケッチブック!」
「はい、はい、はい!」
アシスタントの愛美は、急いでスケッチブックとサインペンを差し出した。
美人漫画家の涌井いづみは、慌てて描き始めた。
「…よし!」
彼女は、スケッチブックを持って走り出した。
スミレちゃんは、驚いた。
「ぅわ〜〜〜、先生、早いわ〜!」
龍次は、慌ててアシスタントの愛美に質問した。
「どうしたんですか?」
「オバケ、つまり漫画のアイデアが浮かんだんです。早く帰って描かないと、イメージが消えてしまうんです!」
そう言うと、後を追って駆け出した。
スミレちゃんは、唖然としていた。
一平は、走っていく二人を見ていた。
「オバケとは、イメージのことだったのか。」
龍次も見ていた。
「大変な仕事だなあ…」
スミレちゃんは、驚きで目を丸くしていた。
「早いわあ。まるで、救急車みたいだわ。」
「そうだねえ。」
「サイレンを鳴らしたほうがいいわ。」
「そうだねえ。」
「さあ、わたしたちもダンスをしながら帰りましょう。」
「まだ、ダンスやるの?」
「ランラランラランラン♪ランラランラランラン♪」
「ダンスをしながら、帰るの?」
二人は、仕方なく。スミレちゃんの真似をしながらついて行った。
龍次が、ピンクのデジタルプレーヤーを発見した。
「あっ、プレーヤーだ。」
「あっ、ほんとだ。きっと、小さいから落として行ったんだわ。」
プレーヤーは、観音開きの手の平サイズだった。
「持って行ってあげましょう。」
「そうだね。」
一平は、腕時計を見ていた。
「あっ、正午だ。」
「じゃあ、先に帰ってて。」
「けんけん姉さんに、そう伝えておくよ。』
「ありがとう。」
「涌井さんの家は遠いの?」
「あそこに見える、豹柄の二階建ての家よ。」
「ああ、あれね。」
「そうよ。」
一平は、ゴミ袋を持ちながら手を振り、妖怪温泉の方に向かって歩き出した。
「わたしたちは、こっちよ。行きましょう。」
スミレちゃんと、右手と左手を交互に前に押し出しながら、ダンスステップで豹柄の二階建ての家に向かって歩き出した。
「僕もやるの?」
「そうよ。」
「三歩歩いて、二歩下がる♪はい!」
龍次も仕方なく、ダンスステップで歩き出した。
「スミレちゃん。これじゃあ、時間が掛かかっちゃうよ〜〜。人生が終わっちゃうよ〜!」
「そうね。きっと、死んでしまうわね。」
「そうだよ。普通に歩こうよ。」
「じゃあ、三歩歩いて、一歩下がる♪はい!」
「それじゃあ、五十歩百歩だよ〜。」
スミレちゃんは、言葉の意味が分からなかった。
「なぁに、それ?」
「にゃん、にゃんにゃん!」
「どうしたの?」
龍次は、たまらず踊りを止め走り出した。
「僕は、きときっと、甘えん坊なんだよ!」
スミレちゃんも、踊りを止めて走り出した。
「待ってぇ〜〜〜!」
意味不明の、にゃんにゃんにゃんの甘えん坊の龍次だった。

 僕は どうして生まれて来たんだろう 僕は どうしてここにいるのだろう
  僕は死ぬまで 僕しか知らない
   いくら にゃんにゃんにゃんと叫んでも ここには僕しかいない


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