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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第62回   謎のオバケ
一平が、龍次に尋ねた。
「その不思議な会話術、どこで習得なされたんですか?」
「習得なんてもんじゃあないですよ。ただの、アルコールの副産物ですよ。」
スミレちゃんは、不思議そうな顔をしていた。
「まるで、七色の虹の会話術だわ。」
「そっうかなあ。」
ふたりの美女が、清楚な服装で、しなしなと輝きながら,砂浜で軽やかなステップで踊っていた。
スミレちゃんは、近づくと、楽しそうに二人に尋ねた。
「楽しそうね。何なの、それ?」
美女の涌井いづみが、踊りながら答えた。
「サルサよ。」
「さるさ…」
アシスタントの白鳥愛美(いらとりめぐみ)が、楽しそうに拍子木を打ち鳴らしていた。
「ちょっと待ってね。オバケが出たときのために、準備運動してくるから。」
彼女は、ピンクのジーンズで、懸命に走り出した。五十メートルほどで止まり、全力で戻ってきた。
スミレちゃんは、びくりした。
「わ〜〜、早いわ〜!」
「このくらい早くないと、オバケに逃げられるのよ。」
龍次も一平も、びっくりした顔をしていた。龍次が尋ねた。
「オバケって、何ですか?」
「突然に、どこからともなく出てくるんですよ。」
「そうなんですか。」
「先生、始めてもいいですか。」
「始めましょう。」
アシスタントの愛美が、持ってきた音楽プレーヤーを鳴らした。
「スミレちゃん。こうやって踊るのよ。ランラランラランラン♪」
簡単なステップを踏んで見せた。
「さあ、やって。」
「こう…」
「上手いわねえ。スミレちゃんは!」
「なんだか、とっても楽しいわ。」
「才能があるかもよ。」
「そうかしら」と言いながら、スミレちゃんは真似をしながら踊っていた。
龍次と一平は、呆然と見ているだけだった。
涌井いづみが、二人に踊りながら言った。
「お正月だから、踊りましょうよ。」
龍次は、照れながら答えた。
「僕、踊りとかは、まるっきり駄目なんですよ。」
「教えてあげるわ。わたしの足を、よく見てて。」
「……」
「はい、真似して。」
「こうですか?」
「うん、なかなかいいわ。そちらの若い方も、どうですか。」
「真似をすればいいんですね?」
「ええ。」
涌井いづみが、一平にアシストした。
「わあ〜、難しいなあ。」
「それじゃあ、シャドーボクシングだわ。」
「はい。アマボクシングをやってました。」
「足の運びが、そういう感じだわ。」
彼女は、ぎごちなくロボットのように踊っている龍次の方を見た。
「なにか、やってらしたんですか?」
「なんか、変ですか?学生の頃、ロボットにダンスを組み込んでたんです。こういう感じで…」
「それじゃあ、阿波踊りだわ。」
「どうしたら、いいんでしょう?」
「もっと、身体の力を抜いてください。」
「こうですか?」
「それじゃあ、蛸ですよ。抜きすぎです。」
「難しいなあ…」
「やってると、そのうちに覚えますよ。」
「うわ〜〜〜、出た〜〜!」
涌井いづみは大声で叫んだ。
スミレちゃんも、龍次も一平も、彼女の悲鳴にびっくりして、踊りをやめた。
龍次が、周りを見回した。
「どこ、どこ、どこ!?」


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