スミレちゃんは、お地蔵さんの前で立ち止まった。ピクニックバスケットを、丁寧に置いた。 「みんな、演奏開始!」 お伽囃子鼓笛隊の七人の小人たちは、バスケットの中で一斉に演奏を始めた。 「何してるの?」 「いつも、お地蔵さん寂しそうだから、聞かせてあげてるの。」 一平は、どこかで聞いたような曲だったので、スミレちゃんに尋ねた。 「この曲、何て言うの?」 「希望の虹と言う曲よ。」 スミレちゃんは、歌いだした。
ソソソラソミ〜レド レミファ〜ラソどどソ〜 ♪ ラどシれどれどラソ〜 ♪ みんなで みんなで ぼくらの町を 心の花でかざろうよ〜 ♪
「とってもいい曲だねえ。」 「そうね。」 演奏は、一平が海を眺めてるうちに終わった。 「さあ、行きましょう。」 松原を出たところの道路の歩道に、電化製品らしいものが置いてあった。 「何かしら、これ?」 「不法投棄だな。ミニ冷蔵庫だね。」 「冷蔵庫なの。」 「使えなくなったから、捨てて行ったんだよ。」 「捨てて行ったの?」 「回収不能って、貼り紙がしてあるから、そうだよ。」 「じゃあ、持って帰ってもいいのかしら。」 「大丈夫だよ。でも使えないと思うよ。」 「直したら使えるでしょう。これいいわ。小っちゃくて。七人の小人たちの食べ物も入るわ。」 「直れば使えるけど…」 「お父さんなら、発明家だから、ちょちょいのちょいで直せるわ。」 「そうだね。ちょちょいのちょいだね。」 「おまけに、車もついてるわ。きっと、持って行きなさいって言うことだわ。」 冷蔵庫は、キャリーに載せられ、ロープで縛られていた。 「そうかなあ…」 「きっと、そうに決まっているわ。神様が、わたしたちを、ここに案内したんだわ。」 「そうかも知れないね。」 一平は、微笑んだ。 「じゃあ、運んであげるよ。」 「また戻るけど、いいの?」 「うん、大丈夫。引っ張って行くだけだから。」 二人は、来た道に向かって歩き出した。
らんらんらん♪ らんらんらん♪
ビビ〜〜〜♪
後ろにプロペラのついたスケボーに乗って、ぶんぶんスケボー族が、道路を凄いスピードで、砂塵を吹き飛ばしながら走り去って行った。カラスたちが驚いて舞い上がった。 「ぶんぶんスケボー族だわ。」 「正月から、訳の分からない奴らだなあ。」 「あの人たち、どこに行くの?」 「ただ走ってるだけなんだよ。」 「じゃあ、目的の場所はないんだね。」 「そんなのは無いんだよ、走るのが目的なんだよ。」 「馬鹿みたい。時間とエネルギーの無駄だわ。」 「そうだねえ。」 「人間って、いつでも訳の分からないことするのね。」 「そうだねえ。」 「一度っきりの大切な人生を、訳の分からないまま生きて、訳の分からないまま死んで行くんだわ。」 「そうかも知れないね。」
訳の分からないまま 生きてきて 訳の分からないまま 死んで行く 訳の分からないまま 人生が終わる あれれれのれ
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