「私たち、風魔一族なんです!」 『なんと!?』 「風魔小太郎の直系の子孫なんです。」 『ほんとうか!?』 「ですから、わたしも父も、妖怪や亡霊と話すことができます。」 『そうか、風魔一族だったのか。』 「生まれたときから、万物と話せる風魔の術が具(そな)わっていました。」 『風魔の術…、ずいぶん昔のことなので、すっかり忘れていたが。思い出したぞ。』 「風魔の神々の書には、秘術には貧乏神さまの力が必要。と書いてありました。」 『その通り、風魔の秘術には、わしらの力が必要だ。』 「お願いします。その力をかしてください。」 若者が立ち上がって、深く頭を下げた。 「お願いします。百万円くらいだったら出せます!」 『そんなものは要らないよ。』 「何でもいいです。お礼は必ずします。』 若者の目は潤んでいた。 『…味噌おにぎりだったら、引き受けてもいいぞ。』 姉さんが、にこっと笑った。 「えっ、そんなものでいいんですか!?」 『ああ、いいよ。』 「だったら、直ぐに作ります。お待ちください!」 姉さんは、台所に駆けて行った。 なぜか、貧乏神は若者に説教をはじめた。 『人間は、貧しく強くなければいかん。』 「貧しく…ですか?」 『貧しさが強さ養うのだ。貧しさが心を養うのだ。』 「はい。」 『裕福になると、人間は堕落して、見も心も弱くなり病気になる。』 「はい!」 『裕福になると、人間は頭も身体も使わなくなって馬鹿になる。』 「はい!」 『大地に迷惑を掛けずに、慎(つつ)ましく謙虚に生きることが大切だ。』 「はい!」 「人間だけが生きているのではないぞ。」 「はい!」 「楽をすると、身も心も腐り、必ず罰(ばち)が当る。」 「はい!」 姉さんが、味噌おにぎりを大皿にのせ持ってきた。丁寧に貧乏神の前に置いた。 「どうぞ、お召し上がりください。」 「おお〜、来たか来たか、味噌おにぎり。待ってたぞ〜!」
貧乏神を知らない不幸な子供たち いったいどくに行くんだろう 魂のない食べ物で空腹を満たし 病気で歩けなくなった子供たち いったいどくに行くんだろう
人々は汚れた空気の中を ひたすら歩いている 死に向かって 貧乏神に捕まったら大変だ 貧乏神に捕まったら大変だ 貧乏神に捕まったら大変だ
大切なことを教えてくれる大地は もうここにはない
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