「るり色〜、風吹く〜〜、なんとかなあとかぁ〜〜♪」 一平は黙って、スミレちゃんの歌を聞いていた。スミレちゃんが尋ねた。 「るり色って、どんな色?」 「瑠璃色?」 「そう、るり色。」 「ちょっと赤い青い色だよ。」 「ああそうなの。」 「深い空の色かな。」 「ああそうなの。」 一平のスミレ号は、交差点で止まった。けんけん姉さんの姿はなかった。 前を、頭脳警察のパトロールカー・パンタが通って行った。
世の中に迷惑をかけている 人間のクズがありましたら パンタが直ちに 直ちに回収にまいります 通報をしてください
「パンタだわ。」 「何かあったのかな〜?」 「どうして?」 「ふつうパンタは、何か事件がないと、こんなところには来ないんだよ。」 「ふ〜〜ん、そうなの。」 「おかしいなあ…」 「詳しいのね。」 「ちょっとね。」 パンタが通り過ぎると、信号が変わった。一平は急いで渡った。一平は、お地蔵さんにペコリと頭を下げた。スミレちゃんは、お地蔵さんに、「ただいま〜〜!」と言っていた。 前方から、粗末な木の杖をついた妖怪がやって来た。 「スミレちゃん、妖怪だ。」 「あっ、地団駄小僧だわ。」 「地団駄小僧?」 「いつも、どこかで地団駄を踏んでいるの。」 「どうして?」 「そんなこと知らないわ。きっと何かが思うようにいかなくって悔しいんでしょう。」 「なんでも出来ると思ってるんだ?」 「きっとそうだわ。世の中を甘くみているのよ。」 「そうだね。」 「鳥は、どう頑張っても、魚のようには泳げないわ。」 「そうだね。」 「魚は、どう頑張っても、鳥のようには飛べないわ。」 「そうだね。左足を、びっこしてるよ。」 「きっと、地団駄を踏み外したんだわ。」 「はっはっは、スミレちゃん面白い!それ。」 「自業自得だわ。」 「馬鹿は、痛い目にあって、やっと気づくんだよ。そこが利口な人間との違いだね。」 「そうですね。」 「でも、馬鹿がいないと、物は売れないよね。」 「そうですね。」 地団駄小僧は、お地蔵さんの前を、挨拶もしないで通り過ぎて行った。
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