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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第106回   地団駄小僧
「るり色〜、風吹く〜〜、なんとかなあとかぁ〜〜♪」
一平は黙って、スミレちゃんの歌を聞いていた。スミレちゃんが尋ねた。
「るり色って、どんな色?」
「瑠璃色?」
「そう、るり色。」
「ちょっと赤い青い色だよ。」
「ああそうなの。」
「深い空の色かな。」
「ああそうなの。」
一平のスミレ号は、交差点で止まった。けんけん姉さんの姿はなかった。
前を、頭脳警察のパトロールカー・パンタが通って行った。

 世の中に迷惑をかけている 人間のクズがありましたら
  パンタが直ちに 直ちに回収にまいります 通報をしてください

「パンタだわ。」
「何かあったのかな〜?」
「どうして?」
「ふつうパンタは、何か事件がないと、こんなところには来ないんだよ。」
「ふ〜〜ん、そうなの。」
「おかしいなあ…」
「詳しいのね。」
「ちょっとね。」
パンタが通り過ぎると、信号が変わった。一平は急いで渡った。一平は、お地蔵さんにペコリと頭を下げた。スミレちゃんは、お地蔵さんに、「ただいま〜〜!」と言っていた。
前方から、粗末な木の杖をついた妖怪がやって来た。
「スミレちゃん、妖怪だ。」
「あっ、地団駄小僧だわ。」
「地団駄小僧?」
「いつも、どこかで地団駄を踏んでいるの。」
「どうして?」
「そんなこと知らないわ。きっと何かが思うようにいかなくって悔しいんでしょう。」
「なんでも出来ると思ってるんだ?」
「きっとそうだわ。世の中を甘くみているのよ。」
「そうだね。」
「鳥は、どう頑張っても、魚のようには泳げないわ。」
「そうだね。」
「魚は、どう頑張っても、鳥のようには飛べないわ。」
「そうだね。左足を、びっこしてるよ。」
「きっと、地団駄を踏み外したんだわ。」
「はっはっは、スミレちゃん面白い!それ。」
「自業自得だわ。」
「馬鹿は、痛い目にあって、やっと気づくんだよ。そこが利口な人間との違いだね。」
「そうですね。」
「でも、馬鹿がいないと、物は売れないよね。」
「そうですね。」
地団駄小僧は、お地蔵さんの前を、挨拶もしないで通り過ぎて行った。



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