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作品名:シュールミント 作者:毬藻

第101回   心の寝場所
スーパーの店内では、店員がロボットみたいに、働き蟻のようにちょこちょこ働いていて、買い物客が御主人様のように買い物をしていた。それはそれは、人間世界のいつもの光景だった。そこには、大地の恵みが整然と並べ置かれていた。それはそれは、人間以外の動物には不自然な光景だった。
「さあ、大地の恵みに感謝して、買い物をしましょう!」
「そうだねえ。」
「大地が荒れ果てたら、食べ物は無くなるわ。」
「そうだねえ。」
「そして、動物や人間も死んでしまうわ。」
「そうだねえ。」
「大地に感謝しましょう。」
「感謝の心は大切だねえ。」
「最近は、大地に感謝しない人が多いわ。食べ物があって、当たり前と思ってる人が多いわ。」
「そうだねえ。」
「そういう人には、きっときっとバチが当たるわ。」
「もう、当たっているよ。」
「まだ当たっていないわ。今に大きなバチが当たるわ。」
「人間に?」
「そう、偉そうに威張ってる人間に。蟻は一生懸命に働いているけど、ちっとも威張ってはいないわ。蟻は偉いわ。」
「なるほど、そうかもね。スミレちゃんは、面白いこと言うねえ。」
「そうかしら。」
「やっぱり人間と違って、凄い感性だよ。」
「大地に感謝しないで変な生き方をしてると、心が病気になってしまうわ。」
「そういうことだね。」
遠くで老人が転んだ。なかなか起き上がろうとはしなかった。近くに居た不良っぽい若者が抱きかかえて起こしてやった。
「ほら、人は見かけによらないわ。」
「そうだねえ。」
「ギャングのかっこうをして、ギャングをする人間はいないわ。」
「そうだねえ。」
「身体が硬いと、身体が怪我をするわ。」
「そうだねえ。」
「心が硬いと、心が怪我をするわ。」
「心が怪我?」
「心が、いろんな病気になってしまうわ。」
「うつ病みたいな?」
「そう。」
「心の寝場所がないと、人間は心の病気になってしまうわ。」
「心の寝場所?」
「心には寝場所が必要なの。」
「寝場所って?」
「心が安心できるところ。」
「心が安心できるところ?」
「幸せな家庭とか、安心できる場所とか、親とか友人とか。」
「ああ、そういうことね。」
「ペットでもいいわ。」
「だから、ペットを飼うのか…」
「楽しかった思い出でもいいわ。それがあれば、辛いことがあっても跳ね返せるわ。」
「な〜〜るほど。」
「辛いことばっかりだと、人間は心が硬くなって病気になるわ。」
「な〜るほど!」
一平は、感心して聴いていた。スミレちゃんは、アボガドの前で立ち止まった。
「アボガドだわ。」
「買うの?」
「妖精たちが好きなの。」
「お伽囃子鼓笛隊の?」
「そう。」
スミレちゃんは、アボガドを三個取った。けんけん姉さんがやってきた。キャリーには、大きな羽根の無い一羽のニワトリが入っていた。スミレちゃんはびっくりした。
「これ、食べるの?」
「そうよ。」
「こんな大きなもの、どうやって食べるのぅ?」
「お腹に色んなものを入れて、オーブンで焼いて食べるのよ。」
「わ〜〜、凄いなあ〜。」
「スミレちゃんの好きな果物も買っておいたわよ。」
「わ〜〜、大きなイチゴだわ〜!」
「大好きでしょう?」
「うん、大好き〜〜!」
「パパイヤもあるわよ。」
「わ〜〜い!」
「さあ、帰りましょう!」


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