スーパーの店内では、店員がロボットみたいに、働き蟻のようにちょこちょこ働いていて、買い物客が御主人様のように買い物をしていた。それはそれは、人間世界のいつもの光景だった。そこには、大地の恵みが整然と並べ置かれていた。それはそれは、人間以外の動物には不自然な光景だった。 「さあ、大地の恵みに感謝して、買い物をしましょう!」 「そうだねえ。」 「大地が荒れ果てたら、食べ物は無くなるわ。」 「そうだねえ。」 「そして、動物や人間も死んでしまうわ。」 「そうだねえ。」 「大地に感謝しましょう。」 「感謝の心は大切だねえ。」 「最近は、大地に感謝しない人が多いわ。食べ物があって、当たり前と思ってる人が多いわ。」 「そうだねえ。」 「そういう人には、きっときっとバチが当たるわ。」 「もう、当たっているよ。」 「まだ当たっていないわ。今に大きなバチが当たるわ。」 「人間に?」 「そう、偉そうに威張ってる人間に。蟻は一生懸命に働いているけど、ちっとも威張ってはいないわ。蟻は偉いわ。」 「なるほど、そうかもね。スミレちゃんは、面白いこと言うねえ。」 「そうかしら。」 「やっぱり人間と違って、凄い感性だよ。」 「大地に感謝しないで変な生き方をしてると、心が病気になってしまうわ。」 「そういうことだね。」 遠くで老人が転んだ。なかなか起き上がろうとはしなかった。近くに居た不良っぽい若者が抱きかかえて起こしてやった。 「ほら、人は見かけによらないわ。」 「そうだねえ。」 「ギャングのかっこうをして、ギャングをする人間はいないわ。」 「そうだねえ。」 「身体が硬いと、身体が怪我をするわ。」 「そうだねえ。」 「心が硬いと、心が怪我をするわ。」 「心が怪我?」 「心が、いろんな病気になってしまうわ。」 「うつ病みたいな?」 「そう。」 「心の寝場所がないと、人間は心の病気になってしまうわ。」 「心の寝場所?」 「心には寝場所が必要なの。」 「寝場所って?」 「心が安心できるところ。」 「心が安心できるところ?」 「幸せな家庭とか、安心できる場所とか、親とか友人とか。」 「ああ、そういうことね。」 「ペットでもいいわ。」 「だから、ペットを飼うのか…」 「楽しかった思い出でもいいわ。それがあれば、辛いことがあっても跳ね返せるわ。」 「な〜〜るほど。」 「辛いことばっかりだと、人間は心が硬くなって病気になるわ。」 「な〜るほど!」 一平は、感心して聴いていた。スミレちゃんは、アボガドの前で立ち止まった。 「アボガドだわ。」 「買うの?」 「妖精たちが好きなの。」 「お伽囃子鼓笛隊の?」 「そう。」 スミレちゃんは、アボガドを三個取った。けんけん姉さんがやってきた。キャリーには、大きな羽根の無い一羽のニワトリが入っていた。スミレちゃんはびっくりした。 「これ、食べるの?」 「そうよ。」 「こんな大きなもの、どうやって食べるのぅ?」 「お腹に色んなものを入れて、オーブンで焼いて食べるのよ。」 「わ〜〜、凄いなあ〜。」 「スミレちゃんの好きな果物も買っておいたわよ。」 「わ〜〜、大きなイチゴだわ〜!」 「大好きでしょう?」 「うん、大好き〜〜!」 「パパイヤもあるわよ。」 「わ〜〜い!」 「さあ、帰りましょう!」
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