「出た出た、国際反戦デー・新宿騒乱。1968年・昭和43年10月21日、午後8時頃に東京都新宿区で発生した新左翼暴動事件。暴動は翌日まで続き、約450人を逮捕した。電車は翌日の午前10時まで運転取りやめとなった。」 「それそれ。」 「映像もあるわ。」 彼女は映像をクリックした。 「わ〜〜、駅も電車も燃えてる!」 「だろう。嘘じゃないでしょう。」 「ほんとうだ。」 「わたしの父は、そんなこと何にも言ってなかったよ。」 「ノンポリだったんだよ。」 「のんぽり?」 「政治には興味のない人のこと。」 「へ〜〜〜、そういうの。」 「死語だよ。今時は誰も言わないよ。ハイカラと同じだよ。」 「はいから?」 「ハイカラー、ハイカラさんが通るって少女漫画があったでしょう。」 「うん、あったあった!」 「そのハイカラ。」 「つまり、センスがよくって、おしゃれってこと。」 「そういう意味だな。正確には、西洋風の身なりや生活様式のこと。」 「ああ、そうなの。」 「今時は、みんな西洋風だもんね。西洋の靴を履いてるもんね。」 「靴って、西洋風なんだ。」 「そうだよ。日本には無かったんだよ。」 「それまでは、何を履いてたの?」 「下駄とか、草鞋(わらじ)とかだよ。」 「わらじ?」 「藁(わら)で編んだ履物。」 「わら?」 「あ〜〜〜、もう!」 「わらって何?」 「藁(わら)は藁(わら)だよ。知らないの?」 「知らない。」 「ふ〜〜〜〜ん、困ったねえ。稲は知ってるよね?」 「ああ、知ってるよ。お米の母親でしょ。」 「お米の母親?」 「違うの?」 「まあね。そういう解釈もあるね。なんだか疲れるなあ。」 「どうして?」 「じゃあ、今度見に行こうか?」 「その、わらを?」 「そう、藁(わら)を。」 「いいわよ。今からでもいいわよ。」 「今から?そうだねえ。藁(わら)は今頃だしね。」 「じゃあ行きましょう。どうせ暇だから。」 「たしか、蝶子ちゃんは、川崎だったよね?」 「そうです。」 「川崎には、田んぼなんてあるかなあ〜?」 「無いわよ〜。」 「そうかあ〜。」 「外れだったらあるよね?」 「あるかなあ〜?」 「あるよ。」 「そこ見に行こうか、今から。どうせ帰り道だし。」 「そうですね。龍次さん、クルマ?」 「うん、そうだよ。」 「じゃあ、出ましょう。」 「ちょっと待って、もう少し様子を見よう。」 「なんで?」 「駐車場の場所が分からなくなっちゃったんだよ。」 「だったら、インターネットの地図で探せばいいじゃない。」 「あっ、そうか。」 「何てとこ?」 龍次は駐車券を見せた。 「猿の腰掛け駐車場…」 「知ってる?」 「知らない。」 「最近、変化に弱いんだよな〜。さっぱり応用が利かなくなっちゃって。置いた場所を忘れちゃうし、あ〜あ、駄目だなあ…」 「それって、ボケじゃない?やばいんじゃないの?」 「そろそろ、ボケがやってきたかな?」 「お酒の飲みすぎじゃないの?」 「関係あるの?」 「飲みすぎると、アル中ハイマーになるって、テレビで言ってたわよ。」 「アル中ハイマー!?」
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