催涙弾の煙が漂い、ガソリン臭が漂っていた。 新宿駅周辺は、暴徒化したガソリン猿人の集団によって占拠されていた。彼らには、政治的なスローガンなどはなく、ただ単に、ガソリン車で自由に走りたいだけの集団だった。 彼らは『自由に走らせろ〜!』と叫んでいた。 ガソリンの入った瓶が、あちこちで投げ込まれ、町は炎上していた。 治安を守る頭脳警察の最強治安ロボット<ハル>が投入された。 ガソリン猿人集団<ゾンビ>のリーダーであるモドキが命令を下した。 『ハルだ!退却〜〜〜!』 百人ほどの暴徒たちは、ばらばらになって逃げ出した。
え〜〜 こちら頭脳警察 社会に迷惑をかける人間のクズは 人間のクズ箱に直ちに回収されます
彼らは叫んでいた、『俺たちは、人間のクズじゃねえ〜〜!猿なんかじゃねえ〜〜〜!』 身長五メートル体重五百キロのハルは大きな巨体を揺らしながら、八本の高電圧の鞭を蛸の足のようにふるっていた。 自動的に伸びる電撃の鞭は、百メートル先の目標を倒す能力があった。 びゅ〜〜〜ん、と唸りながら電撃鞭は空を走っていた。 一人の暴徒が、ハルの鞭に捕まって宙を舞った。暴徒はそのまま道路に叩きつけられ、電撃ショックで動けなくなった。 街路樹に登って隠れていた者も、枝と一緒に撒きつけられて、折れた枝と一緒に宙を舞っていた。
その頃、なぜか自然薯の龍次は新宿にいた。小さなビルの三階のメイド喫茶でマシュマロコーヒーを飲んでいた。 「うわ〜〜〜、大変なことになったぞ。どうしよう。」 龍次以外の客たちも、不安気に窓の外の騒乱を眺めていた。 ビルの近くで、突然にクルマが爆発して燃え出した。 「こりゃあ、大変だ。出たほうがいいな。」 龍次は、お金を払うと、急いで店を出た。 催涙弾が、あちこちで炸裂していて、白煙が上がっていた。龍次は、思わずむせた。 「ごほんごほん!」 着ていた上着の片方で口を押さえた。 「うっ、目に来るなあ〜。」 目から涙が出てきた。 「これが催涙弾ってやつかあ。」 龍次は、煙の少ない方に向かって走った。立ち止まると、場所が分からなくなっていた。 「とにかく、早くここを出よう。クルマを止めてある駐車場はどこだ?」 焦りと催涙ガスで、思考が混乱していた。 「どこだ、どこだ!?」 機動隊の装甲車のサイレンが、けたたましく都会のジャングルに鳴り響いていた。暴徒を回収した人間のクズ回収車が唸るようなサイレンを鳴らして大通りを通り過ぎて行った。 「まいったなあ。道が分からなくなっちゃった。」 ほとんどの人が、小走りに走っていた。 「冷静、冷静!」 そう言いながら、龍次は右往左往していた。 ときどき頭脳警察の最強ロボット・ハルの猛獣の叫びのような威嚇音が聞こえていた。
|
|