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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第92回   検索のテクニック
龍次は、ショーケンたちを見送った後、部屋に戻ってきた。
甲賀忍は、まだ検索をやっていた。
「まだ見つからないの?」
「ええ、ありませんねえ…」
「検索が下手なんじゃないの?」
「上手下手ってあるんですか?」
「あるよ。サキちゃんは上手いよ。サキちゃ〜〜ん!」
さっきの女性隊員が、事務室から出てきた。
「ちょっと検索してくれない。」
「はい。」
忍が、「じゃあ頼むよ。」と言って席を譲った。彼女は座った。
「何を検索すればいいんですか?」
忍が答えた。
「吠太郎の説明書なんだけど…」
「ほえたろう?」
「犬が吠えるで、太郎。」
サキは、検索窓にタイプした。
「こうですか?」
「そうそう!」
彼女は検索を始めた。
「おっかしいなあ…、出ないなあ〜?」
「でしょう!」
「それ案山子(かかし)ですよね?」
「そう、ハイテク案山子(かかし)。」
彼女は、言葉を付け加えて、検索を再度始めた。
忍は時間が掛かると思って、壁に立てかけてあった吠太郎を、テーブルの上に乗せ、調べはじめた。
彼女がマウスを止めた。
「はい、出ました。」
「え〜〜、もう出たの?あったの?」
「ありました。」
「どうやって検索したの?」
「忍さん、吠太郎の説明書とか、吠太郎スペース説明書とかで検索したでしょう?」
「ああ。」
「それじゃあ、出ないでしょうね。」
「だって、説明書じゃなくって、マニュアルになってるもん。」
「それで出ないの?」
「そうです。意味は同じでも、そういう字がないと出ないんですよ。」
「そうか…」
「それに、吠太郎だけよりも、ハイテク案山子、吠太郎ってやったほうがいいですよ。」
「それが検索のテクニック?」
「そうです。」
「ややこしいんだねえ。」
「上手い人と、下手な人がいるんですよ。やれば上手くなります。」
「何事も、訓練訓練ってことか。」
「はい、そうです。検索は連想ゲームですよ。」
龍次は、いつの間にか彼女の横に来ていた。
「仕事には、簡単なものはないってことだね。」
「そういうことですね。」
忍は、口を噤(つぐ)んでいた。
龍次は画面を覗いた。
「どれどれ…」
忍も覗き込んだ。
「スイッチ以外のこと書いてあるかなあ?」
サキが画面を見ながら返事をした。
「書いてあります。」
「何て書いてある?」
「背中のUSB端子をパソコンに繋いで、音ファイルを交換してください。音ファイルは以下にあります。ダウンロードしてください。mp3ファイルだったら、何でも構いません。」
「えっ、どういうこと?」
「つまり、ダウンロードしなければいけないってことです。」
「何でも構いませんって、俺の音楽でもいいわけだ?」
「そういうことですね。」
龍次が画面を睨んだ。
「サイレン音とかはあるの?」
「あります。三つあります。視聴できます。」
「じゃあ、視聴してみよう。」
彼女は、視聴ボタンを3回クリックした。
龍次が忍に聞いた。
「どう?」
「2番目がいいけど、全部ダウンロードしといてよ、サキちゃん。」
「はい。」
サキちゃんは、言われたままに素直にクリックしてダウンロードした。
龍次がぼやいた。
「なんだか不便だなあ。このハイテク案山子(かかし)。ちっともハイテクじゃないじゃないか。」
忍も、その意見に同意した。
「そうですよねえ。音変えるだけなのにパソコンに繋いで、不便ですよねえ。」
「同じ名前だから買ってやったんだよ。試作品モニター販売で、三千円で安かったんだけどね。」
サキちゃんが吠太郎のページを表示した。
「今は五千円になってます。」
「え〜〜〜、五千円もするの?こんなものが?」
忍も画面を睨んでいた。
「試作品とどっか、違うのかなあ?」
「そうですねえ…」
「なんか、違いが分からないんだけど…」
「そうですねえ…、あっ、ありました!試作品との違いは、強風対策雨防水って書いてあります。」
「…強風対策雨防水?」
「強風のときには、本体が下に落ちるんだそうです。」
「ふ〜〜ん。それで、風が止んだらどうなるの?自分で元の位置に上がるの?」
「…書いてありません。」
「な〜〜んだよ。肝心なところを。まさか手でやるんじゃないだろうね?」
「そうかも知れませんよ。」
龍次が突っ込んだ。
「そうだよ。手でやるんだよ。だから何も書いてないんだよ。自動だったら、ちゃんと大きく表示するよ。」
「そうですよね。」
「なあんだ、やっぱりセコいハイテクだなあ〜。」
龍次は、口を尖らせていた。
「だったら、五千円は高いなあ。わたしと同じ名前なんだけど、どういう顔してるんだ?」
「あっ、こっちにブログがあります。見ますか?」
「見てみよう。」
「この方です。横浜の方です。」
「どれどれ…、僕とはあまり似てないねえ。…良かった!」
「そうですねえ。」
「最近の書き込みがあります。」
「読んでみてよ。」
「ハハハハ、ぼくのブログは廃墟か!ここ一週間だれも振り向いてくれないよ、えええぇぇ〜〜ん!」
「なかなかやるなあ。」
「何がですか?」
「こうやって、母性本能をくすぐっているんだよ。」
「そうですかねえ?本音なんじゃないですか?」
「本音じゃないよ。看板だよ。」
「看板?」
「来たついでに、何か書いてやろう。ゲストブックとかないの?」
「ブロブに、そのまま返信できます。」
「じゃあ、そこでいいや。」
「何て書きますか?」
「そうだなあ・・」
彼女の左脇には、忍がいた。
「クレームを書けばいいんじゃない?」
「そうだね。そうしよう。」
「あっ、誰かクレームみたいなのが書いてありますよ。」
「何て書いてあるの?」
「吠太郎使用者のものですが、説明書が分かりにくいし〜〜、センスがダサイです。なんとかしてください。自然薯(じねんじょ)を売ったほうがいいんじゃないかな〜〜。」
「な〜〜んだか、クレームが具体的じゃなくって、センスの悪い文章だなあ。ちなみに何て言う人のクレーム?」
「きょん姉と書いてあります。」
「きょん姉!?」
「知ってるんですか?」
「いや、前に同じ名前の部下がいたんだよ。まさかね、そんなはずはないよ。」
「ここに、書き込みますか?」
「ちょっと待って、今考えてるから…」



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