レンタル自転車屋さんは、意外と近かった。 「兄貴、どれにする。」 「どれでもいいよ。」 「乗ってみなきゃあ分からなんじゃん。」 レンタル屋のおじさんが出てきた。 電動もありますよ。 アキラはにこっと笑った。「電動。高いの?」 「24時間で2千円になってます。」 「どうする、兄貴?」 「普通のでいいよ。」 二人は、同じようなママチャリを借りた。 少女は、嬉しそうに二人を見ていた。 「公園まで、案内してあげるよ。」 ショーケンが、「ありがとう。」と答えた。 「やっぱ、ママチャリだね。兄貴。」 「そうだな。」 「籠がついてるもん。荷物が入るから、やっぱこれだよ。」 そう言うと、アキラはバッグを前籠に入れた。 「取られるなよ。」 「こんなとこ、そんな奴はいないよ。」 「そうだな。」 三人は、ゆっくりと走り出した。少女が、無邪気な子供のような笑顔で先導していた。爽やかな風が吹いていた。 「こっちよ。」 アキラが手を上げて「あいよ!」と言って、答えた。それから、ショーケンに、 「なんか、森に囲まれて、爽やかな気分だねえ。」と言った。 「この空気のせいだな。」 「腐った空気のなかで生活してたんだねえ。俺たち。」 「そうだなあ。」 「だから、馬鹿になっちまったんだよ。」 「そうかも知れねえなあ。」 「ここにいると利口になっちゃうかも。」 「子供の頃は、こうやってよく走ったなあ。」 十分ほどで、公園に着いた。 少女が、柔らかく指をさした。 「ここ。」 三人は、自転車を降り、押して公園の中に入った。中ほどに野外ステージがあった。人が集まっていた。 「あそこ。」 ニート革命軍・最高幹部のカリスマ、りゅうじが演説をしていた。 「兄貴、龍次だ!」 「もっと、近くに行こう。」 三人は、近くまで行くと自転車を止め、鍵を掛けると、ステージの前まで行った。 ステージの前は芝生になっていて、千人くらいの人々が、自由に群がっていた。 ステージには、カリスマ龍次がいた。
皆さん 過去の常識で 今を語ってはいけません! われわれは 勇気をもって 大地に引きこもりましょう! 母なる大地を守るために 大地とともに生きましょう!
龍次の演説が終わると、甲賀忍(こうがしのぶ)が出てきた。 少女は注目した。 「あっ、甲賀忍(こうがしのぶ)だ!」 甲賀忍(こうがしのぶ)はラップのリズムで軽快に歌いだした。
♪♪♪ 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪ 俺たちには明日は無い♪ 何がある♪ 今日がある♪ あと50年で地球は酸欠地獄♪ 働いて何になる♪ あと50年で地球は酸欠地獄♪ 勉強して何になる♪ あと50年で地球は酸欠地獄♪ 訓練して何になる♪
|
|