アキラがリアカーのタイヤに空気を入れていると、龍次と鶴丸隼人と昼間の青年がやって来た。 龍次が先頭を歩いていた。 「アキラさん、連れて来たよ。」 アキラは作業を中断して、顔を上げた。 「早かったじゃん。」 「もう直ったの?」 「大丈夫。完璧。」 「どうもありがとう。」 「どうってことないよ。」 紋次郎は、黙ってテーブルの椅子に座っていた。 「伊賀さん、このロボット。」 龍次は、紋次郎を指差した。 「左足をみてやってください。」 青年は、素直な声で答えた。 「はい。」 青年は、紋次郎の左横まで行って、紋次郎の左足を見た。 「足を、こっちに出してくれない?」 紋次郎は、青年の目を見ながら返事をした。 「はい。」 「歩けない?」 「まともには歩けません。」 「ちょっと歩いてみて。」 「はい。」 紋次郎は歩いてみせた。左足が、ちゃんと着地されないままで歩いていた。 「止まって!」 紋次郎は歩くのを止めた。 「足首のバネみたいですね。」 紋次郎は、左の足首を浮かせていた。 「やっぱりね。」 「新しいバネと交換すれば大丈夫です。交換するには、特殊な工具も必要です。」 龍次が出てきた。 「それはどこにあるんですか?」 「ロボットを扱ってるところなら、どこにでもあると思います。」 「それを取り寄せればいいんですね。」 「はい。」 「取り寄せたら、修理できますか?」 「はい。できると思います。」 「じゃあ、お願いしようかな。」 青年は、なぜか微笑んでいた。そして、龍次に頭を下げ礼を言った。 「ありがとうございます。」 「えっ、何が?」 「わたしみたいな者を使ってくださって。なんだか、昔を思い出しました。なんだか、少し自信が出てきました。」 「あっ、そうなの。それは良かった。」 アキラが出てきた。 「人間は、お互いに助け合わないとね。ねっ、龍次さん。」 「アキラさんが、そんなこと言うなんて珍しいね。」 「そうかなあ〜?」 龍次は目で笑っていた。龍次の顔を見たアキラも微笑んでいた。 なぜか、鶴丸隼人だけが、忍者のような用心深い目で黙ってみんなを見ていた。 アキラが鶴丸隼人に近寄って行った。 「どうしたの?」 「えつ、わたし、変ですか?」 「悩みでもあるような顔してるよ。」 「えっ、悩みなんかありませんよ。」 「ああ、そう。」 外から声がした。 「すみませ〜〜ん!保土ヶ谷さん、いますか〜〜?」 その声に、龍次本人が声を返した。 「いるよ〜〜!」 真由美ちゃんの、お兄ちゃんが入ってきた。 「まさとくん、どうしたの?」 「あのう、パソコンを頂きに来ました。」 「あ〜〜、そうそう。集会所にあるから持って行って。」 「集会所ですか?」 「あっ、僕が案内する。」 「大きいんですか?」 「昔のだから、けっこう、大きくって重いよ。」 「だと思って、リアカーを持ってきました。」 「ああ、それは良かった。」 まさとと龍次は、作業所から出て行った。鶴丸隼人も追うように出て行った。
|
|