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作品名:ニート革命軍 作者:毬藻

第87回   易者ロボット
「おまえ、見てみろ。」
姉さんは福之助に渡した。
「はい。」
「分かる?」
「はい、分かります。」
「早いね。」
「声を変えるスイッチとか、ボリュームコントロールとかありますけど、スイッチを切ってくればいいんですね。」
「うん、そうだよ。」
「じゃあ、切ってきます。」
福之助は直ぐに戻ってきた。
「スイッチ、切ってきました。」
「これで安心だ。」
「吠太郎って、そんなに売れてるんですかねえ?」
「そうだなあ。ちょっとインターネットで調べてみろ。」
「はい。」
福之助はテーブルの上のノートパソコンの前に座ると、検索を開始した。指と目玉だけが動いていた。
「出ました!」
「早いねえ。」
「これです。」
姉さんがやってきた。福之助の肩越しに覗いた。
「この人が保土ヶ谷龍次?」
「そうですね。」
「なんか、昔の学校の先生みたいな、人の良さそうな人だね。」
「人相学的には、そうですね。とっても穏和な目ですねえ。」
「そうだね。」
「すんなりとエリートコースを歩んできた人の場合、こういう目になります。」
「ああそうなの。」
「ドロンとして濁った目をしている人がいますが、ろくな人生を歩んでいない証拠です。」
「ああそうなの。」
「不気味なのは、子どもの時から上目遣いで人を見るタイプです。周囲に愛情をもって育てられなかったり、虐待を受けたりした子どもは、こういう目つきになります。」
「ああそうなの。あんた超詳しいね。あんた易者ロボット?」
「違いますよ。」
「ところで、この吠太郎、いくらで売ってるの?」
「一本五千円です。」
「高いか安いか分からない値段だね。」
「そうですね。姉さんの言ったとおりです。」
「何が?」
「横浜在住です。」
「横浜のどこなの?」
「鶴見区生麦です。」
「やっぱりね。あのアクセントは埼玉生まれの横浜だよ。」
「埼玉生まれ?」
「埼玉生まれの、じゃ〜〜んは、ああいうアクセントなんだよ。」
「どうして分かるんですか?」
「埼玉生まれのショーケンも、ああいうアクセントだろう。だから、そうじゃないかと思って。」
「なぁんだ、そういうことか。」
「なぁんだとは、何だよ!」
「失礼しました。」
「埼玉は山が多いからなあ。自然薯がよく採れるんだよ。」
「そうなんですか。」
「自然薯は売ってないみたいだねえ。」
「そうですね。吠太郎だけですねえ。」
「ブログみたいな書き込みがあります。」
「何て書いてあるの?最近の読んでみろ。」
「ハハハハ、ぼくのブログは廃墟か!ここ一週間だれも振り向いてくれないよ、えええぇぇ〜〜ん。って書いてあります。」
「寂しい書き込みだなあ。」
「そうですね。」
「何か書き込んでやるか?」
「何をですか?」
「ついでだから、クレームを書いてやれ。」
「余計、えええぇぇ〜〜ん。って泣きますよ。」
「そんなの知るか。」
「ハンドルネームは?」
「きょん姉でいいよ。」
「そのままじゃないですか。」
「いいんだよ。」
「はい。」
姉さんは、語りだした。
「吠太郎使用者のものですが…」
「吠太郎使用者のものですが…、それから?」
「説明書が分かりにくいし〜〜、センスが埼玉です。じゃなくって、ダサイです。なんとかしてください。」
「センスがダサイです。はい、書きました。これで終わりですか?」
「おまえ、キイタッチ早いねえ。ブラインドタッチだねえ。」
「わたしの先祖は、事務系ロボットなんです。」
「ああ、そうなんだ。」
「はい。」
「ええっとぉ…」
「ええっとぉ、それから?」
「ええっとぉ、はいいんだよ。」
「失礼しました。バックスペース、削除!」
「何て書こうか?」
「姉さんは、文章のセンスがないですね。」
「なんだって!」
「失礼しました。」
「自然薯(じねんじょ)でも売ったほうがいいんじゃないかな〜〜。」
「それ、独り言?」
「違うよ、書くんだよ。」
「な〜〜んか、突然に別の話題?」
「いいんだよ。」
「…はい、書きました。」
「この吠太郎の顔、見れば見るほどセンスないなあ〜。」
「それも書くの?」
「これは独り言。」
「あっ、この顔。ちゃんと著作権登録されてますよ。」
「ほんとかよ〜〜〜!」



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