ウイルスチェックは、三十分ほどで終わった。 「終わりました。異常なしです!」 姉さんはテレビを見ていた。 「異常なし?」 「ウイルスは発見できませんでした。」 「おっかしいなあ。そんなはずないよ。」 「ほんとうです。」 「じゃあ、何なんだろうねえ。おまえの異変は?」 「わたし、変ですか?」 「ものすごく変だったよ。」 「そうかなあ。」 「CPUの熱暴走でもないしなあ…」 「はい。」 「それにしても、時間のかかり過ぎだよ。そのチェック。」 「仕方ありません。ここのインターネット回線が遅いんです。」 「じゃあ、やっぱり。狐でも憑いたんだな。」 「そんなことありませんよ。」 窓の外の吠太郎が吠えた。 姉さんは驚いた。 「なんだ、なんだ!?」 アニーは冷静な表情で、窓を見ていた。 姉さんは窓際に行き、窓の外を覗いた。 「おっかしいな。何もいないよ。」 「わたしが外を見てきます。」 「おまえ、大丈夫か?」 「大丈夫です。」 「戦闘モードにして行きなさい。」 「はい。」 福之助は、携帯の高電圧電撃棒を取ると、長く伸ばし、しっかりと右手に持った。 「じゃあ、行ってきます。」 「自分に当てるんじゃないよ。」 「そんなドジはしませんよ。」 「どうかな?」 「しません!」 「やっぱり、わたしが行ったほうがいいかなあ。」 「人間を危険にさらすわけにはいきません。」 「大丈夫だよ。わたしには、紅流(くれないりゅう)・金縛りの術があるから。」 「大丈夫です。わたしは人間を守るロボットです。」 「お前は、お坊さんロボットだからなあ。」 「何言ってるんですかあ?」 福之助は、問答無用とばかりに急いで出て行った。ログハウスの周りを一周すると戻ってきた。 「何もいなかったです。」 「おかしいなあ。また、誤動作か?」 「そうかも知れません。」 アニーが口を挟んだ。 「狸とかネズミとかリスなんかじゃないの?」 福之助が同意した。 「そうですね。」 姉さんは、目玉を上に向けていた。 「じゃあ、誤動作じゃないってことか。」 アニーは起き上がった。パジャマを着ていた。姉さんは、その事に初めて気がついた。 「あら、いつ着替えたの?」 「さっき、葛城さんが出て行ったときに。」 「ああ、そうなの。」 「葛城さんのも、ありますよ。」 「わたしは、後でいいです。まだ起きていますから。」 「そうですね。」 「ああ、そうだ。高野山には、自然薯お好み焼きってあるんですか?」 「ありますよ。」 「有名なんですか?」 「うん、そうね。けっこう有名なのかしら?」 「ふ〜〜ん。どこにあるんですか?」 「そうですねえ、高野山にあるのかなあ…、忘れちゃった。」 福之助が露骨に口を出してきた。 「姉さんは、食いしん坊なんだからなあ〜。」 「なんだって!?」 「そんなに気になるんだったら、インターネットで調べたら?」 「インターネットねえ…」 「調べたら、直ぐに分かりますよ。」 姉さんは、眉を吊り上げ、「じゃあ、調べるか!」と言うと、テーブルのパソコンの前に座った。そして、直ぐに検索を始めた。 「高野山、おいしい自然薯お好み焼き…、っと。」 アニーが助言した。 「おいしいは、つけないほうがいいですよ。検索効率が悪くなります。」 「ああ、そうか。」 福之助が姉さんの後方にやってきて、パソコンを覗き込んだ。 「どうかな?」 「ポンコツは、向こう行ってろぉ!」 「そりゃあないよ、姉さん!」
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