ショーケンは、ぶっきらぼうに少女に尋ねた。いつもの人を差別しないショーケンの口調だった。 「お前も、なんか飲むか?」 「ホットのカフェオレ。」 アキラが自動販売機に硬貨を入れた。指をさした。 「これ?」 「そのとなり。」 アキラはボタンを押した。出てきたので、少女に渡した。 少女は右手で受け取った。 「まだ、熱いなあ。」と言って、上着のポケットに入れた。 左手に包帯をしていた。 ショーケンは、目を細めて包帯をちらっと見た。 「左手、怪我でもしたのか?」 「これね。リスカ。」 「リスカ?なんだリスカって?」 「リストカット。」 「ああ、手首を切るやつか。」 ショーケンの隣にいたアキラが怒った。 「そんなことしちゃあ駄目だよ!」 「分かってるの。でもやっちゃうの。」 「なんだよ、そりゃあ。」 ショーケンの目は悲しくなった。 「なんでそんなことやんだよ。」 「毎日が、ちっとも面白くないんだもん。」 「面白くなかったら、面白いことを捜せばいいだろう!」 「捜したけど、無かった。」 「親とか先生に相談したのか。」 「したけど、同なじだよ。逃げるか、みんな同なじこと言うんだよ。」 「みんな、きっと忙しいだよ。」 「つまんないよ、こんな世の中。」 「お前、寂しいんだろう。アキラと同じ目してるよ。」 アキラが「兄貴も同なじじゃん。」と言った。 「大人はいつでも、昔の常識で今を説教するからな。」 「そうだね兄貴。いいこと言うね。」 「寂しいときには、雲を見んだよ。なっ、アキラ。」 アキラは上を見上げながら、「雲?」と答えた。 「雲はいいよ。いろんなことを教えてくれるよ。」 アキラが、「ふ〜〜〜ん。驚いた!」と、感心しながら言うと、 三人は、顔を見合わせて少し笑った。三人は、同じ種類の人間だった。 ショーケンは、日本茶を飲み終えると、回収ケースに放り込んだ。 「じゃあ行こうか。レンタル屋さんへ。遠いの?」 「けっこう歩くよ。一キロはないけど。」
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