きょん姉さんは、ニコニコしながらドアを開け帰ってきた。 福之助はドアの前に立っていた。姉さんは驚いた。 「ああ、びっくりした!」 「姉さん、遅かったじゃないですか!帰ってくるのに、三十六分四十八秒かかってます。」 「おまえが、変なこと言うからだよ。」 「えっ?何のこと?」 「変なこと、あの人に質問しただろう。」 「変なこと?」 「人間の生き方がどうのこうのって。」 「あ〜〜〜、しました。人間は何のために生きているのかと。」 「初対面の人に、そんなこと質問するんじゃないよ。失礼じゃないか。」 「失礼?」 「初対面の人に、そんなこと言っちゃあ駄目なの。」 「ああ、そうなんですか。」 「プログラムを修正しときな。」 「はい。」 姉さんは、笑顔に戻っていた。画用紙を三枚、福之助の目の前に見せた。 「これ、もらっちゃった!」 福之助が見たものは、色鉛筆で描かれた姉さんの絵だった。 「いいですねえ。よく似てるなあ。」 「だろう!だろうだろう!」 アニーが姉さんを見た。 「お帰りなさい。」 「ただいまあ。」 姉さんは、アニーの方に歩いて行き、同じように見せた。 「これ、もらったんですよ。」 「わ〜〜、そっくり!」 「アニーさんも、元気になったら描いてあげましょう。って言ってたわ。」 「わ〜〜、早く元気になろう。」 「どうですか?少しは良くなりました?」 「ええ、だいぶ良くないました。寒気がなくなりました。」 「良かった。寒気があるときには、熱が上がるときなんですよ。」 「そうなんですか。」 「もう大丈夫です。熱が下がっている証拠です。」 「良かった。」 「インプルエンザじゃないみたい。」 「そうですね。インフルエンザだと高熱が出ますからね。」 「新型のインフルエンザかと思っちゃった。」 「ウイルスは高野山みたいな、こんなところまでは来ませんよ。」 「そうですね。」 福之助がやってきた。 「新型のウイルスは、若い人が好きらしいですから、大丈夫です。」 アニーは、首を傾げた。 「どういうこと!?」 「ごめんなさい、失言です!」 「わたしは、年寄りってこと?」 「いや、そういうわけでは。ちょっとだけ若くないってことです。」 「ちょっとだけ?」 「言葉を間違えました。若いじゃなくって、子供です。」 姉さんが、睨んでいた。 「そうよ。最初からそう言いなさいよ。馬鹿だねえ!」 「はい。ごめんなさい。」 「おまえこそ、ウイルスに感染してるんじゃないの?」 「えっ、どういう意味?」 「さっきから、変なことばっかり言ってるじゃない。」 「そうですかねえ。」 「新型の、語りウイルスじゃないのか?」 「語りウイルス?」 「なんだか、そういうウイルスプログラムが流行ってるらしいよ。」 福之助は、目玉を寄せて考えだした。 「検査したほうがいいよ。」 「そうですね。やってみます。」 福之助は、パソコンのほうに進んでいった。パソコンの前に静かに座った。パソコンの電源を入れると、外部端子を自分の胸の入力端子に繋いだ。 「ワクチンの最新バージョンをダウンロードします。検査終了までに、最低五分かかります。ご了承ください。」 「分かった分かった。早くやってちょ。」 「やってちょ?」 「早くやれよ。」 「はい!」 福之助は動かなくなった。 「うっ!」 福之助が唸った。姉さんは驚いた。 「どっ、どうした?」 「利くぅ〜〜!」 「何が?」 「ほんの冗談です。」 「おまえ、やっぱおかしいよ。」
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